月別アーカイブ: 2015年 6月

認知症についての勉強会

認知症についての,弁護士を対象とした勉強会に参加しました。
認知症の類型(アルツハイマー型,レビー小体型等)の類型から,現在の研究の状況等まで,様々な話を伺うことができました。

1年前程前には,あと10年もすれば,認知症の症状の進行を止める新薬が開発されるという話を伺ったこともありますが,最新の治験では,新薬の開発は必ずしもうまくいっているわけではないとのことでした。
研究に関する情報は日々変化するものであり,一昔前の話が必ずしも正しいわけではないということを実感しました。

公正証書遺言の利点2

公正証書遺言の利点としては,他に,遺言の有効性が争われにくいということがあります。
公正証書遺言の場合は,公証人の関与のもとに作成されますので,手続の適正性についての信頼性が高いです。

自筆の遺言の場合でしばしば争いになるのが,残された遺言が,本当に,遺言者が作成したものなのかということです。
遺言者ではなく,相続人の一部が自分に有利な遺言を作成したのではないかとの主張が,他の相続人から出てくることがあります。
このような主張が想定される場合は,慎重に対処することが必要だと思います。

遺言の有効性が争われる場合に,遺言無効確認訴訟が起こされることがあります。
遺言無効確認訴訟では,遺言の筆跡が誰のものであるのかが審理されることとなります。
そして,遺言の筆跡が遺言者の者であることについては,遺言の有効性を主張する側に証明責任があるとされています。
このため,遺言が遺言者の筆跡によることが証明されなければ,遺言は無効であるとの判決が下されることとなるのです。

それでは,遺言が遺言者の筆跡であることを証明するためには,どのようなことを行えばよいのでしょうか。
多くの場合には,遺言者が書いた別の文書を持ってきて,その文書の筆跡と遺言書の筆跡が同一であるかどうかにつき,鑑定人に鑑定してもらうこととなります。

この場面で問題になるのが,遺言者が書いた別の文書が残っているかどうかです。
実務では,遺言者は,生前,字を書くことがあまりなかったため,遺言者が書いた別の文書が残っていないということが,想像以上に多いです。
また,当方が遺言者が書いたと主張する文書を持って行っても,相手方が,その文書は遺言者が書いたものではない,との主張を行うことも想定されます。
このような場合には,遺言者が書いた別の文書について,遺言者が作成したことを証明しなければならないという状況に陥ってしまいます。
このため,遺言者が書いた別の文書としては,文書の性質等から,遺言者自身が書いたことが確かであるというものか,遺言者が書いたということについて,相続人間で争いがないものを準備する必要があるということになります。

このように考えていくと,遺言を遺言者が作成したという点についての争いが生じることを避けるため,公証人の関与のもとに遺言を作成することは,1つの大きな利点だといとうことができると思います。

私自身,弁護士として遺言書の作成を受任する際は,遺言の有効性についての争いを避けるための手立てを打つことは必須だと考えますので,公正証書遺言を作成するか,自筆で遺言を作成し,その遺言が遺言者が作成したもので間違いないことを証拠化する(録音を残す等)か,いずれかの形をとらせていただいています。

公正証書遺言の利点1

このように,公正証書遺言を作成する場合,手数料が必要となります。
財産総額,遺言の内容次第では,手数料が思わぬ金額になることもあります。
ただ,個人的には,手数料が必要であることを考えても,公正証書遺言を作成することには大きな利点があると思います。

第一に,公正証書遺言の場合は,検認が不要となります。
自筆で作成する,いわゆる自筆証書遺言の場合は,相続開始後に,裁判所に遺言書検認審判申立を行う必要があります。
検認とは,大まかに言うと,裁判所に相続人が集まり,遺言の内容を確認することをいいます。
検認の期日では,裁判所において遺言のコピーを取り,これを検認調書として保管することとなります。
遺言書が封筒に入っている場合は,封筒を開封する手続も行います。
検認・開封の手続を怠った場合は,いわゆる罰金等の制裁がかされる可能性があります。

検認手続について注意が必要なのが,不動産の相続登記です。
遺言に基づいて不動産の名義変更を行うには,法務局に登記申請書を提出し,相続登記を行う必要があります。
このとき,法務局は,自筆の遺言の検認調書を提出しなければ,不動産の相続登記の手続を進めてくれません(松阪に限った話ではなく,どこの法務局でもそうです)。
このため,相続登記を行うためには,前もって検認手続を行っておく必要があるのです。

検認手続で大変なのが,裁判所に遺言書検認審判申立を行う際に,遺言者の相続関係が分かる戸籍を提出することを求められるということです。
相続人が子のみである場合はまだしも,兄弟姉妹が相続人になる場合は,提出しなければならない戸籍が10枚以上になることが多々あります。
相続人の本籍地が日本各地に散らばっている場合は,各地の役所で戸籍を取得する必要もあります(郵送請求するという手もありますが,手間がかかります)。
このため,戸籍の取得だけで,かなりの時間と手間がかかってしまいます。

また,検認審判申立が行われると,相続人全員に対し,何月何日に検認期日を設けますので,裁判所に出頭してくださいという通知が行われます。
このようにして,相続人全員が裁判所に出頭する機会を設け,出頭した人が集まった状態で,遺言書の開封・検認を行うことになります。
相続人間の関係が悪くない場合は問題が少ないですが,相続人間の関係が悪化している場合は,このような手続を進めることは,かなりの負担になるものと思われます(もっとも,弁護士に検認審判申立を依頼した場合は,弁護士だけが検認期日に出頭するという形をとることもできます)。

この点,公正証書遺言の場合は,検認手続を行う必要がなく,相続登記も検認調書なしで進めることができますので,手続に要する手間がかなり小さくなります。

公正証書遺言の作成手数料3

公正証書遺言は,通常,公証役場で作成することとなります。
公証役場は,全国各地に存在するものの,公証役場が存在しない市町村もあります。
松阪の場合は,中央郵便局の向かいあたりにあります。

ただ,遺言者が入院している場合,施設で生活している場合等,公証役場まで出向くのが難しいこともあります。
このような場合には,公証人に特定の場所まで出張してもらい,そこで遺言を作成するという方法をとることもできます。
ただし,公証人に出張してもらう場合は,旅費を支払う必要があります(以前,松阪で作成したときは,1から2万円程でした)。
また,出張先までのタクシー代についても,作成を依頼する側の負担となります(公証人によっては,公証役場から出張先まで,依頼人が運転する車に同乗する形をとっても構わないとすることもあるようです)。

もちろん,出張先で遺言の内容についての聞き取りを行い,その場で公正証書を作成することはできませんので,出張をお願いする場合は,事前に,遺言の文案を作成し,公証人と打合せを行っておく必要があります。
打合せを行った上で,公証人は,公正証書を公証役場で作成し,出張先に持っていくこととなるのです。
打合せが不十分で,出張先で修正点が生じた場合は,公正証書を作り直すこととなり,後日,公証人にもう1回出張していただくこととなります。
当然,旅費・交通費も二重に必要になります。
1回で手続を終わらせるためにも,綿密な打合せが必要不可欠ということになります。