カテゴリー別アーカイブ: その他1

相続放棄時の解決金について

相続人が2人で,遺産分割の結果,1人が遺産のすべてを取得し,もう1人が代償金の支払を受ける場合があります。
支払われた代償金については,税金上,相続により取得した財産に算入されることとなり,相続税が課税されることとなります。

上記と似たような例で,1人が遺産のすべてを引き継ぐ目的で,もう1人が相続放棄を行い,その代わりに解決金の支払を受ける場合があります。
いずれも,1人が遺産のすべてを引き継ぎ,もう1人が代わりにお金の支払を受けるという点では,同じであるということになります。
ところが,相続放棄を行い,代わりに解決金の支払を受ける場合には,相続放棄を行った人は,法律上,最初から相続人ではなかったこととなりますので,相続税が課税されることはないと考えられます。
それでは,相続放棄を行う代わりに支払われた解決金については,まったく税金が課税されないのでしょうか。
調べた限りでは,色々な考え方があるようですが,解決金が一時所得と扱われ,所得税が課税されるとする見解もあれば,実質的には贈与と扱われ,贈与税が課税されるとする見解もあるようです。

実のところ,弁護士として仕事をする中では,「解決金については,税金が課税されない」と説明することがあります。
たとえば,損害賠償金が解決金の名目で支払われる場合,損害賠償金については所得税等が課税されませんので,「解決金については,税金が課税されない」という説明を行うこととなります。
もっとも,厳密には,解決金は,解決金が支払われる実質的根拠を踏まえ,課税されるかどうかが判断されることとなっていますので,どのような場面であっても「解決金については,税金が課税されない」と判断することはできません。
想定外の課税がされたといった事態を避けるためにも,多額の支払を受けて和解を行う場合等には,一度,課税されるかどうかについて,確認を行うのが安全でしょう。

特定遺贈と包括遺贈2

遺贈で注意しなければならないのが,相続財産に農地が含まれている場合です。

農地を特定遺贈する場合は,遺言で特定の農地を遺贈することとしただけでは名義変更を行うことはできません。
特定遺贈の場合は,農地の名義変更に際し,農業委員会の許可を得る必要があります。
この農業委員会の許可は,簡単に出してもらえるわけではありません。
農地を受け取る人が,一定面積以上の農地を所有し,農業を営んでいる等,いくつかの条件を満たさなければ,農業委員会の許可を得ることはできません。
このため,遺言で農地を特定遺贈することとしたとしても,農業委員会の許可を得ることができず,名義変更ができないという事態に陥ることもあり得るのです。

これに対して,包括遺贈の場合は,農業委員会の許可を得る必要はなく,遺言に基づき,遺贈の登記を行うことができます。
「すべての遺産を○○に遺贈する」という遺言でしたら,農業委員会の許可を得ることなく,個々の農地を○○名義に変更することができますし,「すべての遺産を○○と××に各2分の1の割合で遺贈する」という遺言でしたら,農業委員会の許可を得ることなく,個々の農地を○○と××の2分の1ずつの共有名義に変更することができます。

以上から,遺産に農地が含まれている場合で,相続人以外の方に遺贈することを希望される場合には,将来の名義変更の際,農業委員会の許可を得ることができるかどうかを検討し,許可を得ることができないと見込まれる場合は,包括遺贈を行う内容の遺言を作成することを検討することとなるものと思います。
私自身,弁護士として遺言の作成に関与することもありますが,最終的に登記が可能かどうかについてまで,注意を払わなければならないところだと考えています。

特定遺贈と包括遺贈1

相続人以外に財産を引き継いでほしいとの希望から,遺言が作成されることがあります。
このとき,専門家が遺言の作成に関与すると,遺言の文言としては,おおむね,「○○を○○に遺贈する」との文言が用いられることとなります。

遺贈の仕方には,特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。
特定遺贈は,特定の財産を遺贈することを言います。たとえば,三重県○○市○○町○○番の土地を遺贈する,○○銀行の普通預金(口座番号○○)を遺贈するといったものになります。
包括遺贈は,遺産の全部または一定割合を遺贈することを言います。たとえば,遺産をすべて遺贈する,遺産の2分の1を遺贈するといったものになります。
一定割合を遺贈する場合(たとえば,遺産の2分の1を遺贈する場合)は,どの遺産を誰が取得するかを確定するため,遺産分割協議等を行う必要があります。

遺贈の場合は,相続人に相続させる旨の遺言があった場合と異なり,登記申請については,受遺者(遺贈を受ける人)と相続人の共同申請になり,相続人全員から実印,印鑑証明書の提供を受ける必要があります。
このことは,特定遺贈であっても包括遺贈であっても,変わりがなく,いずれも,相続人全員の協力を得なければ,登記の手続を進めることができません。
一部の相続人でも協力を得ることができなければ,登記を行うことができないこととなります。また,連絡をとることができない相続人がいる場合も,同様の問題が生じることとなります。
どうしても相続人全員の協力を得られない場合は,協力を得られなかった相続人を相手として,所有権移転登記手続請求等の訴訟を行い,判決を得る必要があることとなります。

登記に際し,相続人全員の協力を得られないかもしれないという懸念があるのであれば,遺言で遺言執行者を指定することを検討する必要があります。
この場合は,受遺者(遺贈を受ける人)と遺言執行者の共同申請により,登記の手続を進めることができます。
受遺者(遺贈を受ける人)自身を遺言執行者に指定することもでき,この場合は,受遺者兼遺言執行者として,1人で登記の手続を行うこともできます(もっとも,遺言執行者に就任した場合は,民法の規定により,相続人に対して財産目録を交付する等,相続人とのやり取りを行う必要が生じることとなります。このため,相続人との紛争が懸念される場合は,第三者を遺言執行者に指定した方が,スムーズに手続を進められるかもしれません。)。

法定相続情報証明制度2

法定相続情報証明制度が導入されて3か月ほどが過ぎましたが,まだ,この制度を利用する機会がありません。

現時点では,相続税申告については法定相続情報証明制度を利用することができないようです(三重県内の税理士会の研修会で,このことに言及されたことがあったそうです。)。
預金払戻しの際,法定相続情報証明制度の利用を認めるかどうかについては,各金融機関で対応がばらばらのようです。

個人的には,法定相続情報証明制度を利用したとしても,結局は,相続関係を特定する戸籍一式を収集しなければならず,手続の手間は,これまでとそれ程変化がないように思います。

制度の導入に際しては,金融機関によっては戸籍一式の原本を還付しないことがあるため,何度も戸籍一式を集めずに,複数の相続手続を進めることができるとの説明がなされていたようです。
もっとも,現実には,ほとんどの金融機関が,戸籍一式を提出した場合であっても,戸籍一式を還付してくれますので,この点でも,あまり利点が生じていないのが実情であるように思います。

個人的には,今後,法定相続情報証明制度を利用することがあるとすれば,戸籍一式等の原本を基本的に還付してもらえない手続で,戸籍一式の代わりに法定相続情報証明を提出するという利用方法になるのではないかと思います。
思い当たる場面としては,特定の相続人以外が相続放棄の申述を行い,その後,特定の相続人が預金払戻し等の手続を行う場合です。
この場合,相続放棄の手続のため,家庭裁判所に戸籍一式を提出する必要があるとともに,預金払戻しのため,金融機関に対しても戸籍一式を提出する必要があります。
そこで,戸籍一式の代わりに,法定相続情報証明を提出することとすれば,複数回戸籍を取得しなくても済むこととなりそうです(もっとも,このような理由から相続放棄が行われるのは,やや例外的であると思います。)。

遺言書の開封・検認

遺言書が封筒などに封印されているときは,家庭裁判所で開封しなければなりません。
また,遺言書(公正証書遺言は除きます)は,家庭裁判所で検認しなければなりません。

開封・検認の手続は,同じ期日に行われます。
開封・検認の手続を行うに先立って,相続人全員に対して通知が行われ,手続きに立ち会う機会が与えられます。

家庭裁判所以外で開封したり,検認の手続きを行わなかったりした場合には,5万円以下の過料の制裁が科せられます。
また,検認を経なければ,一定の場合には,不動産登記の名義を変更することができません。
もっとも,これらの手続きを怠ったからといって,遺言自体が無効になるわけではありません。

開封・検認については,弁護士を代理人として,手続を進めることもできます。
この場合には,開封・検認の期日には,弁護士のみが出頭し,相続人本人については出頭しないこととすることもできます(ただし,相続人本人が検認期日に出頭し,遺言書の保管方法等について陳述することを求める裁判所もあります)。

特別受益の持戻し免除

民法は,被相続人が,相続開始時までに,遺産分割に際して特別受益を持ち戻す必要がないとの意思表示を行った場合は,持戻し計算をしないものとしています。
この場合は,特別受益を考慮することなく,相続分を基準として,遺産分割が行われることになります。

たとえば,事業承継のために,後継者に対して,自社株の生前贈与が行われた場合に,生前贈与された自社株が特別受益と扱われると,その分,相続の際の後継者の取り分が少なくなってしまいます。
そうなると,残りの自社株や事業用資産を後継者に集中的に承継させることができなくなってしまうおそれがあります。
このような場合には,持戻し免除の意思表示をすることにより,生前贈与された自社株が特別受益と扱われないようにすることができます。

生前贈与の持戻し免除については,方式について法律の特別の定めはありません。
実際には,持戻し免除の制度自体が広く知られていないためか,明示的に,持戻し免除の意思表示が行われることは,それ程多くありません。
実務上は,生前贈与を受けた相続人から依頼を受けた弁護士が,黙示の持戻し免除の意思表示が存在するとの主張を行うことが多いです。

民法改正

民法改正の研究会に参加してきました。
今回の民法改正は,明治期以来の民法のあり方を根本から変えるものですので,今後の弁護士の仕事に大きな影響を及ぼすものです。
個人的には,消滅時効の期間が5年に短縮されるのが,影響としては大きいと感じています。
今後のためにも,情報収集が必要な部分です。

東京地方裁判所

東京地方裁判所へ行ってきました。
以外にも,始発に近い電車で松阪を出て,近鉄,新幹線を乗り継いで移動すれば,午前9時30分の期日に間に合うようです。

法定相続情報証明制度1

5月29日から,法定相続情報証明制度が始まりました。
法定相続証明情報制度とは,法務局で一定の手続をとることで,被相続人の相続関係を証明する証明書を発行してもらうことができる制度です。
相続関係を証明する証明書を発行してもらうことで,被相続人名義の預金の払戻し,不動産の名義変更等の手続の際,毎回戸籍一式を提出しなくても済むようになり,相続手続を円滑に進めることができるようになるといわれています。

この制度を用いる場合には,まず,法務局に対して,戸籍一式とともに,被相続人の法定相続情報一覧図(被相続人の家系図のようなものです)を作成し,提出することになります。
法務局は,法定相続一覧図に誤りがないか等を確認し,証明書を発行することとなります。
一度,証明書を発行すると,5年間は,証明書の再交付を受けることができます。

法定相続情報証明制度では,被相続人が亡くなった時点での相続関係が証明されることとなっています。
このため,被相続人が亡くなって以降,相続人が亡くなり,数次相続が発生したとしても,証明書に記載される法定相続一覧図が変更されることはありません。
裏返せば,法定相続一覧図に記載された相続人が現在も生存しているかどうかについては,証明書を見ても,分からないということになります。
理屈からすると,法定相続一覧図に加え,相続人の現在戸籍を提出しなければ,記載した相続人が生存していることについての証明がなされたことにはならないこととなりそうです。

法務局での登記手続については,現時点でも,法定相続情報証明により,相続登記を進めることができます。
家庭裁判所については,現在,法定相続情報証明の取り扱いについて検討中のようですが,一部の家庭裁判所では,法定相続情報証明に加え,相続人の現在戸籍,被相続人の除籍等の提出を求める取り扱いとする方向と聞いています。

弁護士として活動する中で,相続関係を証明しなければならない場面は多々ありますが,今後,法定相続情報証明の制度をどのように用いることができるかについては,まだ決まっていない部分が多いようです。

柏駅法律事務所

当法人が,新たに柏駅に事務所を設けることになりました。
ホームページはこちらです。

柏駅は,東京都と千葉県の境あたりにある駅です。
私自身,弁護士になる前に,何度か,仕事の関係で訪れたことがあります。
JRと私鉄の路線が交わるベッドタウンであったように記憶しています。