死亡事故の対応に関して思うこと

交通事故において,被害者が死亡する事例は,以前より少なくなってきているとはいえ,根絶にはまだほど遠い状況です。
無念の最期を遂げた本人はもちろん,突然親しい人を亡くしたご遺族のことを考えると,やるせない気持ちになります。

交通事故死亡者数において,三重県は大きな割合を占めているわけではありませんが,平成29年12月末の統計によれば,人口10万人当たりの死者数の割合では4.79人であり,47都道府県中ワースト9位となっていました。
まったく縁のない話としてしまうのは禁物ですね。

ところで,加害運転者が,被害者遺族に十分な謝罪を行わない事例が,散見されます。
もし,謝罪することで言質をとられ,後日において不利になるかもしれないと懸念しているのであれば,それはうがった見方というしかありません。
それが録音されていたとしても,そのことだけですべての責任を負うとまで解釈することはできないでしょう。
通常,道義的責任と法的責任は分けて検討されるべきだからです。
ご遺族の方は,そういった自己保身に汲々とする態度を,ほぼ確実に見抜きます。
そして,ご遺族の感情がさらに害されたことによって,事故の最終的な解決はますます遠のくことになってしまいます。

謝罪や賠償によって失われた命が戻ってくるわけではなく,もはや円満解決という言葉があてはまらない状況なのかもしれませんが,さらなる対立の激化はできる限り防ぎたいものです。

特殊詐欺被害

報道によれば,三重県内で次のような特殊詐欺被害が発生し,被害額は県内最高の1億3460円になったとのことです。
(1)女性方に3月ごろ,「熊本県の災害復興」を名目に「個人番号」を伝える電話があった。
(2)別の電話で個人番号を教えるよう要求され,女性がそれを伝えた。
(3)弁護士を名乗る男から「個人番号を伝えるのは違法で訴えられている。取り下げのためにはお金が必要。口座に移す作業はこちらでやるのでキャッシュカードを渡して欲しい」と要求された。
(4)女性はその要求に従い,自宅を訪れた弁護士を語る男にカード3枚を手渡し,暗証番号も伝えた。
(5)その後,指定口座に現金を振り込むよう指示され,14回にわたって合計約1億3870万円を入金した。
(6)警察署への相談を契機に詐欺被害に気付いた女性は,すぐに口座を凍結したが,既に1億3460万円が引き出されていた。

当然のことながら,普通の弁護士がこのような詐欺行為に加担することはありません。
弁護士は各弁護士会に所属し,名前・所属事務所・連絡先は公開されています。
私が言うのもなんですが,「弁護士」という肩書に恐縮することなく,そのような弁護士が実在するのかを,一度インターネットで調べてください。
仮に当該弁護士名が検索できた場合は,もう一歩進んで,その事務所に連絡し,前記のようなことに心当たりがあるかを確認してみてください。
ここまでしていただければ,弁護士を語る詐欺は,ほぼ防ぐことができるように思います。

裁判例検討(損害賠償請求に要する諸費用)

加害者に対して損害賠償請求をするにあたっては,証拠資料の収集や手続きに要する費用等の支出を余儀なくされることが一般的です。
今回は,そのような損害賠償請求に要する諸費用自体を,賠償の一項目として加えてよいかを検討してみたいと思います。

1 交通事故証明書取得費用
交通事故に基づく損害賠償請求をするに際し,交通事故証明書は必須書類と言ってもよいでしょう。
東京地判平14.8.30交民集35巻4号1193頁は,交通事故証明書交付手数料2400円を,事故と相当因果関係のある損害として認めました。
ただ,2400円は少し高すぎるのではないか思わなくもないです。
2 刑事記録閲覧・謄写費用
事故状況が問題となる事件では,刑事記録(見分状況図,供述調書等)は,信用の高い書証として用いられることが多いです。
東京地判平22.1.27交民集43巻1号48頁は,刑事記録閲覧・謄写費用950円を事故と相当因果関係を有する損害と認めました。
また,大阪地判平26.3.20自保ジャーナル1927号118頁は,刑事記録取得のための23条照会に基づく照会費用も損害として認定しました。
実際ここまで相手方に請求することは余りないかと思いますが,弁護士費用を依頼者自身が自己負担するケースでは,検討してみてもよいでしょう。
3 保険金請求手続費用
車両には自賠責保険(以下共済含む)の付保が必須とされ,多くの車両に任意保険が付保されている実情から,保険金請求が絡まない交通事故はほとんどありません。
東京地判昭54.4.19交民集12巻2号504頁は,保険金請求手続費用は,損害賠償請求に必要かつ相当な範囲までという規範を示した上で,保険会社に対して保険金を請求するためのコピー代や役場から必要書類の下付を受けるための費用を,事故による損害と認定しました。
4 鑑定費用
事故状況等に争いがある場合,工学鑑定を検討することがありますが,その費用の高さがネックとなってやめてしまうことが少なくありません。
東京地八王子支判平10.9.21交民集31巻5号1430頁は,工学鑑定に要した費用235万円のうち200万円を認定しました。
何が問題となっていたか,その問題を解明するのに工学鑑定をすることが必要であったか,鑑定の担当者ややり方は適切であったか,金額は妥当かなどが審理事項になると思われます。
5 意見書作成料
医学的問題については,医師の意見書作成を検討することがありますが,鑑定と同様,高額となることがほとんどです。
東京地判平17.2.15交民集38巻1号219頁は,事故によってRSDとなったか否かが争われた事件で,意見書作成費用50万円のうち30万円が損害として認定されました。
審理事項は,前記鑑定費用と概ね共通すると思われます。

女性活躍推進法

三重県は,平成30年度人事異動で,女性管理職が初めて10%を超えたことを発表しました。

三重県に限らず,管理職への女性登用を増やそうという動きが,各業界で見受けられます。
このような動きを推進しているのが,平成28年4月に施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(略称:女性活躍推進法)」です。

女性活躍推進法は,国,地方公共団体,民間事業主(労働者300人超)に,次のようなことを義務付けています。
1) 団体・社内の女性の活躍に関する状況把握・課題分析を行う
→状況把握の必須項目としては,女性採用比率,勤続年数男女差,労働時間の状況,女性管理職比率が定められています。
2) 状況把握・課題分析を踏まえた行動計画を策定・届出・公表する
→行動計画の必須記載事項としては,目標(定量的目標),取組内容,実施時期,計画期間が定められています。
3) 女性の活躍に関する情報を公表する
→省令で定めた事項のうち,事業主が適切と考えるものを選択して公表します。

効果はこれから検証されることになるでしょうが,女性活躍推進法が1つのきっかけとなって,男女格差の是正が進めばよいと思います。

ところで,真偽は不明ですが,男女問わず,管理職にはなりたくないという若者が増えているとのことです。
キャリアプラン,仕事に対するとらえ方,私生活とのバランス等は,それぞれ異なると思いますので,
男女問わず,各自の考え方に基づいて,キャリアを選択・積み重ねていければいいですね。
所属する組織や業務内容によって,難しい部分があるとは思いますが。

裁判例検討(インプラント治療)

今回検討するのは,名古屋地方裁判所平成28年11月30日判決(LEX/DB25546557)です。

事件は,交通事故に基づく損害賠償請求です。
事故態様は,原告が二輪車で直進していたところ,被告が対向車線から路外施設に右折進入を図ったことから接触し,二輪車が転倒して原告が負傷したというものです

原告は本件事故によって左前歯1本を喪失しましたが,この治療方法が最大の争点となりました。
原告側は,治療方法として,インプラント治療を選択し,その治療費を請求しました。
これに対して,被告側は,ブリッジ治療で十分であり,原告の歯科治療に関する治療費は本件事故と相当因果関係を有しないと主張しました。

この争点について,裁判所は,概ね次のように述べて,原告のインプラント治療を肯定しました(※まとめ方は筆者の主観によります)。
1)本件の歯の喪失の治療方法としては,〔1〕可撤式の床義歯,〔2〕ブリッジ,〔3〕歯科用インプラントが考えられる
2)治療に際して考慮すべき点は,〈1〉咬合能力の回復,〈2〉審美性の回復,〈3〉補綴物の長期安定性が中心になってくる
3)〔1〕可撤式の床義歯は,容易に安価に作成でき,治療期間も極めて短縮できるが,〈1〉咬合能力の回復,〈2〉審美性の回復,〈3〉補綴物の長期安定性のすべてにおいて,他より著しく劣る
4)〔2〕ブリッジは,〈1〉咬合能力の回復については〔3〕歯科用インプラントとほぼ同等で,3〉においては比較的長期間安定することが予測されるが,〈2〉審美性の回復については(本件原告の場合は)非常に劣る。また,大きな欠点として,両側臨在歯を大きく切削しなければならないが,両側臨在歯はともにう蝕のない健全歯であるため,切削自体大きなマイナスで,切削したことが原因で,将来的に歯髄が壊死する危険性が考えられる
5)〔3〕歯科用インプラントは,〈1〉咬合能力の回復,〈2〉審美性の回復において,他より圧倒的に優れている。また,歯科用インプラントの生着率はおおよそ95%以上とされており,生着した場合,長期安定にも優れた結果が得られることが多い。欠点として,埋入する手術が必要であり,手術の際に神経損傷による神経麻痺,血管損傷による出血などのリスクがあるが,原告の手術部位近辺には,損傷で問題となる血管・神経は存在しないため,このリスクはほぼ関係なく,たとえリスクがあるとしても,解剖の知識に基づく十分な術前の治療プランの立案により,容易にリスクは回避できる
6)原告のインプラントを実施する医療機関は,口腔外科やインプラント関連手術の知識や経験は十分であり,原告は,同医療機関において,歯科用インプラント治療が最適と判断された
7)上記1~6によれば,原告は,本件事故により,インプラント治療の必要性があったと認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない

前記裁判例では,歯が喪失した場合における各治療方法の長所・短所が端的に示されているほか,一般的にインプラント治療は咬合能力の回復及び審美性の回復の面で他の治療方法より圧倒的に優れていること,インプラント治療における出血リスクは解剖の知見に基づく十分な治療計画によって容易に回避できること等が述べられており,インプラント治療の優位性が示されたといっても過言ではないように思われます。
今後,保険会社や共済がインプラント治療まで必要ないと述べてきた場合,インプラント治療の必要性を根拠づける一事例として用いることができるのではないでしょうか。

裁判例検討(パワーハラスメント)

ここで取り上げるのは,東京地判平成29年11月15日(LEX/DB25549206)です。

本裁判例で問題となった社長(被告)の従業員(原告)に対する言動は,主に次のようなものです。
「お前って性格悪いよな」「自分を誰だとおもっているんだ」「誰なのかって聞いているんだよ!」「毎日電話番させてやる」「ふざけるな」「何様のつもりだ」「どうなるか見てろよ」「疫病神」「なんでこんなやつを雇ったんだ」
※ これらは原告側が代理人弁護士の助言に基づき録音していたとのこと

裁判所は,前記社長の言動につき,社会通念上,従業員に対する指導として許容される範囲を超え,その相当性を著しく欠くものであり,原告の人格権を侵害する違法な行為(=不法行為)であるといわざるを得ないと述べました。
さらに,その後,従業員がうつ病にり患したことについて,前記社長の言動との相当因果関係が認められるとし,医療費及び慰謝料の一部を支払うよう命じました。

上司の部下に対する問題発言については,言った言わないの水掛け論になることが少なくなく,証拠不十分で泣きを見る被害者が少なくないところ,本件は録音記録による証拠を用意できたことが大きかったように思われます。
最近は,ICレコーダーも小型化・性能の向上が進み,(誰しも保有する)携帯電話にも録音機能が付いているなど,従前より発言の証拠化が容易になっています。
部下に対して指導をする(特に怒ったり責任を追及したりする)場合は,このような技術の進歩も念頭に置き,自身の言動が不法行為と評価されないよう注意して,言葉を選択する必要があるでしょう。

三重県内における交通死亡事故

三重県警察ホームページに,2月8日時点における交通事故死亡者数が14名となり,都道府県別人口10万人当たりの死者数としては,全国ワースト2位であるということと,事故防止のために気を付けるべきこと等が掲載されていました。
特徴としては,死亡者の7割が高齢者であること,歩行者は夜間や自宅周辺での事故がほとんどであること,四輪車に乗車していた死亡者の6割がシートベルト非着用者であること,3割は車両単独事故であること等があげられています。

なんとも残念で痛ましいことだと思います
事故が起こってしまってからでは取り返しがつきませんので,普段,どのようなことに気を付けているかを家族で話し合ってみるのもいいかもしれません。
注意が足りていないにもかかわらず,自分だけは大丈夫と言い張る方がいれば,前記のようなデータ示して,翻意を促してみてはいかがでしょうか。

また,これだけの方が被害に遭っているということは,同じくらいの方が思いもよらず加害者になってしまったということになります。
単独事故であっても,同乗者が死傷した場合は,運転者に損害賠償責任が生じ得ます。
それ故,車両等を運転する場合は,十分注意するとともに,万一のための任意の賠償保険をかけておきましょう。
自転車によって歩行者が死傷することもあり得ますので,自転車しか乗らない場合でも,任意の賠償保険は必要でしょう。

さらに言うと,被害者側となってしまった時のために,人身傷害保険と弁護士費用保険・特約にも加入しておいた方がよいでしょう。
加害者が素直に賠償に応じなかったり,そもそも賠償保険をかけていなかったりした場合に,この二つは非常に役に立ちます。

交通事故について弁護士を津でお探しの方はこちら

改正刑事訴訟法の研修

去る16日に,三重弁護士会館にて,改正刑事訴訟法の研修が行われました。

今回の研修の主な内容は,司法取引と刑事免責についてです。

司法取引は,他人の犯罪についての訴追に協力することと引き換えに,弁護人の同意のもと検察官が協力した被疑者・被告人に恩典を付与することを合意するというものです(いわゆる協力型)。
日本型司法取引の特徴としては,対象が特定の犯罪(主に組織犯罪と財政経済犯罪)に限定されていること,取引不成立の場合は協議の過程における供述が証拠としての使用を禁じられるにとどまること(派生的証拠の使用は禁じられない)等があげられます。

刑事免責は,被疑者・被告人の証言拒絶権(刑訴146条)をはく奪する代わりに,その被疑者・被告人の刑事事件についてその証言や派生証拠の使用を禁止するというものです。
主に,組織犯罪における上位者を処罰するために用いることが予定されています。
日本型刑事免責の特徴としては,刑事免責の利用に被疑者・被告人の同意は不要であること,対象犯罪に限定はないこと,裁判官に刑事免責を拒む裁量は基本的にないこと等があげられます。

これらのような制度が明示的に導入されるのは,我が国において初めてのことであり,実際にどのように運用されるかは未知数の部分が多く残されています。
それ故,今後の運用を注視するとともに,判例学説の展開を見極めていきたいと思います。

公訴時効期間

約15年前の殺人事件で逃亡していた被疑者が海外で身体を拘束された上で日本に移送され,先日,三重県警察が逮捕・勾留手続きをとりました(勾留場所は津警察署)。
なんでもSNSの1つ,Facebookに被疑者が投稿した画像から足がついたのだとか。
あらためてSNSの周知能力のすごさを思い知らされました。

このニュースを聞いて,時効は大丈夫なんだろうかと思った方がいるかもしれません。

刑事訴訟法250条1項2項は,各号で罪責の重さに応じた公訴時効を定めています。
公訴時効とは,犯罪終了後,一定期間訴追が行われないことによって国の訴追権を消滅させる制度です。
概ね罪責が重くなるほど,公訴時効の完成が長くなるという関係にあります。
その制度趣旨については,いくつか説か唱えられていますが,長期間の不訴追という既成事実を尊重して国家が刑罰権を行使しない制度と解する考え(新訴訟法説)などが有力と思われます。

公訴時効が完成しても,犯罪事実がなくなったり,その犯罪による直接的・間接的な被害が回復されることにはなりません。
それ故,公訴時効の制度は,なぜ罪に服さないまま犯罪による責任を免れさせなければならないのか,という根本的な批判に常にさらされることになります。
その顕著たるものが,人の生命を故意に害する殺人罪です。
このような批判を受けてかどうかは定かでありませんが,殺人罪等,すなわち,死刑に当たる罪は,当初は15年で時効が完成するとされていましたが,2004年改正によって25年になり,さらに2010年改正によって公訴時効自体が廃止となりました。
2010年改正では,公訴時効の廃止及び延長の遡及適用を規定したため,改正法施行時に時効未完成の殺人罪についてはすべて公訴時効が廃止されることになりました。

他方,刑事訴訟法255条1項は,犯人が国外にいる期間は,時効の進行を停止すると規定しています。
今回の被疑者は10年以上海外にいたことから,時効停止にも該当することになります。

となると,前記被疑者に公訴時効が完成する余地はなかったと解されます。

あおり運転

神奈川県内の高速道路上における痛ましい事故をきっかけに,いわゆる「あおり運転」に対する非難が強まっています。
警察庁は,全国の都道府県警に対して通達を出し,道路交通法違反にとどまらず,危険運転致死傷罪や暴行罪の適用も含めた厳正な捜査を行うよう求めたとのことです。

この「あおり運転」については,道路交通法等で明確に定義されているわけではありません。
いろんな方々の考え方を見ていくと,①車間距離を必要以上に詰める,②理由もなく追い回す,③前の車両に対してハイビームで走行する,④パッシングを繰り返す,⑤クラクションを何度も鳴らす,⑥横並び状態から必要もなく幅寄せする,⑦蛇行運転をする等様々な行為があげられています。
これらによって,前方の車両運転者に圧力をかけ,進路を譲るよう強要することが「あおり運転」と解されます。

ところで,三重県志摩市において,あおり運転をした挙句に追突し,現場から逃走した運転者が,鳥羽警察署に逮捕されました。
ニュースによれば,当該運転者はこれまで一度も免許を取得したことがなかったとのことです。
通常,無免許であれば,それがばれないように,慎重な運転をするのではないかと思うのですが,当該運転者は,ずっとばれないまま過ごしてきたことによって,変な自信を持ってしまったのかもしれませんね。

車間距離保持義務違反については,3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります(道交法119条1項1の4)。
他人の身体に対する有形力の行使として,暴行罪(刑法208条 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金等)にも該当します。この暴行罪については,身体的接触を不要とするのが判例です。
さらに,被害者が負傷した場合は,傷害罪(刑法204条 15年以下の懲役または50万円以下の罰金等)や危険運転致傷罪(刑法208条の2)にも当たり得ます。

前記の志摩市における被疑者については,加えて,無免許運転として,6月以下の懲役または10万円以下の罰金,救護義務違反として1年以下の懲役または10万円以下の罰金,報告義務違反として3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
いずれにせよ,行為の悪質性から,公訴提起は避けがたいでしょうね。

裁判例検討(準備書面を直送するための支出)

判決においては,通常「訴訟費用は○○の負担とする」等の文言が明記され,これに基づいて,当事者が訴訟費用の負担の額を定める処分の申し立てを行うと,裁判所書記官が訴訟費用の負担の額を定める処分を行うことになります(民訴71条1項)。

最判平成26年11月27日(民集68巻9号1486頁)では,当事者が準備書面の直送に要した支出が訴訟費用に含まれるか否かの検討において,民事訴訟費用等に関する法律(以下「費用法」)2条2号が類推適用されるかが問題となりました。

経緯としては,当事者の申し立てに基づいて裁判所書記官がおこなった処分に準備書面直送に要した支出が含まれていなかったことについて,当事者が異議申し立てをしたというものです。

準備書面直送に要した支出に費用法2条2号が類推適用されて訴訟費用に含まれるか否かについては,否定説と肯定説とがあります。
否定説は,費用法12条1項等により当事者が裁判所に予納し,その中から裁判所が支出することが要件である等としています。
費用法の文理に忠実な立場と言えるでしょう。
これに対し,肯定説は,書面の直送は当事者が裁判所に代わってなし得ること,民訴規則83条1項で明文化された直送の制度を促進するには直送の費用についても回収可能とすべきこと等を根拠としてあげています。
直送が一般的である民事訴訟の実態をより重視した立場と言えるでしょう。

前記最判では,当事者が準備書面の直送をするためにした支出については,費用法2条2号の規定は類推適用されないと判示し,抗告を棄却しました。
おそらく否定説に立ったものと解されます。

ところで,訴訟印紙代はともかく,直送費用まで訴訟費用として請求することは,ほとんどの弁護士は考えないと思われます(少なくとも私はやったことはありません)。
しかも,抗告許可の申立て(民訴337条1項)までして,事件を最高裁まで持ってくるというのは,相当な時間と労力がかかります。
それ故,野次馬的な興味になってしまいますが,前記事件において,当事者本人と代理人弁護士のどちらが主導してここまで手続きを進めたのかが気になるところです。

弁護士を津でお探しの方はこちら

訴訟取り下げ費?

三重県いなべ市の60代女性が,訴訟取り下げの費用名目で現金810万円をだまし取られる被害に遭ったとのことです。
女性宅に「消費料金に関する訴訟最終告知」名目のはがきが届き,はがき記載の連絡先に電話したところ,「裁判するか取り下げ申請するしかない」などと言われ,その取り下げのために現金を要求されたとか。

まず,訴えの取り下げというからには,訴訟が提起されることが大前提です。
そして,その際には,相手方(被告側)には,裁判所から訴状が特別送達の形で届きます。
それ故,裁判所から訴状が届いていない,受け取っていないということは,そもそも訴えが提起されていないと疑うべきでしょう。
仮にまだ訴状が届いていないとしても,訴訟期日は提訴から約1月後に設定されるのが通常なので,届いてから考えても十分間に合います。

次に,訴えの取り下げのやり方ですが,訴えた側(原告)が,判決が確定するまでに,訴えの取り下げ書を裁判所に提出するだけです(民事訴訟法261条1項・3項)。
相手方(被告側)が準備書面の提出等の訴訟行為をした後では,取り下げに相手方(被告側)の同意が必要となりますが(民事訴訟法261条2項),ここではあまり問題にならないでしょう。
そして,前記取り下げ手続き自体に,裁判所にいくらか支払わなければならないということは,一切ありません。

裁判をダシに金銭をだまし取るなど卑劣極まりないですが,残念ながら,このような詐欺師が完全にいなくなることは望み薄です。
時代の変化に合わせて,善良な方々から金銭を詐取するべく,様々な手段を講じてきます。
一旦騙されて,金銭を渡してしまったら最後,もはやその金銭は戻ってこないでしょう。
その詐欺師が逮捕されても,大体使い込まれるなどして,何も残されていないことが多いです。
皆様におかれましては,今回の記事を参考にするなどして,冷静かつ適切な対応を取るようにしていただければと思います。

裁判例検討(腰痛の後遺障害該当性)

今回,検討対象とするのは,神戸地判平成28年9月26日です。
実際の事件では,1回目の交通事故(第一事故)に基づく請求と2回目の交通事故(第二事故)に基づく請求とが併合され,後遺障害も頚部痛や下肢しびれ等複数主張されていますが,ここでは第一事故による腰部の後遺障害に関する認定に絞ります。

第一事故の概要は,原告が運転する乗用車が,訴外某の乗用車に追突したというものです。
そのため,第一事故に関する原告の請求は,原告車両に附帯されていた人身傷害保険の保険会社に対するものとなっています

原告は,第1事故によって腰椎を捻挫し,腰部痛や下肢のしびれを訴えて入院加療を余儀なくされるに至り,画像検査の結果,第1事故の前後において第4・第5腰椎のヘルニア増悪が認められ,神経学的検査においても異常所見があること等からすれば,第1事故と相当因果関係があることは明らかとし,12級相当の後遺障害が残存したと主張します。

この裁判では,原告側・被告側双方から医師の意見書が出されています。
被告側意見書は,〔1〕右下肢痛は第2事故直後には全く認められておらず,第2事故直後の腰椎MRIでも椎間板の突出が認められていないので,事故とは無関係に椎間板の突出が発生し,右下肢痛を訴えるようになったと判断できる,〔2〕四肢しびれ,頸部痛,腰痛は,第1事故前から訴えられていた症状であると同時に,第1事故後にも訴えられていた症状であり,第1事故後も不定愁訴と判断されていたように,第2事故後も一貫して医学的根拠が認められない,〔3〕頸椎や腰椎MRIにおいて,第2事故前と直後の画像を比較しても新たな変化が一切認められておらず,第2事故に確実に起因する後遺障害はない,というものです。
原告側意見書は,〔1〕第1事故以前から,腰椎の椎間板ヘルニアや,頸椎の椎間板ヘルニアが認められ,〔2〕第1事故直後に腰椎のヘルニアの増悪が認められ(頸椎のヘルニアは著変を認めない),〔3〕第2事故直後に腰椎の椎間板ヘルニアを認めるが,第2事故前の所見と比較して著変は認めない旨の所見が示された上,第1事故で腰椎ヘルニアの増悪を認め,画像所見と臨床症状は説明可能であるが,第2事故での画像変化は認めないというものです。

判決は,第1事故後に原告が訴える腰痛の症状に医学的根拠があると認めることは困難であり,また,第2事故前後に腰椎の変化が認められないことからすれば,第2事故後に原告が訴える腰痛の症状についても同様であるから,原告に後遺障害等級12級13号に該当する腰痛の後遺障害が残存したと認めることできないし,同14級9号に該当する後遺障害が残存したと認めることもできないとしました(原告の請求棄却)。
その理由としては,〔1〕第1事故後に入院した病院の入院中の診療録上,第1事故の約半月後の時点で,ベッド不在がほとんどであり,うろうろ動けていると記載されている,〔2〕その後通院した病院では,診療録に不定愁訴(なんとなく体調が悪い等の訴え)がある旨度々記載されており,しかも,同院の医師は,診療情報提供書において,原告の訴える症状と画像所見との整合性に疑問を呈している,〔3〕別の病院の医師も,原告の訴える症状と客観的所見との整合性に疑問を呈しているなどがあげられています。

原告(=受傷者)にとって非常に厳しい判決といえるでしょう。
ただ,判決理由を見てみると,はっきりとは書いていませんが,診療録等の記載から原告の主訴には著しい誇張があると判断したように見受けられます。
その前提として,診療録の客観性,専門性に鑑み,その記載事項は概ね信用できると考えたのでしょう。
受傷者側とすれば,たとえ自身の認識と違うことが診療録に書かれてあったとしても,それは違うというだけでは不十分であり,診療録記載事項に基づく事実認定がされるリスクを念頭において,訴訟計画を立てたり,見直したりする必要があるように思われます。

交通事故について弁護士を津でお探しの方はこちら

激甚災害

21日の政府閣議にて,三重県に被害をもたらした台風21号を「激甚災害」に指定するとの決定がなされました。
これによって,国の補助率が82%から95%に引き上げられ,復旧事業に関する市長や被災者の負担が減り,事業の促進がなされることが期待されます。

この激甚災害とは,激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律に基づくものです。
同法2条は,「国民経済に著しい影響を及ぼし,かつ,当該災害による地方財政の負担を緩和し,又は被災者に対する特別の助成を行なうことが特に必要と認められる災害が発生した場合には,当該災害を激甚災害として政令で指定するものとする。」と定めています。

私は,台風21号が接近した日に外に出かける用事があったのですが,雨,風とも尋常ではありませんでした。
その夜も,携帯電話の避難を呼びかける緊急アラームがひっきりなしに鳴っていたことをよく覚えています。
通過した翌日には伊勢を訪れましたが,ライフラインへの影響のため,通常営業ができない店舗も見受けられました。

津市内の河川敷等では,まだテープが張られただけの箇所が残されています。
おそらく,津市以外の市区町村でも同様の状況でしょう。
JR関西線などでは,いまだに運行を見合わせている区間があります。
道路や鉄道,河川等の保全に関わる関係者の方々は,まさに多忙を極めていることでしょう。
感謝申し上げるとともに,くれぐれも無理をしすぎないようお願いします。

入院付添費

親族が入院した場合,長時間付き添って身の回りの世話をすることは珍しいことではありません。
このような行為は,金銭的に評価しえないものではなく,肉親の情誼等によって出費を免れているにすぎません。
しかし,このような身分関係に基づく恩恵の効果を加害者にまで及ぼすべきとまではいえず,加害者の行為のよって被害者が入院し,親族が付き添い看護を行ったような場合,被害者が加害者に対し,付添看護料相当額の損害賠法請求をすることが認められています(最判昭和46.6.29判時636号28頁参照)。

近親者が入院した被害者に付き添うことは,常識にもかなうといえますが,そのこと以外にも,入院付添いの必要性を根拠づける事情は存在します。
まず,通常の病院において,専任の看護師が46時中世話してくれることはなく,病院によっても体制に差があることから,近親者の付き添いの代わりとなり得るものではありません。
さらに,近親者が寄り添うことによって,傷病に対する不安や生活の心配等に苛まれている被害者の精神的安定が図られるという効果も認められます。

実務や裁判においては,医師の意見のほか,症状の内容・程度,被害者の年齢・個性等を総合的に考慮して,入院付添いの必要性が判断されます。
症状が重篤で,移動に支障を要するような事情があれば,認められる可能性が高まると考えられます。
被害者が幼年であったり,高齢者であったりした場合も,認められる可能性が高まると考えられます。
被害者が障がい者であることも,程度にもよりますが,積極方向に働く事情となり得るでしょう。

被害者側の弁護士として活動していると,加害者側の保険会社・共済は,「(入院先の病院には)完全看護の体制が整っている」,「(付添について)医師の指示がない」などと述べて,入院付添費を一律で否認してくることが非常に多いと感じます。
しかし,上記のとおり,完全看護は近親者の付き添いを完全に代替するものではありません。
また,医師による明確な要付添の意見書等が出されることはむしろ稀であり,これが常に求められるとすると,入院付添費の請求は事実上不可能となります。
このように見てみると,保険会社・共済の前記主張は,ほとんどの場合において妥当性を欠くと言えるのではないでしょうか。

 

交通事故について弁護士を津でお探しの方はこちら

言葉の暴力

平成28年に三重県内の児童相談所に寄せられた虐待相談は1310件と過去最高を記録し,うち約4割が心理的虐待を占めたとのことです。

言葉の暴力という言葉があるように,物理力を用いずとも,傷つけたり傷つけられたりすることは往々にしてあります。
特に自分より弱い立場の人に対しては,無意識のうちに必要以上に強い言葉を発してしまうことが少なくありません。

私自身も十分気を付けたいと思います。

ここで法律論を持ち出すのも無粋な気がしますが,参考まで
他人の言動によって精神的苦痛を被った場合は,不法行為に基づく損害賠償の対象となり得ます。
また,事例は少ないですが,侮辱的言辞によって精神的障害を生ぜしめたとして,傷害罪が成立することもあります。

詐欺

三重県亀山市の女性が亀山市議を詐欺罪で告訴するとともに,損害賠償請求訴訟を提起したとのことです。
女性曰く,一部上場企業に対する投資話を持ち掛けられたほか,土地の担保(?)の名目で,計980万円をその市議に渡したものの,いまだ返還に応じてもらえていないとのことです。
市議側は詐欺ではないと主張しており,事実関係はこれから審議されることになります。

このような訴訟の場合,①金員の移動はあったか,②(金員の移動があったとすると)その理由は何であったかが,③その理由と実態とのかい離はあったか,④かい離について交付者・受領者の認識はあったか,⑤受領者がかい離を認識しつつ,交付者にそれを告げないまま金員を交付させようとしていたか,などが主張立証のポイントとなるように思われます。

書面化していない部分については,特に激しい応酬となるでしょうね。
代理人弁護士としては腕の見せどころである一方,結果予測が悩ましいところでもあります。

続・外国人刑事事件の弁護活動

被疑者・被告人が外国人の場合に生じる特有の問題が,不法残留(オーバーステイ)です。
勾留中に在留期間が経過してしまうような場合は,事件より,在留期間更新手続きの対応を優先せざるを得なくなります。
この在留期間更新許可申請は,取次資格を有する弁護士または行政書士であれば,代理可能です。
取次資格の審査はさほど厳しくはないようですが,片手間でやって依頼者に迷惑をかけては信用問題にもなりかねませんので,どこまで関わるかは悩ましい問題です。

なお,傷害や窃盗等の罪で実刑に処せられた場合は,入管法24条における退去強制事由に該当してきます。
そのため,手段・結果の重大性や前科の内容等から実刑確実といえる場合は,在留期間更新許可申請を行う意義が薄れるようにも思います。
とはいえ,被疑者・被告人本人の意向を尊重するのが基本でしょうね。

外国人刑事事件の弁護活動

少し前の話になりますが,9/22に三重弁護士会館にて,外国人刑事事件の弁護活動に関する研修を受けました。
三重県の外国人人口は4万人弱ですが,県内総人口に占める割合は2%弱に達し,全国的に高い比率といえます。
そのため,刑事事件において被疑者・被告人が外国人であることは,さして珍しいことではなく,私自身,これまで複数件携わったことがあります。
研修内容をしっかり復習し,今後の弁護活動に生かしていきたいです。

裁判例検討(治療期間)

今回検討するのは,名古屋地判平成28年6月29日(交民集49.3.791)です。

交通事故における損害賠償責任が争われた事件で,争点は多岐にわたりますが,ここでは治療期間に絞って取りあげたいと思います。
事故形態は被追突,車両損害はリアバンパーの交換等約13万円です。
原告X(事故時40代前半)は,本件事故後,外傷性頚部症候群,背部挫傷等を負い,初診から症状固定まで644日間に渡って,整形外科等で治療を受け(実治療日数349日),最終的には後遺障害14級9号と認定されています。
原告Xは,前記治療すべてのが事故に起因するものと主張しましたが,これに対して,被告は,事故と相当因果関係を有する治療期間としては,3~6カ月程度に限定すべきと主張しました。

裁判所は,判決において,事故と相当因果関係を有する治療期間は,6カ月余りと認定しました。
その理由として,次のような事情をあげています。
1)原告車両の損傷はリアバンパー部分に留まり,その程度も軽微であった
2)原告Xは,事故直後に家族とともに家具店で買い物をすることができた
3)原告車両の同乗者の傷病名は,ほぼ同じであったが,原告Xの治療期間は,他の同乗者と比較して,顕著に長期間であった
4)原告Xの治療経過は,他覚的所見はなく,投薬と理学的療法による経過観察が継続しているのみであった

交通事故事件にかかわる弁護士として,特に判決の理由部分については,きちんと認識しておきたいと思います。