弁護士と各専門家が協力できることの強み
1 弁護士と各専門家との協力の重要性
相続は、他の分野と比較しても、他の専門家の担当分野と密接に関連する部分が多いです。
しかし、弁護士は、他の専門家の担当分野について、詳しい知識をもっているとは限りません。
このため、弁護士の考えだけで事件処理を進めると、他の専門家から見て不利益な事態が生じてしまうおそれがあります。
このような事態を避けるためには、弁護士が各専門家と連携することが重要です。
以下では、専門家同士の協力が不十分だった例を説明し、専門家同士の協力の重要性を説明したいと思います。
2 専門家同士の協力が不十分だった例
この事例では、課税価格を越える相続財産が存在したため、相続税が課税されることとなっていました。
相続人には、被相続人の配偶者も含まれていましたので、相続財産の分割方法についての合意が成立すれば、配偶者が取得した相続財産について、配偶者の税額軽減を用い、配偶者については非課税とすることができたはずでした。
ところが、相続人同士の意見対立が激しかったため、申告期限までに相続財産の分割方法を合意することができませんでした。
そこで、申告期限の段階で、一旦、未分割での申告を行い、配偶者も含めて申告と納付を行うこととなりました。
このような場合、申告期限の段階では、配偶者の税額軽減を用いることができないため、3年以内分割見込書も合わせて提出し、将来、相続財産の分割方法の合意が成立してから、配偶者の税額軽減を用いて更正の請求をし、税金の還付を受ける段取りとなりました。
その後、弁護士が他の相続人との協議を行ったものの、協議がまとまらなかったため、家事調停の手続を経て、相続財産の分割方法の合意が成立することとなりました。
相続登記や預金払戻の手続が完了し、合意が成立して半年が経過した後、配偶者は、税理士に問い合わせ、配偶者の税額軽減を適用して更正の請求を行いたいと伝えました。
ところが、税理士からは、更正の請求を行うことはできないとの回答が返ってきました。
税理士によると、更正の請求の期限は、合意が成立してから4か月以内であるため、すでに更正の請求の期限が経過してしまっており、更正の請求を行うことはできないとのことでした。
こうした事態を避けるには、弁護士と税理士が連携し、あらかじめ更正の請求の期限についての情報を共有するべきだったでしょう。
あるいは、合意成立後間を置かずに、弁護士から税理士に合意が成立したとの連絡を行うことも考えられました。
このような事例からは、弁護士と各専門家が協力することの必要性を確認できるでしょう。
3 当法人の体制
当法人は、グループ企業に各専門家が所属しており、協力して相続問題に対処する体制を作っています。
相続の件でご相談事がありましたら、当法人までご連絡ください。
相続を依頼する場合の弁護士の選び方
弁護士に相続の件を依頼しなければならない場面では、依頼する弁護士をどのように選ぶかは、迷いどころだと思います。
ここでは、相続の問題について、どの弁護士に依頼するかを選ぶ際の判断材料をまとめたいと思います。
1 相続に関する法的問題を網羅的に把握していること
相続は、法的な問題が様々であり、必ずしも定まった見解が示されているわけではない部分も多いです。
単に、相続分を計算し、相続財産総額にかけ算すれば良いという問題ではありません。
たとえば、特定の相続人に対して贈与がなされている場合には、その贈与を特別受益として扱い、その相続人の取得財産額を減額調整すべきかどうかを判別する必要があります。
また、特別受益として扱われる場合は、不動産や非上場株式である場合は、いくらの利益として評価すべきかが問題になります。
そもそも、贈与の事実が争われる可能性がある場合には、どこまで証明できる可能性があるのかを検証する必要があります。
弁護士としては、これらの法的問題については、書面作成や交渉の場面で即時に扱える知識になっていることが望まれます。
専門知識については、時間をかけて調べれば分かるにとどまっているのであれば、いざ書面作成や交渉の場面で、必要な知識を使うことができないという事態が起こりかねないです。
2 他の専門家と連携することができること
相続の問題は、関連する問題が多く、他の専門家の領域にも絡んでくることも多いです。
たとえば、相続財産の総額が一定額を超える場合には、相続税が課税される可能性があり、申告が必要になってきます。
事案によっては、税金を各相続人がどのように分担するかも考慮した上で、相続財産の分割の方法を決めるのが適切であることもあります。
このような場合には、税理士と連携して対応する必要が生じてくるでしょう。
このように、相続の場面では、弁護士が、他の専門家と連携して行動することが、重要になってきます。
他の専門家の関与が必要になる場合には、弁護士から他の専門家に引継ぎを行うべき場合があるでしょうし、事前に、弁護士から他の専門家に意見を確認した上で、相続人間の合意を成立させるべき場合もあるでしょう。
3 相続を依頼する場合の弁護士の選び方
相続の問題については、上記の条件に合った弁護士に依頼されることをお勧めします。
この点は、弁護士を選ぶ際に参考にしていただけましたらと思います。
弁護士は何を参考にして相続での不動産の評価を行っているのでしょうか?
不動産の評価方法の代表例として,固定資産評価額,相続税評価額を挙げることができます。
相続に関する交渉でも,これらをベースに不動産の評価額を算定することは,しばしばあります。
以下では,これらの評価方法について,説明を行いたいと思います。
1 固定資産評価額
固定資産評価額は,市町村が定める,固定資産課税台帳に記載された各不動産の評価額です。
土地の固定資産評価額は,一般的に,時価よりも低い金額になると言われています。
たとえば,目安として,宅地等については,時価の7割程度であると言われることが多いです。
例外的に,道路に面していない土地,傾斜のある土地等については,買手が現れることが期待できないことから,時価がかなり低廉になります。
建物の再建築がほぼ不可能である土地,市街地から離れた場所にある土地等についても,時価が低廉になる傾向があります。
ところが,これらの土地の固定資産評価額について,時価と乖離した金額が設定されていることが,しばしばあります。
建物については,ケースバイケースです。
老朽化した建物については,時価はほぼ0円になりますが,固定資産評価額は一定額以下には減価されない(たとえば,新築価格の2割までしか減価償却がなされないことがあります)ため,固定資産評価額の方が高くなる傾向があります。
他方,リフォームされた建物については,リフォームによる価値の増加が固定資産評価額に反映されていないことがしばしばあり,時価の方が高くなることがあります。
他には,マンションについては,市場価値のあるものの多くは,時価が固定資産評価額をかなり上回ります。
2 相続税評価額
遺産総額が一定額を超えており,相続税申告を行わなければならない場合は,個々の不動産について,相続税評価額が算定されることとなります。
土地の相続税評価額については,概略としては,路線価が定められた地域においては,路線価に地積を乗じたあと,不整形地補正等の修正要素を考慮して算定する方法を用い,路線価が定められていない地域においては,先述の固定資産評価額に,評価倍率を乗じるとの算定方法を用いることとなります。
建物の相続税評価額については,借家権の対象になっていなければ,先述の固定資産評価額と同額になります。
土地の相続税評価額もまた,一般的に,時価よりも低い金額になると言われています。
相続税評価額については,目安として,宅地等については,時価の8割程度であると言われることが多いです。
例外的に,道路に面していない土地,傾斜のある土地等,建物の再建築がほぼ不可能である土地,市街地から離れた場所にある土地等について,相続税評価額が時価と乖離した高い金額になることがしばしばあることも,固定資産評価額と同様です。