ようこそ、弁護士 寺井 渉 のブログへ

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遺留分に関する法改正1

1 はじめに

遺留分制度については、2018年7月以降、改正法が施行され、制度が大きく変更されることとなりました。

改正後は、遺留分は、専ら、金銭での請求を行うことができることとされました。

改正前は、遺留分の請求を行うと、第一次的には、相続財産を共有している状況となり、遺留分を請求された側が金銭での価額弁償を希望する場合には、金銭の支払により解決することができると定められていましたが、改正後は、法的には、金銭での請求のみができることとされました。

これに伴い、請求権の呼び名も、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に変更されることとなりました。

こうした改正に伴い、遺留分について、何点か、改正前と比較して、取り扱いの変更が生じた部分があります。

改正法が施行されてから時間が経ちましたが、弁護士としては、改正された部分そのものだけでなく、改正に伴って生じる派生的な影響についても注意したいところです。

ここでは、変更が生じたと思われる点について、まとめたいと思います。

2 賃料の取り扱い

相続財産である不動産の中に、賃料が発生する不動産が含まれていることがあります。

改正前は、遺留分減殺請求権を行使することにより、遺産である不動産については、遺留分権利者が相続開始時点より持分を有していたこととなっていました。

ただし、賃料については、遺留分権利者が分配を請求することができるのは、遺留分減殺請求があった日以後の果実に限定されていました(旧民法1036条)。

このため、遺留分減殺請求がなされて以降に発生した賃料については、分配を請求することができた。

ところが、改正後は、遺留分権利者は、遺産である不動産については、何らの権利も有しておらず、遺留分相当額の金銭の支払を請求することができるのみとなりました。

このため、遺留分権利者は、遺産である不動産から発生する賃料については、分配を請求することができないこととなりました。

遺産分割の成立に伴う修正申告・更正の請求の要否②

このように、遺産分割の成立にあたっては、各相続人が修正申告・更正の請求を行い、税務署(国)を介して、相続税の精算がなされることとなります。

もっとも、これとは異なる方法で、相続税の精算がなされることもあります。

それは、税務署(国)を介さずに、相続人間で、直接、相続税の差分の調整金を精算する方法です。

遺産分割の成立に伴い、遺産分割により取得財産の割合が変更になった場合には、相続分よりも多めに財産を取得した相続人が追加で納付する相続税の総額は、相続分よりも少ない財産を取得した相続人が還付を受ける相続税の総額と同じ金額になるはずです(ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の制度を用いて相続税の総額が減額される場合は別です)。

このため、税務署(国)を介して精算を行わなくても、相続人間で直接、相続税の差分を精算する方法を用いる方法を用いる方が早いのではないかと考えられるところではあります。

実務では、このように、相続人間で直接、相続税の差分の精算金を支払う方法を用いることもあります。

弁護士として交渉した際にも、このような精算を行ったことは、何度かあります。

ただ、このような精算を行う際には、相続税の差分の計算について、相互の信頼に基づき合意ができることが前提となります。

差分の計算結果について、合意ができない場合は、このような精算方法を用いることはできないです。

極端な例だと、相続分よりも多めの財産を受け取ったある相続人Aが、相続人よりも少ない財産を受け取った相続人Bから、相続税の差分の精算金の支払を受けたものの、その後、相続人Aは、秘かに、小規模宅地等の特例等の適用を受ける前提で更正の請求を行い、税務署から相続税の還付を受けてしまうといった行動を取ることもできないわけではないです。

相続人間での調整金の支払により精算を行う場合には、相続人間で一定の信頼関係が必要であるとは思います。

遺産分割の成立に伴う修正申告・更正の請求の要否①

まとまった相続財産等が存在し、相続税の課税対象になる場合には、相続税の申告、納付を行う必要があります。

相続税の申告、納付は、基本的には、被相続人が亡くなってから10か月以内に行う必要があります。

仮に、相続人同士の意見が調整できず、被相続人が亡くなってから10か月以内に遺産分割を完了することができなかったとしても、10か月以内に相続税の申告、納付を行わなければならないこととなります。

このように、遺産分割が完了していない、未分割の状態で申告、納付を行う場合には、一旦、各相続人が法定相続分どおりに財産を取得したとの仮定のもと、申告、納付を行うこととなります。

この場合、相続税は、法定相続分のとおりに分担することとなります。

これを俗に未分割申告と言います。

それでは、10か月以内に遺産分割が完了せず、未分割申告を行った案件で、その後に遺産分割が成立した場合には、どのように対応することとなるのでしょうか?

まず、遺産分割の成立により、相続税を減額できる特例を利用することができる場合には、申告をし直すメリットがあります。

このように、申告をし直すことにより、相続税が減額され、すでに納付した相続税の還付がなされることとなります。

このように、相続税の還付の請求を行うことを、更正の請求と言います。

具体的には、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例を利用することができる場合には、遺産分割の成立により、相続税を減額することができる可能性があるため、更正の請求を行うメリットがあることとなります。

次に、遺産分割が法定相続分のとおりになされた場合には、相続税の分担割合に変動は生じないですが、法定相続分とは異なる割合で遺産分割がなされた場合には、各相続人の相続税の分担割合に変動が生じることとなります。

遺産分割の結果、法定相続分よりも多くの相続財産を取得した相続人がいる場合には、相続税も多めに負担すべきこととなりますし、法定相続分よりも少ない財産しか取得しなかった相続人がいる場合には、相続税の負担割合は減少することとなります。

これらの相続人の間で、相続税の負担について、清算を行う必要が生じることとなります。

このような清算を行うため、申告のし直しが行われることがあります。

この場合、法定相続分よりも多くの相続財産を取得した相続人は、相続税が増額されることとなりますので、修正申告を行い、追加の相続税を納付することとなります。

他方、法定相続分よりも少ない相続財産しか取得しなかった相続人は、相続税が減額されることとなりますので、更正の請求を行い、相続税の還付を受けることとなります(この場合、相続税を追加で納付すべき相続人が修正申告を行っていなければ、税務署は、追加で納付すべき相続人に対し、更正処分を行い、追加納付を求めることとなります)。

更正の請求については、期限が遺産分割が成立してから4か月以内とされており、4か月以内に更正の請求を行わなければ、税金の還付を受けることができなくなってしまいます。

このように、期限がかなり限定されている話ですので、弁護士として遺産分割に関与するにあたっても、意識しておいた方が良い事項になります。

倍率地域の土地の相続税評価③

名寄帳や固定資産税の納税通知書を確認すると、固定資産評価額が0円とされている土地が記載されていることがあります。
自治体によっては、固定資産評価額が0円である土地は、固定資産税の納税通知書には記載がなく、名寄帳を取得しなければ、存在を確認することができない場合もあります。
たとえば、宗教法人の境内地、墓地、公衆用道路、用悪水路、ため池、堤防、保安林については、固定資産評価額が0円とされています。

これらについて、相続税評価がいくらになるかは、ケースバイケースです。
土地の種類、状況によっては、固定資産評価額が0円であるにもかかわらず、相続税評価額をつけなければならない土地が存在することとなります。
具体的には、以下のとおりです。

公衆用道路は、道路として使用されている土地のことを言います。
私有地であっても、実際に道路として使用されている土地については、公衆用道路と扱われることがあります。
公衆用道路については、不特定多数人が使用するものでしたら、相続税評価でも、0円で評価することとなります。
他方、特定人しか使用しないものでしたら、私道ではないものとして相続税評価額を付し、これを3割減じることにより評価することとなります。
このように、公衆用道路については、実際に誰が利用しているかを確認した上で、相続税評価が付くかどうかを判断しなければならないことがあります。
そして、3割減で評価すべき場合には、固定資産評価額自体は0円であり、これをベースに評価額を計算することはできませんので、近傍宅地の評価額に宅地の評価倍率を乗じ、土地の形状や公法規制等による増減額修正を行い、最後に3割減をして評価額を算定することとなります。

ため池は、貯水池が存在する土地のことを言います。
ため池については、原野に準じて評価することとなっていますが、固定資産評価額では0円となっていることがあります。
このような場合には、近傍の原野の1㎡あたりの評価額を調査し、これに原野の評価倍率を掛け算し、地積を乗じるとの計算を行う必要が生じてきます。
近傍の原野の1㎡あたりの評価額については、市町村役場で確認することとなります。

保安林は、水源の保護、防災等の公益目的のため、伐採等の制限がなされている山林のことを言います。
保安林については、固定資産評価額が0円となっていますが、相続税評価においては、近傍の山林の1㎡あたりの評価額を調査し、これに山林の評価倍率を掛け算し、地積を乗じた上で、伐採制限に応じて一定割合を控除することにより、評価額を算定することとなります。
具体的には、伐採制限が一部皆伐の場合は0.3、択伐の場合は0.5、単木選伐の場合は0.7、禁伐の場合は0.8が控除割合となります。
近傍の山林の1㎡あたりの評価額については、市町村役場で確認することとなります。
伐採制限については、都道府県に問い合わせて確認することが多いです。三重県でも、県庁の農林水産部地産林道課森林管理班に問い合わせて確認することができます。

倍率地域の土地の相続税評価②

ここからは、掛け算1回では、土地の評価が完了しない場合を説明したいと思います。
まず、評価倍率表を確認したとしても、評価倍率が記載されていないことがあります。
田や畑については、「比準」、「市比準」、「周比準」と記載されており、具体的な倍率が記載されていないことがあります。
「比準」、「市比準」、「周比準」とされている田、畑については、近傍宅地の評価額に比準して、評価額を算定することとなります。
三重県でも、このような算定方法を用いるべき土地が散見されます。

近傍宅地の評価額とは、近隣の標準的な宅地の評価額のことを言います。
基本的には、各市町村は、各土地の固定資産税評価額を算定する際、この地域の標準的な宅地の評価額は1㎡あたり●円の定めています。この金額をベースに、近傍宅地の評価額を算定することとなります。

標準的な宅地の固定資産評価額については、全国地価マップ(URL)で確認することができることがあります。
全国地価マップを確認すると、各路線に面する宅地の1㎡あたりの固定資産評価額が記載されていることがありますので、この数値に基づいて評価を行うこととなります。
それでは、全国地価マップに路線価が記載されていない場合は、どうすれば良いのでしょうか?このような場合には、各市町村の資産税課に問い合わせを行い、評価の対象となる土地の地番を伝え、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額を確認することとなります(全国地価マップには近隣地域の単価も記載されていますが、各単価が妥当する範囲がどこまでかが分からないため、評価のベースにし難いです)。

全国地価マップを利用する場合には、注意するべき事項があります。
それは、全国地価マップに記載されている評価額については、相続の発生時期によっては、時点修正がなされることがあるということです。
相続の発生日が時点修正の対象になっている場合は、記載された修正率を乗じた評価額を利用する必要があります。

以上の手順により、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額を確認することができます。
次に、評価倍率表を確認し、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額に、宅地の倍率を乗じます。
宅地の1㎡あたりの固定資産評価額は、そのまま相続税評価に用いることはできず、宅地の倍率を乗じることにより、相続税評価額への切り替えを行う必要があります。
この点は忘れがちですが、必ず、宅地の倍率を乗じる手順を踏む必要があります。
これにより、1㎡あたりの近傍宅地の評価額を算定することができます。

その後、土地の形状、公法規制等を踏まえて、近傍宅地の評価額を増減額修正し、各土地の評価額を算定することとなります。
この作業は、路線価地域における評価方法と同じです。
なお、路線価地域の場合は、路線毎に、ビル街地区、高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区、中小工業地区、大工業地区が設定されており、どれに該当するかにより、増減額修正の割合が異なってくることがありますが、近傍宅地の評価額をベースとして評価する場合は、普通住宅地区に該当するものとして、増減額修正を行います。

このように、倍率地域内の土地であっても、倍率表で「比準」、「市比準」、「周比準」とされている場合には、路線価地域内の土地のとほぼ同様の評価方法を用いなければならない場合があります。

倍率地域の土地の相続税評価①

相続税申告のため、土地の評価を行う場合には、大別して、2つの評価方法が用いられます。
1つ目は、路線価地域における評価方法であり、2つ目は、倍率地域における評価方法です。

路線価地域では、国税庁が公表している、各路線に面する土地の1㎡あたりの土地の単価(路線価)をベースに、土地の形状、公法規制等を考慮しつつ、土地の評価額を算定します。
倍率地域では、市町村が設定している固定資産評価額に、国税庁が公表している倍率を乗じることにより、土地の評価額を算定します。
一般に、路線価地域については、土地の形状、公法規制等を踏まえて評価額を算定する必要があり、算定が複雑であるのに対し、倍率地域については、掛け算を1回行うだけであり、固定資産評価額さえ分かれば、座りながらでも評価額を算定することができるため、算定が容易であるとの説明がなされることがあります。
ただ、実際には、路線価地域についても、複雑な算定方法を用いなければ、評価ができなかったり、高めの評価額で申告することとなってしまったりすることがあります。
倍率地域については掛け算を1回行うだけであるという甘い考えで臨むのは、妥当ではない考え方だと思います。

ここでは、倍率地域における土地の評価方法について、説明を行いたいと思います。

まず、倍率地域における一般的な評価の流れについて説明したいと思います。
評価額を算定するにあたっては、各土地の固定資産評価額についての情報と、評価倍率についての情報を得る必要があります。

各土地の固定資産評価額については、毎年4月に、各市町村役場から届く固定資産税の納税通知書に記載されています。
ただ、自治体によっては、免税点未満の評価額の不動産については、固定資産税の納税通知書には記載していないことがあります。このような場合には、各市町村役場において、名寄帳を取得し、免税点未満の評価額の不動産についての情報を得る必要があることがあります(なお、松阪市ですと、名寄帳の名称が使用されていますが、他の市町村では、固定資産課税台帳記載事項証明書等、異なる名称が使用されている場合があります)。
また、被相続人が共有している不動産、被相続人のさらに先代名義のままになっている不動産については、別個に固定資産税の納税通知書が送付されることとなります。このため、共有している不動産、先代名義の不動産についての固定資産税の納税通知書が別に届いていないか、注意する必要があります。
さらに、登記簿上は被相続人が所有する不動産が存在するにもかかわらず、市町村役場が別の人の名義として課税台帳に記録していたり、被相続人名義として課税台帳に記録されているものの、旧住所や旧姓で記録されているため、固定資産税の納税通知が届かない不動産が存在することもあります。この場合には、市町村役場に、登記簿や住民票、戸籍を提出し、課税台帳を修正してもらった上で、名寄帳を新たに発行してもらわなけれなならないこともあります。
これらの作業を行い、各土地の固定資産評価額に関する情報を一通り入手することとなります。

評価倍率については、国税庁のホームページで公表されている倍率表で確認することができます。
令和4年1月1日から令和4年12月31日までに相続が発生した場合には、令和4年度の倍率表を参照することとなります。
倍率表については、令和4年度の倍率表については、翌令和5年7月初旬に公表されるというように、翌年の7月初旬に公表されることとなっています。
ホームページにおいて、該当する市町村の倍率表を確認し、該当する地域、地目の倍率をもって、評価を行うこととなります。
ある土地についてどの倍率を用いるかについては、多くの場合には容易に判別することができますが、時には、「県道●号線以南」、「●団地」というように土地勘がないと判別がつきにくいことがあります。このような場合には、まずは、地図等で土地の所在場所を正確に確認し、判別を試みることとなりますが、どうしても判断に迷う場合は、管轄の税務署に問い合わせ、どの倍率を用いるべきかを確認することもあります。
また、ある土地が市街化区域であるか市街化調整区域であるか、農業振興地域内の農用地区域内であるか地区域外であるかにより、該当する倍率が異なってくることもあります。このような場合には、各市町村のホームページで公表されている都市計画図、eMAFF農地ナビ(eMAFF農地ナビに記載がない場合には、各市町村の農業政策課への照会)等により、ある土地がいずれの地域に該当するかを確認することとなります。

倍率地域内の土地については、このようにして固定資産評価額についての情報、評価倍率についての情報を得て、これらを掛け算することにより、評価額を算定することとなります。

寄付と相続税

1 寄付により相続税は軽減される

相続等によって財産を取得した人が、相続等によって取得した財産を寄付すると、相続税が軽減されることとなります。

相続税は、相続等によって取得した財産について、一定の税率を乗じることで計算されます。

相続等によって財産を取得した人が寄付を行うと、寄付した財産の価額を、相続等によって取得した財産から控除計算することができます。

このため、相続税は、寄付した財産の価額×税率の分、軽減されることとなります。

以下では、こうした相続税の軽減がどのような場合になされるかを説明したいと思います。

2 寄付控除の要件

寄付した財産の価額の控除が認められるのは、以下の場合です。

① 申告期限までに、寄付の手続を完了すること  
② 相続等によって取得した財産を寄附すること  
③ 寄付先が国、地方公共団体、特定公益増進法人、認定NPO法人のいずれかであること

①から、申告期限後に寄付を行ったとしても、寄付の控除は認められないこととなります。

必ず、申告期限までに寄付の手続を完了している必要があります。

寄付の手続が完了すると、証明書が発行されますので、これを申告書に添付して提出します。

②から、相続等によって取得した財産から寄付を行う必要があることとなります。

遺言による遺贈を受けない財産や、生命保険金から寄付を行った場合にも、控除を受けることができます。

注意しなければならないのは、相続等によって取得した財産を売却し、売却代金から支払うと、②には、該当せず、寄付の控除を行うことができなくなるということです。

たとえば、不動産を相続した場合には、不動産をそのまま寄付した場合は控除を用いることができますが、不動産を売却し、売却代金から寄付を行った場合は控除を用いることができないこととなります。

③から、控除を用いることができる寄付先が限定されています。

地方公共団体も寄付の対象になり、三重でも、県庁に問合せを行い、寄付を行うことも可能となっています。

国、地方公共団体については明確ですが、特定公益増進法人、認定NPO法人についてはどのような団体がこれに該当するかが明確ではありません。

控除を用いることを考えている場合は、事前に、寄付先の団体に問い合わせ、控除を用いることができるかどうかを確認した方が良いでしょう。

3 寄付控除を利用できなくなる場合

寄付控除を用いて相続税の申告を行ったとしても、以下の場合等には、控除の利用が認められなくなってしまいますので、注意が必要です。

① 寄付を受けた日から2年以内に、寄付先が特定公益増進法人、認定NPO法人に該当しなくなった場合  
② 寄付を受けた日から2年以内に、寄付先が寄付を受けた財産を公益目的に利用していない場合

不動産の調査

1 不動産の調査の必要性

不動産については、あますことなく調査を行った上で、遺産分割協議や相続登記を行う必要があります。

不動産についての調査が不十分であったため不動産の見逃しが生じ、後日、遺産分割や名義変更が未了であった不動産の存在が明らかになった場合には、協議や登記手続をやり直す必要が生じてしまいます。

しかし、後日、他の相続人に対し、協議や登記手続への協力を依頼したとしても、他の相続人が協力を拒んでくる恐れがあります。

このような場合には、最悪の場合、遺産分割調停等の法的手続を用いなければ、相続を完了することができないといった事態が生じかねません。

このため、相続の際には、被相続人が所有していた不動産を余すことなく調査する必要があります。

弁護士としてご相談をお受けする場合にも、この点の調査は慎重に行う必要があります。

2 不動産の調査方法(固定資産納税通知書で確認する)

それでは、被相続人が所有していた不動産を余すことなく調査するためには、どのようにすれば良いのでしょうか?

参考になるのは、毎年の4月から5月にかけて届く、固定資産納税通知書です。

固定資産納税通知書の課税明細書のページには、ある市町村において、被相続人が所有していた不動産の一覧が記載されています。

このため、固定資産納税通知書の課税明細書のページを確認すれば、被相続人が所有していた不動産を、ほぼ、余すことなく確認することができます。

固定資産納税通知書は、市町村ごとに送付されます。

このため、被相続人が複数の市町村で不動産を所有していた場合には、別々に固定資産納税通知書が送付されることとなります。

複数の固定資産納税通知書が届いている場合には、それぞれの課税明細書のページを確認する必要があります。

もっとも、固定資産納税通知書を紛失してしまっており、これを確認することができない場合もあり得るかと思います。

また、固定資産納税通知書には、固定資産税が非課税となっている不動産が記載されていないことがあります。

固定資産税が非課税になっていた不動産についても、相続税が課税されることがありますので、相続税申告にあたっては、固定資産税が非課税になっている不動産も調査する必要があります。

このように、固定資産納税通知書を紛失した場合、固定資産税が非課税になっている不動産を調査したい場合は、どのようにすれば良いのでしょうか?

3 不動産の調査方法(名寄帳で確認する)

固定資産納税通知書以外の調査方法としては、市町村役場において、名寄帳を取得することが考えられます。

名寄帳についても、被相続人が所有していた不動産の一覧が記載されています。

名寄帳は、市町村によっては、固定資産課税台帳と呼ばれることもあります。

名寄帳には、固定資産税が非課税になっている不動産も記載されています。

このため、固定資産納税通知書が残っている場合であっても、固定資産税が非課税になっている不動産も確認するため、念のため、名寄帳を確認することもしばしばあります。

4 登記簿を確認する

固定資産納税通知書の課税明細書や名寄帳を確認したあとは、それぞれの不動産について、登記簿を確認するのが望ましいでしょう。

理由は以下のとおりです。

固定資産納税通知書や名寄帳は、その年の1月1日時点の所有者が記載されています。

このため、1月1日時点で不動産の所有者であったとしても、その後、不動産の名義を変更しまっており、不動産の所有者ではなくなっている可能性を排除することができません。

現時点での所有者を確認するためにも、それぞれの不動産について、登記簿を確認するのが望ましいでしょう。

また、共有の不動産の場合ですと、固定資産納税通知書や名寄帳には、被相続人が何分の何の持分を有しているかが記載されていません。

被相続人の持分を確認するためには、不動産の登記簿を取得する必要があります。

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合②

② 遺産分割協議による解決

次に、遺産分割協議による解決が考えられます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合は、その相続人が一切の財産を取得しないとの内容の遺産分割協議を成立させ、相続財産の分割を完了してしまうことが考えられます。

ただ、遺産分割協議による解決についても、いくつかの注意点があります。

それは、遺産分割協議については、必ず、相続人全員の合意により行う必要があるという問題です。

このため、1人でも、遺産分割協議の内容に反対していたり、そもそも遺産分割協議を行うこと自体に同意しない相続人がいたりする場合には、遺産分割協議は成立せず、いつまでも問題が解決しないこととなってしまいます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいたとしても、遺産分割協議の内容に同意しない相続人し、遺産分割協議が成立しない状態が続く限り、相続に巻き込まれ続けることとなってしまいます。

③ 相続分の譲渡、相続分の放棄

3つ目の方法として、相続分の譲渡、相続分の放棄という方法があります。

相続分を主張することを希望しない相続人は、相続分の譲渡、相続分の放棄を行うことにより、遺産分割の当事者から外れることができます(ただし、後述のとおり、手続との関係では留意すべき点があります)。

相続分の譲渡、相続分の放棄は、相続放棄と異なり、家庭裁判所での手続を経ることなく、行うことができます。

相続分を主張しない意思表示を明確にするため、何らかの書面(実印を押印し、印鑑証明書を添付した相続分譲渡証書、相続分放棄証書)を作成すべきところではありますが、家庭裁判所の手続を用いなかったとしても、こうした書類を有効に作成することができます。

また、遺産分割協議と異なり、相続人全員の意見が一致していなかったとしても、相続分を主張することを希望しない相続人が単独で相続分の譲渡、相続分の放棄の意思表示を行えば、遺産分割の当事者から外れることができます。

ある相続人が相続分の放棄、相続分の譲渡を行えば、あとは、残りの相続人で遺産分割等の手続を行うこともできます。

他方で、特に相続分の放棄については、留意すべき点があります。

相続分の放棄は、家庭裁判所で行う相続放棄とは異なり、公的機関の関与なく書類等の作成がなされるものであるため、相続分放棄証書を作成したものの、相続手続で用いることができないといった事態が生じることが起こり得ます。

特に、法務局は、相続登記(不動産の名義変更)において、相続分放棄証書をもって名義変更手続を行うことを認めていないため、相続分放棄証書を法務局に提出しても、相続登記の手続を完了することはできないこととなってしまいます。

登記手続に詳しくない弁護士に依頼すると、書類を作成し、署名、押印を得たため、問題が解決したと安心したものの、その書類では登記手続を行うことができず、書類を作成し直さなければならないといった事態が生じかねません。

問題を解決するためには、相続手続を完了することができるかどうかにも留意して、交渉や書類作成を行う必要があると言えます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合①

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合相続が発生すると、各相続人は、相続財産について、割合的な持分を有することとなります。

このような割合的な持分が、相続分になります。

ところで、相続人の中には、相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合があります。

相続分を主張することを希望しなかったとしても、相続人である以上は、当然に遺産分割の当事者になってしまい、何らかの手続をとらない限り、相続に巻き込まれた状態が続くこととなります。

それでは、相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合は、どのような手続を取れば良いのでしょうか?

ここでは、考えられる手続を説明したいと思います。

① 相続放棄による解決

まず、相続分を主張することを希望しない相続人が、家庭裁判所において、相続放棄を行うことが考えられます。

相続放棄を行うと、その人は、最初から相続人ではなかったこととなります。

ただ、相続放棄については、いくつかの注意点があります。

1つ目は、原則、相続が発生したことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所で手続を行う必要があります。

このため、相続が発生したことを知ってから3か月が経過してしまっていると、基本的には、相続放棄ができないこととなります。

相続が発生してから時間が経ってしまっている場合は、別の手続を用いる必要があります。

2つ目は、相続放棄を行うにあたり、家庭裁判所に、様々な必要書類を提出したり、一定の手続を踏んだりする必要があります。

必要書類については、たとえば、被相続人との相続関係を明らかにする戸籍を提出する必要があり、被相続人が遠縁であったり、三重県以外に本籍地があったりすると、戸籍の取得にかなりの手間がかかってしまいます。

家庭裁判所の手続についても、1つでも手続を行っていただくことができなければ、相続放棄が受理されかねないこととなりかねません。

こうした手続上の手間は、相続放棄のデメリットであると思います。

3つ目は、相続放棄を行うと、別の人が相続人になる可能性があるという問題です。

たとえば、被相続人の子が相続放棄を行うと、被相続人の父母が相続人になってしまいます。

被相続人の父母が存命でなかったり、被相続人の父母も相続放棄を行ったりすると、被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が存命でない場合は、甥姪)が相続人になってしまいます。

このため、被相続人の子や父母が相続放棄を行う場合は、別の人が相続人になる可能性がないか、注意する必要があります。

新たに相続人になった人が交流の乏しい人だと、かえって、解決が遠のいてしまいかねません。

このように、家庭裁判所での相続放棄による解決については、一定の問題が生じる可能性があり、注意が必要です。

場合によっては、相続放棄による解決に適しないこともあります。

こうした手続選択を行うには、法的問題を網羅的に検討する必要がありますので、弁護士に相談した方が良いのではないかと思います。