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アパートの贈与2

それでは、どのような場合に、通常の贈与ではなく、負担付贈与と扱われることとなるのでしょうか。

負担付贈与は、贈与を受ける人が一定の負担を負うことを条件に、財産の贈与が行われることを言います。

分かりやすいのは、贈与の際に、一定の経済的負担を負う場合です。
たとえば、贈与を受けた人が贈与をしてくれた人に対して、今後の生活費を支払うことを約束する場合です。

見逃されるおそれがあるのは、アパートローンの残債務がある場合に、アパートを子に贈与するとともに、今後のアパートローンを子が返済することとする場合です。
感覚的な話としては、贈与されて以降は、アパートの賃料は子が取得することとなりますので、アパートローンの返済を子が行うのは自然なことに見えます。
ところが、税との関係では、子がアパートローンを返済することを条件に、アパートの贈与を受けることとなりますので、負担付贈与であるとの評価がなされることとなります。
このため、時価により、アパートの評価額を算定し、贈与税と相続税(相続時精算課税制度を用いた場合)のを納付する必要があることとなります。

以上から、アパートローンの残債務がある場合は、残債務を一括返済し、アパートの贈与をするだけにしてしまうこと等を検討した方が良いこととなります。

分かりにくいのは、敷金がある場合です。
アパートの贈与がなされると、敷金については、未払賃料があると未払賃料に充当されますが、残額については、譲受人に引き継がれます。昭和44年の最高裁の判決がこのような結論を述べているからです。
このため、子へのアパートの贈与がなされると、敷金の返還義務についても、子に引き継がれることとなります。
これは、敷金返還義務の負担付の贈与と評価されますので、アパートについては、時価での評価を行わなければならないこととなってしまいます。

このような事態を避けるには、アパートの贈与と同時に、敷金相当額の金銭も贈与することとし、実質的には敷金返還義務の負担のない贈与であるとの評価をしてもらう必要があります。

このように、弁護士の感覚では当然の処理であったとしても、税金のと関係では思わね結果を招いてしまうこともあります。
資産の移転についての契約書作成に際しては、税金がどのように課税されるかも合わせて検証することが推奨されます。

アパートの贈与1

相続税対策のため、アパートの贈与が行われることがあります。
アパートを所有し続けると、毎月の賃料収入が発生し続けることとなります。
賃料収入が積み上がると、相続の対象となる財産が増加し、相続税の額が多額になる可能性があります。
こうした事態を避けるため、アパートを生前に贈与し、子の名義に変更してしまうことがあります。
子の名義に変更すれば、その後の賃料収入は子が取得することとなりますので、相続の対象となる財産の増加を避けられる可能性があります。
このような理由から、アパートの贈与は、相続税対策になり得るとされています。

ただ、アパートを贈与となると、多額の財産の贈与となりますので、今度は、多額の贈与税が課税されることとなります。
このような贈与税の課税を避けるため、相続時精算課税制度が同時に用いられることも多いです。
三重県の案件でも、相続時精算課税制度を用いている例は、たまに見かけます。

ところで、アパートの贈与を行うに当たっては、注意しなければならないことがあります。
それは、税負担との関係では、負担付贈与と扱われることを避けた方が良いということです。

前提として、負担付贈与は、贈与を受ける人が一定の負担を負うことを条件に、財産の贈与が行われることを言います。

贈与の際には、土地や建物といった財産の評価を行った上で、贈与税の課税額を算定することとなります。
このとき、通常の贈与であれば、財産の評価は相続税評価額を用いることができます。
したがって、たとえば、土地については、路線価方式または倍率方式により評価が行われることとなりますので、おおむね時価の8割程度に収めることができることが多いです。

これに対して、負担付贈与の場合は、財産の評価は通常の取引価額により行われます。
したがって、土地についても、時価のままで評価が行われることとなり、高額になりがちです。

このように、負担付贈与と扱われた場合は、財産の評価が高額になりがちですので、課税される金額も高額になりがちとなります。
この点を踏まえると、負担付贈与と扱われることは避けたいということになるでしょう。