特定遺贈と包括遺贈1

相続人以外に財産を引き継いでほしいとの希望から,遺言が作成されることがあります。
このとき,専門家が遺言の作成に関与すると,遺言の文言としては,おおむね,「○○を○○に遺贈する」との文言が用いられることとなります。

遺贈の仕方には,特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。
特定遺贈は,特定の財産を遺贈することを言います。たとえば,三重県○○市○○町○○番の土地を遺贈する,○○銀行の普通預金(口座番号○○)を遺贈するといったものになります。
包括遺贈は,遺産の全部または一定割合を遺贈することを言います。たとえば,遺産をすべて遺贈する,遺産の2分の1を遺贈するといったものになります。
一定割合を遺贈する場合(たとえば,遺産の2分の1を遺贈する場合)は,どの遺産を誰が取得するかを確定するため,遺産分割協議等を行う必要があります。

遺贈の場合は,相続人に相続させる旨の遺言があった場合と異なり,登記申請については,受遺者(遺贈を受ける人)と相続人の共同申請になり,相続人全員から実印,印鑑証明書の提供を受ける必要があります。
このことは,特定遺贈であっても包括遺贈であっても,変わりがなく,いずれも,相続人全員の協力を得なければ,登記の手続を進めることができません。
一部の相続人でも協力を得ることができなければ,登記を行うことができないこととなります。また,連絡をとることができない相続人がいる場合も,同様の問題が生じることとなります。
どうしても相続人全員の協力を得られない場合は,協力を得られなかった相続人を相手として,所有権移転登記手続請求等の訴訟を行い,判決を得る必要があることとなります。

登記に際し,相続人全員の協力を得られないかもしれないという懸念があるのであれば,遺言で遺言執行者を指定することを検討する必要があります。
この場合は,受遺者(遺贈を受ける人)と遺言執行者の共同申請により,登記の手続を進めることができます。
受遺者(遺贈を受ける人)自身を遺言執行者に指定することもでき,この場合は,受遺者兼遺言執行者として,1人で登記の手続を行うこともできます(もっとも,遺言執行者に就任した場合は,民法の規定により,相続人に対して財産目録を交付する等,相続人とのやり取りを行う必要が生じることとなります。このため,相続人との紛争が懸念される場合は,第三者を遺言執行者に指定した方が,スムーズに手続を進められるかもしれません。)。

Notice: This work is licensed under a BY-NC-SA. Permalink: 特定遺贈と包括遺贈1