裁判例検討(パワーハラスメント)

今回取り上げるのは、宇都宮地裁令和2年10月21日判決(LEX/DB 25567227)です。

本件は、原告であるバス運転者が、上司及び会社に対して提起した損害賠償請求訴訟です。
裁判では、原告の乗客への不適切な言動を契機として、原告に対して行われた指導・指示が、退職強要、人格否定、過少な要求というパワーハラスメントに当たるかどうか等が争点となりました。
以下では、争点ごとに検討していきます。

(1)退職強要
本判決では、次のような審査基準を設定しました。
「退職勧奨は、その態様が、これに応じるか否かに関する労働者の自由な意思決定を促す行為として許される限度を逸脱し、その自由な意思決定を困難とするものである場合は、違法となる。」
その上で、発言者の職務上の地位、発言内容(例:会社には向いていない、二度とバスには乗せない、会社にはいらない、他の会社へ行け、退職願を書け)、発言の態様(複数の上司から原告1人に対して、連続して1時間)、原告の精神的不安定(うつ状態と診断)等が総合考慮され、違法な退職強要と判断されました。

(2)人格否定
本判決では、次のような審査基準を設定しました。
「侮蔑的表現が、職責、上司と労働者との関係、指導の必要性、具体的状況、言辞の内容・態様、頻度等に照らして、社会通念上許容される業務上の指導を超えて、過重な心理的負担を与えたと言える場合には、違法となる。」
その上で、一部の発言(チンピラ、雑魚)が、過剰な心理的負担を与えるものとして、違法と判断されました。

(3)過少な要求
本判決では、次のような審査基準を設定しました。
「会社・上司からの指示が、社会通念上許容される指示・指導を超えて、過重な心理的負担を与えたと言える場合には、違法となる。」
その上で、乗車業務から外し、同種の本の読書と文書(反省文・感想文)の作成を1カ月以上続けたこと、それら作業のない時間は何もせず着座させるのみだったこと等の指示・指導が、過剰な心理的負担を与えるものとして、違法と判断されました。

これら(1)~(3)は違法な不法行為であり、これらによって原告がうつ状態になったとして、慰謝料60万円が認定されました。
一連の諸行為を不法行為と判断したことは評価できますが、行為の期間・悪質性に鑑みると、賠償としてはもう少し高額でもよかったのではないかと個人的に思います。

自賠責基準の変更

交通事故における人的損害をてん補するため、自動車には自賠責保険・共済を付保することが義務とされています。
その自賠責保険・共済の支払いに用いられるのが、いわゆる自賠責基準ですが、2020年4月1日以降発生事故より、基準額が増加したものが複数あります。

休業損害については、基準額が5700円から6100円に変更されました。

傷害慰謝料は、1日につき4200円から4300円に変更されました。

後遺障害慰謝料は、1級~12級のものについて、微増となりました。

葬儀費は、基本60万円から100万円に変更されました。

死亡本人の慰謝料は、350万円から400万円に変更されました。

具体的な数字こそないものの、ライプニッツ係数が変更になり、控除される中間利息が少なくなることから、後遺障害逸失利益も増額になると見込まれます。

被害者側が受けると賠償金が増えるということなので、素直に歓迎すべきではないかと思われます。

交通事故実務に与える影響は少なくないと思われますので、発生事故日が前か後かを意識しつつ、業務に従事したいと思います。

強制わいせつ致傷

三重県松阪市内の開業医が強制わいせつ致傷罪に問われ、懲役3年を求刑されたとの報道がなされました。

起訴状によれば、被告人のわいせつ行為を被害者が避けようとした際に椅子から落ち、左目付近を床に打って負傷したとのことです。

基本犯である強制わいせつ罪(刑法176条)は、暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をすることで成立します。
ここでの暴行は、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度のもので足りるとされます。
キスをすること等は、それ自体を暴行と言えるかは微妙ですが、被害者の隙を突いたような場合等には暴行になると解されています。

前記基本犯の結果的加重犯である強制わいせつ致傷罪(刑法181条1項)では、前記基本犯の既遂・未遂が成立する場合において、前記基本犯と傷害の結果との間に因果関係が必要と解されています。
暴行やわいせつ行為自体によって負傷した場合はもちろん、被害者が被害を免れようとした際に生じた負傷でも、因果関係は肯定されます。
また、結果の発生についての故意は不要と解されています。

なお、強制わいせつ致傷罪の法定刑は、無期または3年以上の懲役であるため、裁判員裁判となっており(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項1号)、この点においても注目されます。

裁判例検討(横断歩道通行中の自転車との事故)

今回取り上げる大阪地判令和2.1.24は,横断歩道走行中の自転車と右折進行してきた四輪自動車とが衝突したというものです。
初診では,身体各部に打撲傷と擦過傷が確認されましたが,明らかな骨傷はなしとの判断でした。

本件では,過失割合や後遺障害の有無等が争点となりました。

過失割合について,裁判所は,自転車運転者は横断歩道上であっても安全運転義務を負うなどと述べ,1割の過失を認定しました。
このように,横断歩道上でも,自転車は歩行者とは異なる評価をされることは,留意しておくべきでしょう。

後遺障害については,自賠責上非該当ではあったものの,私的鑑定書等を証拠提出するなどして,12級相当の主張がされていましたが,否認されました。
私的鑑定書については,詳細に検討された上で,事故との関連性不明,軽症・永続性なし等と判断されました。
自賠責上の認定が裁判上の認定とイコールではないとはいえ,求められる立証の程度は相当高いという印象を受けました。

無銭飲食

三重県志摩市のホテルに宿泊中の男性が,宿泊代金約500万円を支払わなかったとして,詐欺の被疑事実で逮捕されました。

報道によれば,宿泊期間は16日間で,その間,知人を招いたりしていたとのことです。
16日間でここまでの金額になったというのは,相当高額な飲み食いを複数回していたのだろうと思われます。
大胆不敵と言わざるを得ません。
後日において絶対にばれるにもかかわらず,いかなる動機でこのようなことに及んだのか,少々気になるところです。

判例によれば,十分なお金がないことを認識しつつ,宿泊をしたり,飲食を提供させたりした時点で,詐欺罪が既遂となります。
そして,246条1項の詐欺(人を欺いて財物を交付させる)と同条2項の詐欺(人を欺いて財産上の利益を得る)の包括一罪が成立すると解されます。

詐欺罪は財産犯なので,被害金額の大きさが犯情の重さに大きな影響を与えます。
被害弁償がされない限り,初犯であったとしても,厳しい判決となるでしょう。

もう一つ問題となるのが,招かれた知人は詐欺罪にあたらないのかということです。
詳細な事情は不明ですが,被疑者より無資力の事情を知らされていたり,被疑者が十分な資力を有しないことを十分認識していたりした場合は,知人にも詐欺罪が成立しうると思われます。
他方,宝くじ等で大当たりが出たから等の説明を受けていた場合は,それが嘘であると確信していた場合を除き,詐欺罪の成立は難しくなると思われます。

警察官を名乗る詐欺事件

三重県内の津と桑名にて,警察官を名乗る男に通帳・キャッシュカードをだまし取られるという詐欺事件が発生しました。
警察官への市民の信頼に乗じた犯罪で,複数人で計画的に行っていることも踏まえると,悪質な犯罪というほかありません。

このような事件では,犯人は,だまし取った直後に口座からお金を引き出すのが通例で,気づいた時には既に引き出された後だったということが非常に多いです。
そして,犯人が検挙されたとしても,資力の問題から全額戻ってくる可能性は低いです。
そのため,可能な限り,騙されないよう努めるのが第一です。

今回の事件報道を見るに,怪しむべきポイントが複数認められます。
(1)警察官は一人
警察官が動くときは,基本的に,2人以上の複数で対応しています。
(2)そもそも家に来たこと
電話等で署に呼び出して話を聞くのが普通です。
もちろん,逮捕,捜索差押えのほか,その他の事情がある場合に来ることはありますが。
(3)犯人の携帯で「署」に電話させたこと
特殊詐欺では,信用してもらうべく,被害者に別の共犯者と電話をしてもらうことが多々あります(もちろん,この共犯者も警察官のフリをしています)。
通常の警察官対応で,このようなことは滅多にありません。
警察署の電話番号はホームページで公開されていますので,インターネット等で調べて電話をかければ,ニセモノであることがすぐ判明すると思われます。

参考にしてもらえればと思います。

県内における飲酒運転の減少

これまで多数の報道がされてきたように,飲酒運転は,悲惨な結果をもたらします。
被害者は当然ですが,加害者においても,深い心の傷が残ることが少なくありません。

10/1の三重県知事の発表によれば,県内における飲酒運転の件数は,「三重県飲酒運転0をめざす条例(「当該条例」と呼称)」の施行から7年で約半数になったとのことです。

当該条例の特徴としては,前文が非常に長いことがあげられます。
厳罰化のみでなく,規範意識の向上によって飲酒運転を根絶しようというのが,その概要です。

当該条例は,県内外において飲酒運転をした県民に対して,指定医療機関におけるアルコール依存症の診察の受診とその報告を,期限付きで義務付けているのが特徴です。
前記義務違反に対しては,勧告等を行えると定めていますが,罰則の規定はありません。
罰則を設けるべきかどうかは議論のあるところでしょうが,全体の46.8%が受診したこと,当該条例がなければ相当の割合で受診までしなかった可能性があること等を考慮すると,素直に評価すべきでしょう。

アルコール依存症の怖いところは,法律を差し置いて飲酒が最優先事項となり,当事者本人が飲酒を止められなくなることです。
そして,アルコール依存症の完治は困難とされ,当事者及び周囲の関係者が長期継続的に取り組む必要があるとされています。
当該条例が飲酒運転・アルコール依存症減少の一翼を担うことを期待します。

裁判例検討(心的要因によって発生した症状)

交通事故によって発症する症状は,衝撃による筋肉・神経・骨の損傷といった身体的要因に基づくものが多いと思われます。
ストレス等の心的要因によって症状が発生することもありますが,身体的要因によるものと比べて数が少ないこともあって,事故との関連性を否定されたり,何割か減額(いわゆる素因減額)されたりすることが見受けられます。

心的要因は,レントゲン・MRI等の画像検査で検出されることもなく,立証面でも苦しいところがあります。

とはいえ,心的要因による症状が,減額なく認定される事例もあります。
名古屋地判平成21年2月27日(自保ジャーナル1797号17頁)における被害者は,左手母指の症状(内転位のままとなってしまい,自由に動かせない)が問題とされました。
医師は,精神的に強いストレスが続いたことが原因として発症したものと診断しています。
また,自賠責保険では,後遺障害非該当と判断されています。
これについて,判決では,事故との相当因果関係を認めた上で,次のような理由で素因減額を適用しないと判断しました。
① 人間が精神と身体から成る以上,事故のために心的要因による症状にり患したりすること自体は別段異常なこととは言えない。
② 心的要因が損害発生に寄与しているとしても,常に素因減額を適用するのは相当でなく,例えば通常人と異なる被害者の特異な性格によって損害発生ないし拡大を生じたなど,通常の場合を超えるような心的要因の特別の寄与がある場合に限り,適用可能と解すべき。
③ 本件の被害者に前記②にあたるような事情は,証拠上認められない。

本裁判例は,下級審における一事例にすぎませんが,事故で苦しむ被害者の実態への理解が感じられ,参考にすべきと思われます。

診療報酬の不正請求

三重大学医学部附属病院にて,複数の医師が診療録(カルテ)を改ざんし,診療報酬約2800万円を不正に請求したとのニュースが報道されました。

地元の基幹病院でありますし,衝撃は大きいです。
今後の推移を見守りたいと思います。

ところで,三重大学医学部附属病院に所属する医師となると,年次や地位に基づく相応の給料が病院から支払われると思われます。
個人医院の院長ならともかく,このような大学病院に勤務する医師が,高額の診療報酬を得たところで,給与が即増えるとは思われません。
何とも,動機が気になるところです。
不正請求分が,大学病院の口座を通さず,自身の口座に振り込まれるような仕組みを構築していたのですかね?

仮に不正請求が事実として認められれば,詐欺罪(刑法246条1項)に該当することになるでしょう。
もっとも,詐欺によって獲得した金員を全額弁済できれば,軽微な処分に止まるはずです。
2800万円は大金ですが,医師という高収入の仕事で,かつ,複数人となれば,あながち不可能とも思われません。

加えて,刑事処分の推移を踏まえて,厚生労働省が所管する医道審議会にかけられることになるでしょう。
この場合,3年以下の医業停止や医師免許の取消しがなされる可能性があります(医師法7条1項)。
医師にとっては,こちらの方が死活問題なのかもしれません。

不定期刑

三重県四日市市内の市道において,19歳の少年が,女子高生(当時15歳)を自動車でひき逃げし,その受傷が原因で死亡させた事件につき,津地方裁判所四日市支部は懲役1年6月~2年6月の実刑処分とする判決を言い渡しました。

19歳以下の少年については,家庭裁判所における保護処分が言い渡されることが通例ですが,本件では結果の重大性の行為態様の悪質性,証拠隠滅を図る等の情状の悪さが考慮されて,逆送され(少年法20条1項),懲役刑かつ実刑となった模様です。

前述のとおり不定期の刑となっていますが,これは少年法52条1項が次のとおり規定しているからです。
「少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは,処断すべき刑の範囲内において,長期を定めるとともに,長期の二分の一(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて,これを言い渡す。この場合において,長期は十五年,短期は十年を超えることはできない。」

なお,犯人が自らの犯行の証拠を隠滅すること自体は,刑法犯には問われません(当該犯行における刑罰の量刑には影響しますが)。
刑法104条は,「他人の刑事事件に関する証拠」と冒頭で明記しています。

不同意堕胎致傷罪

妊娠した女性の同意を得ないまま堕胎させたとして,外科医が逮捕されるというショッキングなニュースを目にしました。

ここで被疑事実となっているのが,不同意堕胎致傷罪というあまり見聞きしない罪名です。
この機に調べてみたいと思います。

刑法215条1項は,女子の嘱託・承諾を得ずに堕胎させた場合,6月以上7年以下の懲役に処すと規定します。
嘱託・同意を得ない堕胎行為は,胎児・女子の生命・身体を侵害する行為として違法性が高いことから,重い罪となっています。

さらに。刑法216条は,前条の行為によって女子を死傷させた場合は,傷害の罪と比較して重い刑に処すと規定します。
具体的には,傷害罪(刑法204条)と比較し,上限・下限とも重い方で処断するということであり,不同意堕胎致傷罪については6月以上15年以下の懲役に処せられることになります。

執行猶予は懲役3年以下でないとつかないこと,女性側の処罰感情はおそらく峻厳であること,医師という高度な職責を担う立場であり,社会的影響も大きいこと等を考慮すると,実刑の可能性が高いと思われます。

弁護士法人心千葉法律事務所

タイトルの事務所が,この度,開所となりました。

所属弁護士・事務員一同,充実した法的サービスの提供に向けて,一層努力してまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

私個人としては,千葉県は通過したことはあっても,降りたことはないように記憶しています。

これまでの関わりというと,小学生の頃,夏休みにディズニーランドに行ってきたという知人の土産話を聞いて,ふーんと思っていたくらいですかね。

いずれは行ってみたいなと思います。

https://www.chiba-bengoshi.pro/

後遺障害逸失利益について定期金賠償を命じた最高裁判決に関する考察

既に様々なところで話題となっていますが,交通事故で重度の後遺障害(第3級3号)を負った被害者(事故当時4歳)の後遺障害逸失利益について,定期金賠償による支払いを認めた最高裁判決について,私的に考察したいと思います。

定期金賠償とは,損害賠償金を定期的に給付させるものです。
民法は不法行為に基づく損害賠償を一時金賠償に限定はしておらず,将来介護費等については特に問題なく認められてきました。
主なメリットとしては,一時金賠償に比べて,実情に照らして実態に即した賠償金を受けられること,浪費による散逸を防ぎやすいこと,中間利息の控除がない分,最終的に獲得できる金員が大きくなる可能性があることがあげられます。
他方,賠償義務者側においては,長期にわたる支払い手続きの遂行を余儀なくされ,一時金賠償と比べて大きな管理コストが生じること等が指摘されています。

本判決では,後遺障害逸失利益を18歳から67歳までの間,毎月,取得すべき収入額を定期金により支払うことを認めた原審判決が是認されました。

本判決はその主な理由として,次のような事情を挙げています。
不法行為に基づく損害賠償制度の目的(=被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者の被った不利益を補填して,不法行為がなかった状態に回復させること)と理念(=損害の公平な分担を図ること)に照らすと,後遺障害逸失利益については,定期金賠償が相当と認められる場合がある。

原審判決では,次のとおりさらに詳細に述べています。
(1)後遺障害逸失利益は,将来介護費用との比較において,請求権の具体化が将来の時間的経過に依存している点等において共通しており,定期金賠償の対象となり得るものと解される。
(2)最高裁判例は,後遺障害逸失利益を定期金賠償によって支払うことを否定してはいない。
(3)本件は,年齢,後遺障害の性質や程度,介護状況などに照らすと,被害者の後遺障害逸失利益は,将来の事情変更の可能性が比較的高いこと,被害者側が定期金賠償を強く求めていること,別途将来介護費用の定期金賠償が認定されており,後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めても,賠償義務者側の過重負担にはならないことを総合勘案すると,定期金賠償を認める合理性がある。

今後,交通事故によって労働能力喪失率100%となるような後遺障害(1級~3級)となった場合は,本判決を踏まえて,逸失利益につき,一時金賠償を求めるか定期金賠償を求めるかを検討する必要があると思われます。

他方,労働能力喪失率が100%ではない後遺障害(4級~14級)については,前述の相当性要件を満たすかどうか定かでなく,少なくとも本判決の射程がそのまま及ぶことはないと考えられます。

異動のお知らせ

これまで在籍していた弁護士法人心津駅法律事務所から,新たに開設された弁護士法人心四日市法律事務所に異動となりました。

場所は,近鉄四日市駅の西側,「STAFF BRIDGE」という青い看板のあるビルの3階です。

これまでと変わらない,あるいは,それ以上の良質な法的サービスの提供に励みたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

ところで,先日,事務所引越しのためにレンタカー(軽四貨物)を借りて,大量の段ボールを積み込み,津から四日市へ移動していましたが,噂に聞いていた23号線の渋滞につかまり,とてもゆっくりとした移動になりました(慣れない車ということもあって,疲労がかなり蓄積)。
また,レンタカーを借りたのは久々でしたが,次のような予想外の事象に遭遇しました。
○ ハンドルを切った後,自動で戻ってこない(手動で戻す必要があった)
○ アクセルを踏んでも,すぐに加速しない(ワンテンポ置いてようやく加速する感じ)。
○ 冷房がほとんど効かない。
○ 当時雨が降っていたが,ガラスがすぐに曇った(冷房を切っててドアミラーを開けて対処することに)。
○ カーナビがずれている(帰りに全く違うところに連れていかれた)。

特にカーナビのずれは,一番冷や汗かきました。
何かおかしいなという直感が働いたのですが,カーナビを信じすぎてしまいました・・・。
便利な機械ですが,盲信は禁物ですね。

https://www.yokkaichi-bengoshi.com/

いじめ行為と損害賠償請求(相当因果関係)

いじめ行為(暴力や脅迫行為等」によって,被害者の身体・財物に直接損害が生じた場合,当該いじめ行為と被害者の損害との相当因果関係が認められるのは言うまでもありません。

問題は,損害が間接的に生じた場合に,相当因果関係が認められるのかです。
間接的に生じる典型としてあげられるのが,被害者の自殺です。
いじめ行為自体は,死を生じされるほどの危険性はないものの,被害者がいじめを苦に自殺した場合,その死亡による損害を加害者に請求することが出来るのでしょうか?

この度取り上げる大阪高判令和2年2月27日は,いじめらた被害者Dが自殺し,被害者遺族が加害者A・B・Cに対して損害賠償請求を行った事件です。

結論として,判決はいじめ行為と被害者の自殺(=損害)との相当因果関係を肯定しましたが,それに至る判断過程を次のように提示しました。

ア)自殺者の共通心理として,孤立感,無価値観,無力感,閉塞感があげられる。
イ)A~Cの各いじめ行為によって,Dに孤立感,無価値観,無力感,閉塞感が生じ,深化していったことを経て,Dが自殺に及んだことから,A~Cの各いじめ行為とDの自殺との間に事実的因果関係が認められる。
ウ)それまでのいじめに関する報道や研究論文,法整備,社会的影響などから,事件当時において,いじめ行為によって被害者が自殺に至ることは,一般的にあり得ることと考えられ,相当因果関係は認められる。

本件は,最終的には,過失相殺の適用・類推適用を認めて,加害者側の賠償責任が減額されているという特徴もあります。

危険運転致死傷罪

5月27日午前1時頃,愛知県一宮市にて,センターオーバーによる死亡事故が発生し,センターオーバーした側の運転者が危険運転致死罪で逮捕されました。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条は,危険運転致死傷にあたる類型として6つの類型を規定していますが,本件は「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(2号)」にあたるとされました。

どの程度の速度であれば該当するのかは,事例によると思われますが,調べたところ,制限速度50kmの道路を時速95km以上で走行していた被疑者に前記2号の危険運転致死傷罪の成立を認めた裁判例がありました。
何となくではありますが,制限速度を40~50km以上超過することが成立要件とされているように思われます。

私は三重県内に住んでいますが,この1カ月で,赤信号でいったん止まったものの,交差道路の車両がいなくなった瞬間に急発進した車両や,片側1車線の道路の対向車線にはみ出して追越をかけ,一気に複数台を抜いて先頭に入った車両をみかけました。
いずれも,事故をして受傷者がでたとなれば,危険運転致死傷罪(4,5号)にあたる行為です。
本件のような悲惨な事故が起きる前に,運転態様を改めて欲しいと思います。

通院頻度とコロナウイルスとの関連性

緊急事態宣言が出されてから,コロナウイルスへの感染リスクを考慮し,通院頻度を少なくした,または,通院しなくなったという患者様の相談を複数受けました。

交通事故治療に限らず,通院患者の減少は社会問題化しており,中には医院の経営状態にまで影響を及ぼしていることもあるようです。

心配される患者様のご意見はもっともなことであり,ご自宅にいること自体は,外出を控えるよう広報している政府・地方公共団体の方針にも沿うものです。

ところで,交通事故治療における通院頻度は,患者様の精神的苦痛を測る指標としても用いられており,これが少なくなると傷害慰謝料が減少するという影響が生じ得ます。
また,前回通院との間隔があまりに空きすぎると,事故との関連性が希薄化し,最悪,交通事故としての治療が打ち切られることもあり得ます。

さらに,「不要不急」の外出は・・・と言われていることに照らすと,当該患者様の通院治療は不要不急のものであったと評価されてしまうかもしれません。

「本当は通院したいが,感染リスクのために行けない」というご主張をしばしば耳にしますが,医療機関は営業自粛の対象には含まれておらず,通院治療は外出自粛と対象外と思われることから,そのようなご主張がどの程度受け入れられるかは未知数です。

大変な状況下ではありますが,ご一考いただければと思います。

難聴・耳鳴りと交通事故との相当因果関係

令和2年度版赤本に,「耳の後遺障害について」と題する講演録が収録されていました。

交通事故被害につき,耳(正確には外耳)への直接外傷がなく,鼓膜や耳小骨等の器官にはっきりとした損傷が認められないにもかかわらず,難聴や耳鳴りを訴えることはしばしばあり,事故との相当因果関係が争点となることも珍しくありません。

耳鼻科の専門医である講演者は,相当因果関係の判断要素として,主に次のような事柄をあげていました(※ 筆者の個人的解釈を含みます)。

A)被害者の年齢・既存障害としての難聴の有無

特に高齢者の方は加齢による既存の難聴があることが珍しくなく,それを差し引いての判断が求められるとのことです。

高齢者でなくとも,既存障害として難聴がある場合は,同様の考慮が必要となるでしょう。

B)耳鼻科専門医を受診した時期

専門医にかかっていない,あるいは,事故日から相当期間経過した後に受診した場合は,事故直後から継続する障害があったのかが疑問視されるとのことです。

もっとも,専門医でなくとも,早期に耳鳴り・難聴を訴えていたことが確認されれば,関連性が肯定される方向に働く余地はあるとのことです。

C)頭部打撲の有無

頭部打撲がある場合は,遅発性に症状が出現することが報告されているとのことです。

前記Bでは受診時期が遅れれば相当因果関係が認められにくくなるとのことでしたが,絶対ではないにせよ,弁明の余地が出てくるといったところでしょうか。

D)事故の規模

小規模事故の場合は,事故によって耳鳴り・難聴が生じるか疑問視されるとのことです。

もっとも,小規模事故において事故との関連性が問題となるのは,聴覚異常に限ったことではないでしょう。

外貌醜状に関する一考察

令和2年版赤本下巻に外貌醜状に関する講演録が載せられていました。
良い機会なので,あらためて検討してみたいと思います。

外貌醜状に関する自賠責保険上の後遺障害としては,次の4つに区分されます。

① 外貌に著しい醜状を残すもの(7級12号)

② 外貌に相当な醜状を残すもの(9級13号)

③ 外貌に醜状を残すもの(12級13号)

④ 上肢・下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの(14級3号・4号)

①著しい醜状とは,頭部において手のひら大以上の瘢痕が残ったとき,頭蓋骨に手のひら大以上の欠損が残ったとき,顔面部に鶏卵鶏卵大以上の瘢痕・10円硬貨以上のくぼみが残ったとき,耳殻軟骨部が2分の1以上欠損したとき,鼻軟骨部の大部分を欠損したとき,のいずれかに該当する場合とされます。

②相当な醜状とは,顔面部に5cm以上の線状痕が残った場合とされます。

③(単なる)醜状とは,頭部において鶏卵大以上の瘢痕が残ったとき,頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損が残ったとき,顔面部に10円硬貨以上の瘢痕・3cm以上の線状痕が残ったとき,頚部に鶏卵大以上の瘢痕が残ったとき,のいずれかに該当する場合とされます。

これら外貌醜状の後遺障害が認定された場合,常に問題となるのが,逸失利益と慰謝料増額事由としての問題です。

前記講演録を見るに,次のような事情が考慮されているようです(※ 投稿者の独自解釈含みます)。

A)逸失利益との関係

交通事故時にいかなる職業に就いていて,外貌醜状によって,現在,当該仕事内容や収入に具体的影響が生じているか。現在は影響がなくても,職種・年齢等から将来的に異動・転職の場面を含めて影響が及ぶと認められるか。

※ 外貌醜状の部位・内容・程度が出発点となり,一般的に等級の高いものほど労働能力喪失が認められやすい傾向がある。

B)慰謝料増額事由との関係

具体的な労働能力の喪失があるとまでは認められない場合であっても,後遺障害等級に応じて通常想定される精神的苦痛ではなお評価し切れない部分が認められるか。

改正健康増進法

改正健康増進法によって,三重県内においても,近鉄電車で喫煙車両がなくなったり,建物内で喫煙ができなくなったりと,様々な影響が出ています。
そんな健康増進法について,少し取り上げてみたいと思います。

健康増進法は,平成14年(2002年)に成立した法律で,その目的は,「我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い,国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ,国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに,国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ,もって国民の健康を図ること」とされています(同法1条参照)。

改正25条では,国及び地方公共団体の責務として,受動喫煙の防止の推進が努力義務として規定されています。

さらに,改正25条の3では「何人も」受動喫煙が生じないよう配慮する義務を負い,「多数のものが利用する施設を管理する者」は,喫煙場所を定めるときは,望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮する義務を負うとしています。

そして,改正25条の8は,都道府県知事に,対象施設に対して,受動喫煙が生じないような措置をとるよう勧告(※ 応じなければその旨公表できる)・命令(※ 勧告に応じなかったことが前提)することが出来るとし,改正25条の9においては,立入検査等も出来るとしています。

その上で,改正40条や42条は前記命令に違反したり,検査を拒否したりした場合は,過料に処すことが出来るとされています。

この「過料」は行政罰の一種で刑罰ではありませんが,配慮義務の一般化や,行政機関に勧告・(違反を前提とした)公表・命令・立入検査等を認めることで,十分な抑止効果がもたらされるのではないでしょうか。

喫煙される方には辛い状況ですが,受動喫煙による健康被害は各種調査によって明らかとなっているところなので,本改正によって望まない受動喫煙がなくなればいいなと思います。