業務上横領

三重県南伊勢町の町立南伊勢病院で会計を担当していた男性職員が、約1億5000万円を着服していたという疑惑が報道されています。

仮にこれが事実で、前記金額を弁償できない場合は、業務上横領罪(刑法253条、10年以下の懲役)として起訴され、初犯であっても、被害額の大きさから実刑になる可能性があると思われます。
未弁償の被害金額は、財産犯の罪の重さを決める大きな要素となるからです。
前記職員は、アイドルへの推し活やゲーム課金につぎ込んだとのことであり、どれだけ残っているかは?ですが。

会計担当者のように、直にお金を扱う業務に携わる人は、頻繁に着服・横領の誘惑にさらされています。
そして、残念ながらその誘惑に負けてしまう人は後を絶ちません。
実際、横領に関する報道は、よく目に耳にするところです。

団体・企業は、経験上、前記のようなことがわかっているので、複数人で事前・事後にチェックする、システム上担当者個人で動かせる金額の上限を定める、短期スパンで人事異動を行う等の対策をとっています。
完璧な対策はあり得ませんが、担当者に横領はできないと思わせる、横領されても大きな金額を動かせないようにすることが大事なのでしょう。

本件の報道によれば、前記職員は、約3年前からほぼ一人で担当していたとのことであり、対策がいささか不十分だったのかもしれません。

簡易裁判所で時々見る光景

我が国では、訴訟物の価額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円を超えない場合は簡易裁判所が第一審となります(※ 一部例外あり)。

簡易裁判所の扱う事件は金額が小さいこともあって、弁護士保険などがなければ、弁護士を代理人に立てると費用倒れになることが少なくありません。
そのため、地方裁判所に比べて、本人が訴訟行為をしている光景を見ることが多いです。

当事者本人は、事件に直接かかわっていることから、事件に対する理解は代理人以上です。
もっとも、法律論や裁判のルールについては未熟なため、その知識・経験談を上手くいかせていない場合は多々あります。
当事者が、声を大にして主張するだけでは足りません。
相手に対する怒り・憎しみから、裁判所には準備書面・証拠を出すが、相手方には見せないと主張している場面に出くわしたこともあります。

裁判長は、中立の立場を維持しつつ、そのような当事者本人をうまく誘導して、言っていることを法律論として解釈したり、証拠を提出するよう促したりしています。
また、感情的になっている当事者に対しては、なだめすかしながら、審理を進めるよう苦心しています。

法的素養とは別次元の当事者に対する指導力・指揮能力は、前述の事情から特に簡易裁判所裁判官に求められているように見受けられます。
裁判官も大変だなと思うところです。

電子計算機使用詐欺罪について考えてみる

4630万円の誤振込とその後の逮捕によって、一躍トレンドとなったのが逮捕の被疑事実である「電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)」です。
同じようなことが三重県でも起きないとは限らないため、検討してみたいと思います。

「電子計算機」とは余り聞きなれない用語ですが、それ自体が自動的に情報処理を行う電子装置として一定の独立性を有し、財産権の得爽、変更に係る電磁的記録の作出などを行い得るものとされます。
ますますよくわからなくなった気がしますが、オフィスコンピュータやパーソナルコンピュータ、制御用コンピュータが代表例とされます。

何が「使用詐欺」にあたるかは、条文を読んでもピンときにくいため、本罪にあたるとされた具体例を挙げていきたいと思います。
事例1)クレジットカードの名義人氏名を冒用して、ID・パスワード等を入力送信して、電子マネーの利用権を取得する。
事例2)還付金を受領できると騙し、振込送金の意思のない被害者にATMを操作させ、虚偽の情報を与えて、自分たちの口座に振込送金をさせる。
事例3)プログラムをほしいままに改変し、架空の振込送金の情報を与える。
事例4)パチンコ店で用意した変造カードを自動玉貸装置に挿入し、虚偽情報によって玉を排出させる。

これらの事例を見ていくと、被疑者・被告人が虚偽の情報・不正な指令を与え、それによって自らの預金残高・金員・財物を獲得しようとしているのがわかります。

しかし、今回の4630万円が被疑者の口座に当初振り込まれたことについて、被疑者は何らの関与もしていません。
被疑者は、4630万円もの振り込みがあったことに気づき、この利益を事後的に確保しようと動いたに過ぎないのです。

4630万円が法的に不当利得と評価されるのは明白としても、金融機関のシステム上、4630万円は被疑者の口座に存在することを前提に処理されます。
だとすると、被疑者が他の口座に振込送金することが、虚偽の情報・不正な指令を与えたとまで言えるでしょうか?

本件は額が大きいため、それによるインパクトが独り歩きしている感が否めません。
誤振込が40万円であった場合、ここまで騒がれているでしょうか?
被疑者は逮捕されたでしょうか?


前述のように、非常に悩ましい問題が存在していると思われます。
今後の展開を注視したいです。

三重県警における事件指導官・刑事課長会議について

報道によれば、標記の会議が13日に開かれ、その中で、三重県警本部長より、取調べについて基本的人権の尊重と公正誠実に行うべきこと等が訓示されたとのことです。

警察官の犯罪捜査における心構えは、犯罪捜査規範(昭和32年7月11日公布)に詳細に規定され、公開もされています。
前記訓示に関するものとしては、同第2条2項「捜査を行うに当つては、個人の基本的人権を尊重し、かつ、公正誠実に捜査の権限を行使しなければならない。」がそのまま当てはまります。

警察官にとっていわば当たり前のことを、指導者レベルの会議において訓示しなければならないこと自体、基本的人権の軽視や不公正・不誠実な捜査がはびこっていることを示唆していると解されます。

実例をあげましょう。
同168条1項は「取調べを行うに当たつては、強制、拷問、脅迫その他供述の任意性について疑念をいだかれるような方法を用いてはならない。」と規定し、同168条3項は「取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に又は長時間にわたり行うことを避けなければならない。・・・」と規定しています。
しかし、ここ2年間に限っても、被疑者から次のようなことを聞かされたことがあります。
・弁明を頭ごなしに否定し、嘘をつくな等と言われた。
・勾留中、被疑事実を否認していたが、連日、朝から夕方まで、同じ内容の質問を延々と繰り返された。

これらの実例から鑑みるに、一部の警察官は「自分の考えるストーリー」で事件を処理することに邁進し、犯罪捜査規範を軽視・無視しているのだと推認されます。

警察官になる以上、犯罪捜査規範を読んでいない人はいないと思われますが、試験や考査のために勉強するのではなく、実際の警察実務において活用していただきたいと切に願います。

言葉の説得力

同じことでも、正しいことでも、言う人によって、聞く気になったり、ならなかったりします。
後者をよく言い表す突っ込みとして、「お前が言うな」というのがあります。

「お前が言うな」の具体例をいくつか挙げてみたいと思います。
①Aさん(※ 待ち合わせ時間によく遅れてくる)から、「1秒たりとも無駄にしてはいけない」と言われた。
②Bさん(※ よく体調を崩す)から、「きちんと体調管理をするように」と言われた。
③Cさん(※ よく人の悪口を言う)から、「悪口を言うと自分に返ってくるからやめた方がいい」と言われた。

A~Cさんの言うことは、基本的に正しいことだと思われます。
しかし、彼らから言われても、全然説得力が感じられませんよね。
人に訓示する前に、自分を何とかしろと言いたくなります。

他方、いつも待ち合わせ時間5分前には来ているDさんから①を、風邪一つひかないEさんからは②を、悪口を一切言わないFさんから③を言われた場合は、どう感じるでしょうか?
全然説得力が違いますよね、たいていの人は聞く気になるのではないかと思われます。

弁護士業務においては、依頼者を説得したり、時には耳の痛いことを言わなければならないときもあります。
その際、依頼者に「お前がいうな」と思われては、正しいことでも聞いてもらえません。
常日頃より、気を付けて過ごしたいと思います。

多重事故発生

報道されていますように、16日午前8時40分ごろ、三重県四日市市川北町の伊勢湾岸自動車道下り線で、車両合計8台が絡む多重事故が発生しました。

事故の発端は、渋滞中の最後尾車両に、大型トラックが追突したというものです。
そこから、いわゆる玉突き事故の態様で被害が拡大しました。

現場は高速道路で、見通しを遮るものはありません。
時間帯も早朝で、照度に問題はなかったと思われます。
だとすると、事故原因は、ひとえに前記大型トラック運転者の前方不注視と考えられます。
普通に前を見ていれば容易に渋滞に気づく状況から、居眠りや携帯電話等のながら運転をしていた可能性も考えられます(※ 本人証言はありません)。
高速道路で相当な速度を出していたこと、ブレーキのタイミングが遅れたこと、加害車両の車体・車重が大きかったこと等も、被害を拡大させた原因でしょう。

映像を見るに、最後尾の車両は大破し、原形をとどめていなかったほか、他の車両の損害も著しいものでした。
ただ、本件事故による死者はおらず、不幸中の幸いというほかありません。

加害者本人は、自賠法・民法に基づく賠償責任を負うほか、行政罰・刑事罰の対象となることは確実です。
加害者が業務中であれば、勤務先にも賠償責任が発生します。
おそらく任意保険・共済には加入していると思われますが、真摯な対応を願います。

被害届が出されていない状態における弁護人活動

被害届が出されていない状態で、被疑者から弁護人として対応して欲しいと依頼された場合、常に頭によぎることがあります。
それは、被疑者が弁護士に頼んだこと等が、被害者の怒りを買い、被害届を出すような事態にならないかということです。
なお、既に被害届が出ていたり、弁護士に頼むよう被害者側から言われたりしている場合は、このような心配をすることはありません。

刑事弁護の委任を受ける場合は、それなりの費用をいただきますので、成果を出すどころか、マイナスをもたらしてしまっては、頼んだ意味がないと言われかねません。
初犯で軽微な犯罪事実であれば、被害届を出されても不起訴になるだろうという見通しが立ちますが、前科があったり、重大な犯罪事実であれば、最低でも罰金刑という見通しになります。
罰金刑は前科にあたるため、被疑者が労働者であれば、雇用契約や就業規則に基づく懲戒処分があり得ます。

特に、相手方から提示された賠償金の減額交渉を行うような場合は、より被害者の怒りを買いやすいので、被疑者に前記リスクを説明して検討するようにしています。

これといった明確な正解はありませんが、事件ごとの特徴を把握し、十分な説明を行った上で、対処するよう心掛けたいと思います。

被疑者の黙秘権の法的根拠と取調べの実態

令和4年3月10日、津地裁にて国賠訴訟の判決がありました。

事件の概要は、窃盗の被疑者に対して、取調べにあたった鳥羽警察署の警察官が「泥棒に黙秘権があるか」と、黙秘権を否定する言動をとったというものです。

本判決では、黙秘権を否定したこと等についての違法性が認定され、三重県に70万円の支払いを命じました。

被疑者の黙秘権は、刑事訴訟法198条2項にて、取調べの際は、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないと規定されています。
ここからわかるように、供述を強要されない権利です。

黙秘権を否定し、供述を義務付けた場合、それによって得られた供述は証拠能力を否定されます。
刑事裁判において、公訴事実を裏付ける証拠として、当該供述調書は使えなくなるということです。
加えて、警察官の取調べは、典型的な公権力の行使に当たるため、本件のように国賠訴訟の対象にもなります。

警察官が、本件のように露骨に黙秘権を否定することはあまりなく、あったとしても「そんなことは言っていない」等と認めないことがほとんどです。
取調べは基本的に録音できませんし、周囲は警察関係者ばかりなので、違法な取調べがあったことを被疑者が立証するのは簡単ではありません。

口頭で黙秘権の否定まではしていないものの、連日長時間同じ内容の取調べを行い、被疑者を疲労させて自白させようとするやり方は、時々見受けられます。
黙秘すると言っても取調べを止めてはくれないし、拒否も困難であることから、被疑者には相当な負担となります。

本件やそれに準じるような違法な取調べが根絶されることを切に願うとともに、弁護活動においても目を光らせていきたいと思います。

三重県志摩市におけるパワハラ事件

報道によれば、市消防局の職員3名に対して、次のような懲戒処分を行ったとのことです。

40代の消防司令長A(停職3カ月)
平成24年―令和3年に、少なくとも10人の部下職員に対して脇腹を殴ったり脚を蹴るといった暴力を振るい、日常的に「あほ」「ばか」「役立たず」といった暴力的な発言を繰り返したり、特定の部下職員に対して容姿や学歴を馬鹿にする発言をした。

40代消防指令補B(停職1カ月)
平成31年4月―令和3年9月にかけて、3人の職員に最高6時間に及ぶ長時間の叱責や説教を繰り返していた。

40代消防司令C(減給1カ月・1/10)
平成22年―28年度にかけて、部下に深夜や未明の時間帯に自身の食事会の送迎をさせたほか、文書の作成など私的な用事を依頼し、断った職員を無視した

パワーハラスメント(パワハラ)とは、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの、①~③すべてを満たすものと考えられています。
厚生労働省HPではより詳細な説明がなされていますので、関心がある方はご確認ください。

A・B・Cの事例が、前記①~③の要件を満たすものであることは明白です。
特に、A・Bについては、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(208条)、侮辱罪(刑法231条)といった刑法犯に該当するとも考えられます。
長期間繰り返されていることも併せて考慮すると、処分内容が軽すぎるのではないかという批判もありうるところでしょう。

長期間発覚しなかった原因としては、消防組織において、上司が部下にパワハラ行為をしても問題ない・仕方ないという空気・雰囲気が出来上がっていて、被害に遭った部下もそれに毒されていたのではないかと思料します。

このような理不尽な被害に対し、じっと我慢する必要はありません。
社内に相談窓口があれば、速やかに通報し、改善を図るべきでしょう。

相談窓口がない、通報したが何も変わらないという場合は、弁護士等社外の専門家に相談してみることをお勧めします。
加害者がしらばっくれることも想定し、可能であれば、写真・録音等の機械的証拠をとっておくべきでしょう。

三重弁護士会の新会館完成

津市役所の近くに新会館が完成しました。
ローカルニュースにも取り上げてもらっていて、「斬新なデザイン」との評価をいただきました。

実際、このデザインにするまでには、数社のコンペティションがあったほか、外観についても複数(おそらく10以上)の候補がありました。
現在のものより奇抜なデザインもあったと思います。
芸術センスに乏しい私としては、よくこんなに考えられるなあと感心するばかりでした。

最終的には会員弁護士の多数決によって、今回のデザインに決まりましたが、現在のデザインが圧倒的多数の支持を得たというわけではなく、票は結構ばらけていたほか、各デザインについての推しのコメントも複数あったように思います。
文章を作成するのは上手な方ばかりなので、読んでてなるほどと思う反面、そこまで入れ込む必要はあるのだろうかとも思いました。
ちょっと冷めすぎていましたかね、こういうのは楽しんだ者勝ちな気がします。

弁護士会館の建て替えは数十年に一度の一大イベント(※ 身内に限る)ですが、用地買収から立替の是非に関する議論も含めて、三重弁護士内で紆余曲折がありました。
今となっては、貴重な経験をさせてもらったと思います

また、ハコが充実していても、中身が伴っていなければ本末転倒ですので、よりよい法的サービスを提供できるよう、会員弁護士の一人として精進したいと思います。

投資による借金と債務整理

三重県内においても、「必ず儲かります!」「年利50%を保障します!」のような謳い文句で投資を煽る広告を見かけることがありますが、基本的に信用することはできません。
というより、そんな美味しい話が本当にあれば、他人に教えることはしないはずです。

ただ、信じてしまう方も一定数おり、その方々は言われるままに初期費用を支払った後、約束された利益が支払われず、担当者とも連絡がつかなくなるという事態に陥ることがほとんどです。

このような甘い話には飛びつかない、これが一番です。

一発逆転を狙って借金をして投資話に飛びつき、借りたお金を使い果たしてしまう方もいます。
借金は返済するのが基本ですが、支払い能力を上回る借金が積みあがってしまった場合には、債務整理にすがることになります。
任意整理も個人再生も難しければ、破産手続きを利用するしかありませんが、不相応に多額な借り入れを行い、その借入金の大半を投資に使い切ってしまった場合は、免責不許可事由の1つ「浪費(破産法252条1項4号)」に該当する可能性があります。
一応、裁量免責(破産法252条2項)となる可能性は残されているものの、手続きに時間がかかったり、破産管財人から厳しいお言葉をいただくことが想定されます。
借金してまで投資をすることは控えるべきでしょう。

ギャンブルによる借金と破産免責

破産の相談に来られる方の中には、時折、競馬やパチンコ等のギャンブルにハマったことがきっかけで借金が膨れ上がり、返済できなくなってしまったというケースがあります。

破産法252条1項1~11号には、破産者について、免責を許可しない事情があげられています(免責不許可事由といいます)。
その中の4号は「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」と規定されており、ギャンブルによる資産減少や借金がこれに当たることは明らかです。

もっとも、破産法252条1項は、免責不許可事由がある場合でも、裁判所は破産に至る経緯やその他一切の事情を考慮して、相当と認めるときは免責を許可することができるとされています。

そのため、ギャンブルにのめり込んで破産手続きを選択せざるを得なくなった場合も、破産免責によって借金がなくなる可能性は残されています。

もっとも、このような免責不許可事由があるような場合は、資産の有無に関係なく、基本的に破産管財人が選任されますので、同時廃止事件に比べて、手続き費用(予納金)がかかります。
また、破産管財人による調査が行われますので、破産者はこれに誠実に対応する必要があります。
加えて、ギャンブルの内容や程度が非常に悪質・深刻であった場合は、破産者が調査に誠実に対応したとしても、破産管財人から免責許可不相当との意見が出され、それに影響されて裁判所も不許可とすることがあります。
詳細については、個別具体的な判断となりますので、弁護士にご相談ください。

撮影中の死傷

アメリカで、映画撮影中、銃の誤射によって死傷者が出るという痛ましい事故が報道されました。
それによれば、俳優が演技の練習で小道具の銃を操作していたところ、なぜか実弾が入っていたとのことです。

今回の事件を見聞きして、学生時代の刑法の授業で、教授が次のような例題を出したのを思い出しました。
「① AはBを殺すつもりで銃の引き金を引いたが、その銃はおもちゃの銃のため、Bを殺すことはできなかった。Aは罪に問われるか。」
「② AはBに冗談のつもりで『おもちゃの銃』の引き金を引いたが、実は『本物の銃』で、これによってBは死んでしまった。Aは罪に問われるか。」

本件は前記②に類似する事例と思われます。
AにはBを殺すつもりも傷つけるつもりもありませんので、故意犯である殺人罪、傷害致死罪のいずれも成立しません。
もっとも、本物の銃と気づくことができたにもかかわらず、Aの不注意で気づけなかった場合は、過失致死罪が成立する可能性があります。

ちなみに①はいわゆる不能犯であり、未遂犯も成立せず、不可罰とされます。

ひき逃げ事件における刑事責任

ここでいう「ひき逃げ」とは、自動車を運転して、不注意で第三者にケガを負わせながら、警察や消防への連絡をせず、当該第三者を置き去りにして事故現場から立ち去ることを意味します。

自動車運転者が不注意で第三者にケガをさせることは、過失運転致傷罪に該当します。
法定刑は7年以下の懲役・禁固または罰金です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)。
軽傷の場合は、情状により、その刑を免除することができるとされていますが、ひき逃げは情状がすこぶる悪いので、早期示談が成立したような場合を除き、何らかの刑事処分が科される可能性が高いです。

また、自動車運転者には受傷者に対する救護義務が課されているところ、ひき逃げは救護義務違反に該当します。
怪我をさせた当人の救護義務違反については、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処すと規定されています(道路交通法117条2項)。
前述の過失運転致傷罪より重い法定刑です。

前記2罪の大きな相違は、過失運転致傷罪が過失犯であるのに対し、救護義務違反が故意犯であるという点です。
つまり、第三者が事故に遭ったこと、人にぶつけたことを認識していなければ、救護義務違反の罪には問われません。
自動車運転者がぶつけたとはわからなかった旨を述べて被疑事実を否認した場合、警察・検察は、事故態様・損傷状況・事故後の挙動などを捜査し、自白なしで救護義務違反の故意を立証できるかを検討することになります。
他の証拠で立証できると判断した場合は救護義務違反で、立証困難と判断した場合は過失運転致傷罪に落として起訴するものと考えられます。

特殊詐欺の現状と今後の対策

本ブログで再三取り上げている特殊詐欺に関する内容です。

従来、特殊詐欺のツールとしては主に携帯電話が使用されていましたが、いわゆる携帯電話不正利用防止法の施行により、やり方に変化が見られます。
特に問題となっているのは、電話転送の悪用です。
具体的には、携帯電話からの発信であるにもかかわらず、電話転送によって受信者(被害者)の端末には固定電話番号が表示されるような手立てが用いられています。

一般的には、未知の番号であれば、携帯電話より固定電話からの発信の方が信用されやすいといえます。
また、電話転送がされていることは受信者にはわかりませんし、発信元の番号も不明です。
つまり、犯人らは、電話転送を利用して、特殊詐欺の成功率をあげると同時に、犯人に対する追跡を困難にしているのです。

固定の番号であっても、それだけで信用することのないようご注意ください。
おかしな電話であれば、一先ず電話を切り、信頼できる方や警察署に相談しましょう。

なお、日弁連では、このような電話転送の悪用を防止するための法整備を求めているところです。

地方議員に対する辞職勧告

東京都議会で、無免許人身事故を起こした議員に対して辞職勧告が行われたことが大きく報道されていましたが、三重県内でも議員に対する辞職勧告が行われました。

9/6に鳥羽市議会において、固定資産税の未納や本会議の無断欠席など市議会政治倫理条例違反に当たる行為があったとされた議員に対する辞職勧告決議案が提出され、全会一致で可決されました。

「勧告」なので法的効力はありませんが、政治生命を絶たれたに等しいと言えるでしょう。

ところで、強制的に議員を辞めさせる方法がないわけでなく、地方自治法135条1項4号には、議決により課すことができる懲罰として「除名」を、同条3項は除名の議決要件として「議員の2/3以上の出席+3/4以上の賛成」を規定しています。

面子を重んじる方であれば、「勧告」を受けて、あるいはその前段階で自らの進退を判断されるでしょうが、前記のお二人はどうされるのでしょうかね。

ちなみに、除名された議員が、再度立候補の上で当選した場合は、あらためて議員資格を取得できます(地方自治法136条)。
議会の処分は不当である・民意を問うという反撃の仕方は、一応可能ということです。

とこわか国体の中止と緊急事態宣言

三重県で開催予定であった「とこわか国体」が昨日、正式に中止となりました。
駅・役所等いたるところにポスターやのぼり、カウントダウン時計等が設置されていて、それらを日々見ていたため、何とも世知がない気持ちになります。
一刻も早く、コロナ禍が就職して欲しいと願うばかりです。

それと三重県における緊急事態宣言も発令されました。
通勤経路にある居酒屋のシャッターには、要請に基づき、9/12まで休業するとの貼り紙が散見されました。
こちらも辛いところです。
しかし、最近のクラスターは、習い事、部活動、学校・保育に端を発する事例が多いように思われますが、こちらについては休業要請はしないのでしょうかね、
いつも飲食店がやり玉にあげられることに、いささか疑問を感じております。

特殊詐欺に注意を!

このブログでも度々取り上げていますが、8月に入ってから、三重県内において、特殊詐欺による被害が相次いているようです。

電話を架けてきた犯人が名乗った属性は、「市役所職員」と「警察官」で、いずれも一般に信用されやすいものです。
以前には「銀行職員」というものありました。

偽「市役所職員」からの電話は、すべて還付金・返戻金があるから、口座を教えて欲しいということから始まり、金融機関のATMに行くよう指示され、そこから指定口座に(なぜか)振込をするように仕向けられるというものです。
どのような言辞を弄したかまではわかりませんが、手続上どうしても必要だから等と騙し、被害者はそうなのかと従ってしまったものと思われます。

偽「警察官」からの電話は、詐欺犯罪に巻き込まれている・被害に遭っている等という話から始まり、保護するためにキャッシュカードを預かる必要があると伝えてキャッシュカードを騙し取り、そのままの流れで暗証番号まで聞き出してしまうというものです。

いずれも、一呼吸おいて冷静になって考えてみればおかしいと思う内容ですが、そう思わせない・思う暇を与えないというのが、犯人側の上手さなのでしょう。

三重県警も被害が相次ぐことに危惧し、還付金詐欺・特殊詐欺に注意するよう、情報発信をしています。

くれぐれもお気を付けください。


三重県津市の架空工事発注問題

入札回避のために架空の工事書類を作成したとして、三重県津市の職員の97人が処分(減給、戒告、訓告)を受けたと報道されました。
一度に対象となる人数としては非常に多く、かなり衝撃的です。
ここまで対象が拡大した背景としては、前述のようにして入札を回避することが常態化し、直接関与していない職員も見て見ぬふりをしていたということがあげられています。
なぜ入札を回避するのかというと、入札となると事務処理の手間がかかるので、それを嫌ったからだということです。
つまり、「面倒なことは御免だ」ということになるでしょうか。

公務員が公務に関して第三者を誤信させる目的で虚偽の文書を作成する行為は、虚偽公文書作成罪(刑法156条)となり得ます。
有印偽造は1年以上10年以下の懲役とされ、窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金、刑法235条)よりも重い犯罪です。
この点に鑑みると、前記処分の内容は比較的軽いように見受けられますが、その具体的理由は判然としません。

なお、ここまで多くの人が回避したがるほど入札の事務処理が面倒であるのなら、可能な限り余計な事務を省き、抵抗感を少なくするということも検討してはと思います。

経歴詐称と懲戒解雇・免職

経歴詐称とは、過去の経歴(学歴、職歴、業績など)を秘匿したり、虚偽の経歴を表示したりする行為です。
履歴書や採用面接で経歴を詐称したものの、そのまま採用され、後日においてバレた場合、雇用主は当該労働者を懲戒解雇(公務員の場合は懲戒免職)してよいでしょうか?

経歴詐称が懲戒事由となることは疑いないところですが、重要な経歴でなければ、懲戒解雇までは認められないと解されています。
「重要」か否かの判断基準としては、大阪高判昭和37年5月14日で、次の2要件が示されました。
1)その経歴詐称が事前に発覚すれば、雇用主は当該労働者と雇用契約を締結しなかったか、少なくとも同一条件では契約を締結しなかったといえること
2)客観的に見ても、前記1が相当と言えること

最近話題となっているのが、大卒なのに高卒と偽る逆学歴詐称です。
背景には、受験資格が高卒までに限られる公務員試験があるところ、大卒者対象に比べて合格しやすいと考え、あえてこちらを受験したということ等があげられます。

通常、経歴詐称とは自分を実態より盛って見せようとするものですが、逆詐称は低く見せようとする点で違いがあります。

報道によれば、神戸市は、名乗り出た場合は諭旨免職、名乗り出ずに発覚した場合は懲戒免職にしているとのことです。
これに対し、大阪市では停職処分にとどめているとのことです。

大卒者であればそもそも受験できなかったわけですから、前記1要件を満たしていることは明らかです。
ただ、前記2要件を満たしていると言えるかは、評価が分かれるところだと思われます。