特殊詐欺の現状と今後の対策

本ブログで再三取り上げている特殊詐欺に関する内容です。

従来、特殊詐欺のツールとしては主に携帯電話が使用されていましたが、いわゆる携帯電話不正利用防止法の施行により、やり方に変化が見られます。
特に問題となっているのは、電話転送の悪用です。
具体的には、携帯電話からの発信であるにもかかわらず、電話転送によって受信者(被害者)の端末には固定電話番号が表示されるような手立てが用いられています。

一般的には、未知の番号であれば、携帯電話より固定電話からの発信の方が信用されやすいといえます。
また、電話転送がされていることは受信者にはわかりませんし、発信元の番号も不明です。
つまり、犯人らは、電話転送を利用して、特殊詐欺の成功率をあげると同時に、犯人に対する追跡を困難にしているのです。

固定の番号であっても、それだけで信用することのないようご注意ください。
おかしな電話であれば、一先ず電話を切り、信頼できる方や警察署に相談しましょう。

なお、日弁連では、このような電話転送の悪用を防止するための法整備を求めているところです。

地方議員に対する辞職勧告

東京都議会で、無免許人身事故を起こした議員に対して辞職勧告が行われたことが大きく報道されていましたが、三重県内でも議員に対する辞職勧告が行われました。

9/6に鳥羽市議会において、固定資産税の未納や本会議の無断欠席など市議会政治倫理条例違反に当たる行為があったとされた議員に対する辞職勧告決議案が提出され、全会一致で可決されました。

「勧告」なので法的効力はありませんが、政治生命を絶たれたに等しいと言えるでしょう。

ところで、強制的に議員を辞めさせる方法がないわけでなく、地方自治法135条1項4号には、議決により課すことができる懲罰として「除名」を、同条3項は除名の議決要件として「議員の2/3以上の出席+3/4以上の賛成」を規定しています。

面子を重んじる方であれば、「勧告」を受けて、あるいはその前段階で自らの進退を判断されるでしょうが、前記のお二人はどうされるのでしょうかね。

ちなみに、除名された議員が、再度立候補の上で当選した場合は、あらためて議員資格を取得できます(地方自治法136条)。
議会の処分は不当である・民意を問うという反撃の仕方は、一応可能ということです。

とこわか国体の中止と緊急事態宣言

三重県で開催予定であった「とこわか国体」が昨日、正式に中止となりました。
駅・役所等いたるところにポスターやのぼり、カウントダウン時計等が設置されていて、それらを日々見ていたため、何とも世知がない気持ちになります。
一刻も早く、コロナ禍が就職して欲しいと願うばかりです。

それと三重県における緊急事態宣言も発令されました。
通勤経路にある居酒屋のシャッターには、要請に基づき、9/12まで休業するとの貼り紙が散見されました。
こちらも辛いところです。
しかし、最近のクラスターは、習い事、部活動、学校・保育に端を発する事例が多いように思われますが、こちらについては休業要請はしないのでしょうかね、
いつも飲食店がやり玉にあげられることに、いささか疑問を感じております。

特殊詐欺に注意を!

このブログでも度々取り上げていますが、8月に入ってから、三重県内において、特殊詐欺による被害が相次いているようです。

電話を架けてきた犯人が名乗った属性は、「市役所職員」と「警察官」で、いずれも一般に信用されやすいものです。
以前には「銀行職員」というものありました。

偽「市役所職員」からの電話は、すべて還付金・返戻金があるから、口座を教えて欲しいということから始まり、金融機関のATMに行くよう指示され、そこから指定口座に(なぜか)振込をするように仕向けられるというものです。
どのような言辞を弄したかまではわかりませんが、手続上どうしても必要だから等と騙し、被害者はそうなのかと従ってしまったものと思われます。

偽「警察官」からの電話は、詐欺犯罪に巻き込まれている・被害に遭っている等という話から始まり、保護するためにキャッシュカードを預かる必要があると伝えてキャッシュカードを騙し取り、そのままの流れで暗証番号まで聞き出してしまうというものです。

いずれも、一呼吸おいて冷静になって考えてみればおかしいと思う内容ですが、そう思わせない・思う暇を与えないというのが、犯人側の上手さなのでしょう。

三重県警も被害が相次ぐことに危惧し、還付金詐欺・特殊詐欺に注意するよう、情報発信をしています。

くれぐれもお気を付けください。


三重県津市の架空工事発注問題

入札回避のために架空の工事書類を作成したとして、三重県津市の職員の97人が処分(減給、戒告、訓告)を受けたと報道されました。
一度に対象となる人数としては非常に多く、かなり衝撃的です。
ここまで対象が拡大した背景としては、前述のようにして入札を回避することが常態化し、直接関与していない職員も見て見ぬふりをしていたということがあげられています。
なぜ入札を回避するのかというと、入札となると事務処理の手間がかかるので、それを嫌ったからだということです。
つまり、「面倒なことは御免だ」ということになるでしょうか。

公務員が公務に関して第三者を誤信させる目的で虚偽の文書を作成する行為は、虚偽公文書作成罪(刑法156条)となり得ます。
有印偽造は1年以上10年以下の懲役とされ、窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金、刑法235条)よりも重い犯罪です。
この点に鑑みると、前記処分の内容は比較的軽いように見受けられますが、その具体的理由は判然としません。

なお、ここまで多くの人が回避したがるほど入札の事務処理が面倒であるのなら、可能な限り余計な事務を省き、抵抗感を少なくするということも検討してはと思います。

経歴詐称と懲戒解雇・免職

経歴詐称とは、過去の経歴(学歴、職歴、業績など)を秘匿したり、虚偽の経歴を表示したりする行為です。
履歴書や採用面接で経歴を詐称したものの、そのまま採用され、後日においてバレた場合、雇用主は当該労働者を懲戒解雇(公務員の場合は懲戒免職)してよいでしょうか?

経歴詐称が懲戒事由となることは疑いないところですが、重要な経歴でなければ、懲戒解雇までは認められないと解されています。
「重要」か否かの判断基準としては、大阪高判昭和37年5月14日で、次の2要件が示されました。
1)その経歴詐称が事前に発覚すれば、雇用主は当該労働者と雇用契約を締結しなかったか、少なくとも同一条件では契約を締結しなかったといえること
2)客観的に見ても、前記1が相当と言えること

最近話題となっているのが、大卒なのに高卒と偽る逆学歴詐称です。
背景には、受験資格が高卒までに限られる公務員試験があるところ、大卒者対象に比べて合格しやすいと考え、あえてこちらを受験したということ等があげられます。

通常、経歴詐称とは自分を実態より盛って見せようとするものですが、逆詐称は低く見せようとする点で違いがあります。

報道によれば、神戸市は、名乗り出た場合は諭旨免職、名乗り出ずに発覚した場合は懲戒免職にしているとのことです。
これに対し、大阪市では停職処分にとどめているとのことです。

大卒者であればそもそも受験できなかったわけですから、前記1要件を満たしていることは明らかです。
ただ、前記2要件を満たしていると言えるかは、評価が分かれるところだと思われます。

【判例検討】預金口座開設し、通帳の交付を受ける行為の詐欺該当性

大分前の判例ですが、最判平成19年7月17日を取り上げたいと思います。

事件の概要は、被告人が、第三者に譲渡することを秘して、自己名義の普通預金口座の開設及び通帳・キャッシュカードの交付を申し込み、これを受けた銀行行員が通帳・キャッシュカードを交付したというものです。
本件では、当該行為が詐欺罪(刑法246Ⅰ)に当たるかが、争われました。

犯罪やマネーロンダリングに使用されることを防止する観点から、金融機関には本人確認が義務付けられています。
客側も申込に際して虚偽を述べることは禁じられているほか、正当な理由なく、通帳等を譲渡することも禁じられてます。
これらの違反には刑罰が用意されており、詳細は「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(以前)→犯罪による収益の移転防止に関する法律(現在)」にて確認できます。

本件における詐欺行為(欺罔行為)の対象は銀行ですが、通帳等を交付したことによって、銀行側に財産的損害が生じているわけではなく、可罰的違法性はないという考え方もあり得るところです。
もっとも、判例では、第三者に譲渡することがわかっていたら、銀行側は開設・交付に応じることはなかったのだから、本件の申し込みが詐欺罪を構成することは明らかであるとしました。
なお、ここでは通帳等が財物に当たることが当然の前提となっています。


職務専念義務

三重県では、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けるために必要な時間は、職員の職務専念義務を解除すると発表しました。
移動も含め接種に必要な時間は、給与を支払うとのことです。

職務専念義務とは、文字通り「職務に専念すべき義務」のことで、労働契約上の誠実労働義務の内容と解されています。

典型的な職務専念義務違反行為は、「サボる」ことです。
勝手に職場を抜け出してぶらついたり、会社の許可なく就業時間中に株取引にいそしんだりすること等があげられます。

もっとも、就業時間中ずっと仕事に没頭することまで要求されているとは解し難く、お手洗いに行ったり、(気分転換もかねて)多少の飲食をしたりすることも、通常は許容範囲内でしょう。

ただ、職種や勤務先、地位等によって、労働の内容・遂行方法は異なりますので、職務専念義務の内容は個別具体的に判断する必要があります。
労働契約や就業規則も確認する必要があるでしょう。

労働者が上記のような義務に違反した場合は、軽微な場合は厳重注意の対象、悪質な場合は懲戒処分の対象となり得ます。
義務違反によって勤務先に損害を与えた時は、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことにもなるでしょう。

【裁判例検討】無期転換逃れ

現行の労働契約法18条1項によれば、契約期間1年の有期契約社員が、契約を5回更新し、通算の契約期間が5年を超えた場合、自らの意思で無期契約社員に転換することが可能になります。
雇用主側は、無期契約への転換を拒否することはできません。

となると、無期契約への転換を嫌がる一部の雇い主は、5年を超える前に契約を打ち切ることが考えられます。
そのような雇止めについては、現行の労働契約法19条が規制しており、反復更新の態様等から無期労働契約と社会通念上同一視される場合か(同条1号)、更新に合理的期待がある場合(同条2号)においては、雇用主の更新拒絶に客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要としています。
言い換えれば、この要件がみたされなければ、更新拒絶はできないということです。

「更新の合理的期待」とは何とも漠然としていますが、判例・通説によれば、最初の有期契約締結時から雇止めされた契約満了時までの間、当該雇用の臨時性・常用性、更新回数、雇用通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者側の言動の有無等を総合考慮して判断すべきとされています。

今回取り上げる横浜地判川崎支部R3.3.30判決は、1年契約を4回更新した有期契約社員が、5回目の更新に応じなかった雇用主を相手取って、労働契約法19条に基づく契約更新がなされたことを前提とした労働契約上の地位確認等を求めた事件です。

判決では、雇用契約書に契約期間の更新限度が5年と明示されていたこと(いわゆる不更新条項)、契約更新の都度において更新限度を超える更新はしない旨が説明され、かつ、その説明内容を確認した旨の書面が作成されていたこと、原告の業務内容は第三者をもって代えがたいものではないこと、事業所の経営状況は順調ではなかったこと、無期契約に転換した他の労働者は原告と契約条件の異なる者であったこと等の事実を認定した上で、更新に対する合理的な期待を生じさせる事情は認められず、雇用主の更新拒絶は有効としました。

個人的には、雇用主の無期転換対策が奏功したという印象を受けます。

津祭りの中止

三重県津市で実施されている津祭りが、去年に続き、本年も中止になったとのことです。
依然としてコロナの流行が止まらない現状では致しかたないのかもしれません。
これ以外でも、影響を受けている季節イベントは枚挙に暇がないと思われます。

津祭りでは、津駅前でグループごとのダンスパフォーマンスが行われるのが目玉イベントの一つで、職場から何度かのぞかせていただいたことを思い出します。

このようなイベントは、毎年行われることで、ノウハウの蓄積・継承がなされていきます。
2年連続中止となると、コロナ禍が改善した後の実施・運営に少なからぬ支障が生じるのではないかと心配です。
一刻も早く、通常の状態に戻れるよう祈念いたします。

犯罪被害給付制度と不支給事由

犯罪被害給付制度とは、故意犯罪によって、不慮の死を遂げた被害者遺族や、重傷・障害を負った犯罪被害者に、国が犯罪被害給付金を支給するというものです。
いわゆる「通り魔」的犯罪による被害者に対し、精神的・経済的安定を図る目的で補償がなされます。
根拠法規は、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(犯給法と略す)」になります。

給付金は、遺族給付金、重傷病給付金、障害給付金の3つがあり、いずれも一時金として支払われます。

申請は、申請者の住所を管轄する公安委員会に対して行われますが、警察本部や警察署での受付が可能です。
死亡等を知った日から2年、死亡等の事件が起きた日から7年以内に行う必要があります。

さて、犯給法6条は、給付金の全部または一部を支給しない場合として、次の3つを規定しています。
(1)犯罪者・被害者間に親族関係(内縁含む)がある場合
(2)被害者側に挑発行為等の責めに帰すべき事由がある場合
(3)(1)(2)以外で社会通念上支給が適切でない場合

犯給法施行規則2~10条は、不支給事由をさらに詳細に規定しています。
例えば、被害者側が当該犯罪を教唆した場合は全部不支給(4条1号)、被害者側に暴行・侮辱等の当該犯罪を誘発する行為があれば3分の2を不支給(6条1号)、当該犯罪被害を受ける原因となつた不注意又は不適切な行為があれば3分の1を不支給(6条2号)になります。

弁護士として被害者側の法律相談を受ける際は必要な知識と思われ、研鑽に努めます。

三重刑務所における防疫体制

前回から大分時間を空けて三重刑務所での接見に行ってきました。

ご存じのとおり、コロナ禍は未だ収束していませんが、三重刑務所では次のような防疫体制が取られていました。

1)来訪者にチェックリストの記入を求める。
チェック項目ははい、いいえ形式で回答するようになっており、体調不良はないか、熱はないか、周囲にコロナウイルスにり患した人はいないか、最近の海外渡航歴はないか等の質問事項があげられていました。
私はすべて「いいえ」でしたが、仮に1つでも「はい」があれば面会できなくなるのでしょうか(詳細は不明です)。

2)検温する
受付の警備員の方が非接触サーモメータ―を持っており、それによって体温を測っていました。
私は早歩きで来て若干汗ばんでいたので、ちょっと不安でしたが、平熱でした。
夏場や走ってきた場合等は、少し涼んでから臨んだ方がいいかもしれません。

3)マスクをする
私は既にマスクを着用していたので何も言われませんでしたが、なければ100%言われたでしょう。
ちなみに職員も勾留者も皆着用していました。

4)待合室の密をなくす
ドアは開け放たれていたほか、椅子はそれぞれ離れた場所に置かれていました(以前は1か所に集められていたのですが)。
なお、プライバシー保護のため、接見室のドアは閉めていいか確認したところ、それはOKとのことでした。

アウティング等禁止条例

三重県でアウティング等の強制を禁止する条例が3月23日に成立し、4月1日公布予定となりました。
正式名称は「性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例」といいます。

アウティングとは聞きなれない言葉だったので調べてみると、「Outing」のカタカナ表記で、性的指向や性自認、いわゆるゲイ・レズビアン・トランスジェンダー等が秘密になっているにも関わず、本人の了解なく、公にする・第三者に暴露することを意味するようです。
アウティングによって、いじめを受けたり、元の学校・職場にいられなくなったり、最悪自殺したりする事例が報告されており、深刻な問題となっています。

本条例第1条では、性の多様性についての理解がなされることによって、すべての人の人権が尊重され、多様な生き方が認め合える社会となること等を目的として規定しています。

本条例の罰則は設けられていません。
県民への啓発や各関係機関の施策の指針としての意味買いが強いと考えられます。
民事事件における慰謝料請求において参考事情として扱われる可能性はありますが、本条例の目的に照らすと、大幅な増額要素となる可能性は低いように思われます。

緊急警戒宣言解除

本日3月7日、三重県独自の緊急警戒宣言が解除となります。

とはいえ、これで移動に何も気に架ける必要がなくなったかというと、そうでもないようです。

3月8日~4月30日を対象として示された三重県指針NO.9には、次のようなお願い事項が記されています。
○ 大人数や長時間での飲食は親族間でも参加は控えること
○ 多人数が集まる飲食を伴う催しの開催や参加は控えること
○ 同居家族以外と会う場合は、マスクを着用すること
○ 体調に異変を感じた時は通勤・通学を避けて、医療機関に早期に相談すること
○ 緊急事態宣言が出されている地域、営業時間短縮が等の要請がなされているエリアには、生活維持に必要な場合を除いて移動は避けること

これら以外にもお願い事項は書かれていますが、ここでは割愛しますので、詳細は三重県ホームページへ。

本来3月や4月は歓送迎会の盛んな時期であり、私自身も送ったり送られたりした記憶があります。
前記指針を見る限り、歓送迎会は自粛の継続を余儀なくされそうです
歓送迎会のないまま、入学・卒業や異動していくというのは、何とも寂しいことだなと思われますが・・・。

3月6日の新規感染報告は10人と、久々に2桁に達するなど、まだまだ油断できない状況は続いています。
早期にこの状況が収束することを祈るばかりです。

労災の障害認定について

言うまでもありませんが、労災は、労働者災害補償保険の略称です。
最近、労災の障害認定に関するご相談を多くいただいたこともあって、以下に概要を記しておきたいと思います。

1 法律の規定
労働基準法77条は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。」と規定しています。
また、労災法22条の3は、「障害給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかり、なおったとき身体に障害が存する場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう」と規定しています。
この「治った場合」・「なおったとき」とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状固定と呼称します)に達したときとされます。
そして、その際に身体に存する障害が、労災における障害補償の対象となります。

2 業務起因性
前提として、負傷・疾病と業務の間に相当因果関係が必要であり、これを業務起因性の要件と言います。
例えば、休憩時間中や業務と関係ないことをしていた際に負傷したとなると、業務によるものではないとして業務起因性が否定される可能性が大です。
また、静謐な環境でデスクワークをしている者が、業務中に難聴になったような場合、その難聴が業務によって生じたものかどうかが難しい判断となり、業務起因性が否定されることがあり得るでしょう。

3 症状の将来残存性
加えて、症状固定時に残った症状が将来的に回復困難なものと言えるかどうかも評価されます。
身体の欠損や骨の変形等のように客観性の高いものは認定されやすいですが、そうでないものについては、判断が分かれることが多々あります。

4 精神障害について
○○ハラスメントでうつ病になったような場合も、労災認定の対象となります。
メルクマールとされる厚生労働省の認定基準では、①認定対象となる精神障害(※ うつ病も含まれます)を発病していること、②当該精神障害の発病前約6カ月の間に、業務による強い心理的負荷があったこと、③業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したとは認められないことの3つを満たす必要があるとされます。
被災者側としては、特に②・③の事実関係を整理・把握し、可能な限り書面化しておくことが重要と思われます。

労働基準法

労働者災害補償保険法

マスク雑感

三重県内でも、外出時にはマスクが当たり前になってずいぶん経ちました。
今では、マスクをしていない方の方が逆に目立つ状況です。

ところで、健康上の問題か、信条によるのか、マスクを付けない方もいらっしゃいます。
そして、毎日同じ時間帯、場所を歩いていると、前述のように逆に目立つので、マスクを付けない方の顔だけ覚えてしまいました。
事情はどうであれば、このような顔の覚えられ方は、あまり望ましくないなと思います。

諸外国では、公共の場においてマスク着用を義務化し、違反者には刑罰をもってあたるところもあるようですが、本邦ではそこまでの規制はなされていません。
ただ、施設管理権に基づき、当該施設管理者・従業員が非着用者の入場を拒んだり、退出を求めたりすることは可能と思われます。
これに逆切れして、暴行を振るうと暴行罪・傷害罪、脅すと脅迫罪に該当するのは、言うまでもありません。

何にせよ、現在の流行が収束し、マスクなしで外出しても問題ない状況が来るのを願うばかりです。

人身保護法違反の罪

1月22日、三重県の津地裁において、人身保護法違反等の罪に関する刑事裁判が行われました。
かなり珍しい裁判です。

報道によれば、事実の経過は次のようになっています。
1)元妻が長女(当時2歳)を連れて別居し、離婚調停申立て
2)元夫側から面会交流調停申立て
3)元夫が長女と面会後、長女を元妻に返さず
4)元妻が人身保護請求訴訟を提起
5)H31.329裁判所より長女を4.18に出頭させるよう命令が出されたが、元夫はこれを無視
6)R2.2.25裁判所によって長女が保護された(※ 勾引された?最終的に命令に応じた?)

人身保護法2条は「法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる(1項)。何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる(2項)。」
と規定しており、これに基づく請求訴訟を元妻側が提起したことになります。

また、同法12条2項は裁判所の権限として、「拘束者(※ 元夫)に対しては、被拘束者(※ 長女)を前項指定の日時、場所に出頭させることを命ずると共に、前項の審問期日までに拘束の日時、場所及びその事由について、答弁書を提出することを命ずる。」
と規定しています。
この出頭命令に違反した場合は、同法18条によって過料(遅延1日につき500円以下)に料に処すことができます。

さらに、同法26条は「被拘束者を移動、蔵匿、隠避しその他この法律による救済を妨げる行為をした者若しくは第十二条第二項の答弁書に、ことさら虚偽の記載をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」
と規定しており、元夫はこの26条に抵触した、具体的には、同法に基づく裁判所の救済を妨げる行為をしたとして起訴されたと解されます。

ここでいう救済を妨げる行為とは、裁判所が人身保護命令を発し、その内容を判決で実現する同法の目的を妨げる行為一般とされています。
妨げる行為があったことが要件で、妨げた結果は不要とされます(考慮はされるでしょうが)。

本件では、出頭命令への違反が長期に及んでおり、これが単なる出頭命令違反の域を超えて、救済を妨げる行為と評価しうるに至ったか否かが争点になると考えられます。

人身保護法

裁判例検討(パワーハラスメント)

今回取り上げるのは、宇都宮地裁令和2年10月21日判決(LEX/DB 25567227)です。

本件は、原告であるバス運転者が、上司及び会社に対して提起した損害賠償請求訴訟です。
裁判では、原告の乗客への不適切な言動を契機として、原告に対して行われた指導・指示が、退職強要、人格否定、過少な要求というパワーハラスメントに当たるかどうか等が争点となりました。
以下では、争点ごとに検討していきます。

(1)退職強要
本判決では、次のような審査基準を設定しました。
「退職勧奨は、その態様が、これに応じるか否かに関する労働者の自由な意思決定を促す行為として許される限度を逸脱し、その自由な意思決定を困難とするものである場合は、違法となる。」
その上で、発言者の職務上の地位、発言内容(例:会社には向いていない、二度とバスには乗せない、会社にはいらない、他の会社へ行け、退職願を書け)、発言の態様(複数の上司から原告1人に対して、連続して1時間)、原告の精神的不安定(うつ状態と診断)等が総合考慮され、違法な退職強要と判断されました。

(2)人格否定
本判決では、次のような審査基準を設定しました。
「侮蔑的表現が、職責、上司と労働者との関係、指導の必要性、具体的状況、言辞の内容・態様、頻度等に照らして、社会通念上許容される業務上の指導を超えて、過重な心理的負担を与えたと言える場合には、違法となる。」
その上で、一部の発言(チンピラ、雑魚)が、過剰な心理的負担を与えるものとして、違法と判断されました。

(3)過少な要求
本判決では、次のような審査基準を設定しました。
「会社・上司からの指示が、社会通念上許容される指示・指導を超えて、過重な心理的負担を与えたと言える場合には、違法となる。」
その上で、乗車業務から外し、同種の本の読書と文書(反省文・感想文)の作成を1カ月以上続けたこと、それら作業のない時間は何もせず着座させるのみだったこと等の指示・指導が、過剰な心理的負担を与えるものとして、違法と判断されました。

これら(1)~(3)は違法な不法行為であり、これらによって原告がうつ状態になったとして、慰謝料60万円が認定されました。
一連の諸行為を不法行為と判断したことは評価できますが、行為の期間・悪質性に鑑みると、賠償としてはもう少し高額でもよかったのではないかと個人的に思います。

自賠責基準の変更

交通事故における人的損害をてん補するため、自動車には自賠責保険・共済を付保することが義務とされています。
その自賠責保険・共済の支払いに用いられるのが、いわゆる自賠責基準ですが、2020年4月1日以降発生事故より、基準額が増加したものが複数あります。

休業損害については、基準額が5700円から6100円に変更されました。

傷害慰謝料は、1日につき4200円から4300円に変更されました。

後遺障害慰謝料は、1級~12級のものについて、微増となりました。

葬儀費は、基本60万円から100万円に変更されました。

死亡本人の慰謝料は、350万円から400万円に変更されました。

具体的な数字こそないものの、ライプニッツ係数が変更になり、控除される中間利息が少なくなることから、後遺障害逸失利益も増額になると見込まれます。

被害者側が受けると賠償金が増えるということなので、素直に歓迎すべきではないかと思われます。

交通事故実務に与える影響は少なくないと思われますので、発生事故日が前か後かを意識しつつ、業務に従事したいと思います。

強制わいせつ致傷

三重県松阪市内の開業医が強制わいせつ致傷罪に問われ、懲役3年を求刑されたとの報道がなされました。

起訴状によれば、被告人のわいせつ行為を被害者が避けようとした際に椅子から落ち、左目付近を床に打って負傷したとのことです。

基本犯である強制わいせつ罪(刑法176条)は、暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をすることで成立します。
ここでの暴行は、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度のもので足りるとされます。
キスをすること等は、それ自体を暴行と言えるかは微妙ですが、被害者の隙を突いたような場合等には暴行になると解されています。

前記基本犯の結果的加重犯である強制わいせつ致傷罪(刑法181条1項)では、前記基本犯の既遂・未遂が成立する場合において、前記基本犯と傷害の結果との間に因果関係が必要と解されています。
暴行やわいせつ行為自体によって負傷した場合はもちろん、被害者が被害を免れようとした際に生じた負傷でも、因果関係は肯定されます。
また、結果の発生についての故意は不要と解されています。

なお、強制わいせつ致傷罪の法定刑は、無期または3年以上の懲役であるため、裁判員裁判となっており(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項1号)、この点においても注目されます。