日別アーカイブ: 2017年10月25日

特定遺贈と包括遺贈2

遺贈で注意しなければならないのが,相続財産に農地が含まれている場合です。

農地を特定遺贈する場合は,遺言で特定の農地を遺贈することとしただけでは名義変更を行うことはできません。
特定遺贈の場合は,農地の名義変更に際し,農業委員会の許可を得る必要があります。
この農業委員会の許可は,簡単に出してもらえるわけではありません。
農地を受け取る人が,一定面積以上の農地を所有し,農業を営んでいる等,いくつかの条件を満たさなければ,農業委員会の許可を得ることはできません。
このため,遺言で農地を特定遺贈することとしたとしても,農業委員会の許可を得ることができず,名義変更ができないという事態に陥ることもあり得るのです。

これに対して,包括遺贈の場合は,農業委員会の許可を得る必要はなく,遺言に基づき,遺贈の登記を行うことができます。
「すべての遺産を○○に遺贈する」という遺言でしたら,農業委員会の許可を得ることなく,個々の農地を○○名義に変更することができますし,「すべての遺産を○○と××に各2分の1の割合で遺贈する」という遺言でしたら,農業委員会の許可を得ることなく,個々の農地を○○と××の2分の1ずつの共有名義に変更することができます。

以上から,遺産に農地が含まれている場合で,相続人以外の方に遺贈することを希望される場合には,将来の名義変更の際,農業委員会の許可を得ることができるかどうかを検討し,許可を得ることができないと見込まれる場合は,包括遺贈を行う内容の遺言を作成することを検討することとなるものと思います。
私自身,弁護士として遺言の作成に関与することもありますが,最終的に登記が可能かどうかについてまで,注意を払わなければならないところだと考えています。