月別アーカイブ: 2016年 8月

準確定申告

亡くなられた方が,不動産を賃貸していたり,個人事業を営んでいたりした場合,特に,生前に確定申告を行っていた場合には,相続後に準確定申告が必要かどうかを検討する必要があります(松阪市では,他の地域と比べても,必要な場合が多めなのではないかと思います)。
準確定申告は,相続が始まったことを知ってから4か月以内に行う必要があります。
弁護士としてご相談を受ける場合は,多くの場合,4か月が経過して以降の相談になります。
ただ,本来,準確定申告が必要であるのに,申告をしていないことも多いです。
このような場合には,4か月の期限後であっても,期限後申告を行うかどうかを検討することもあると思います。

準確定申告は,基本的に,相続人全員が連署して行うこととなっています。
弁護士に相談する場合は,相続人間でなんらかの不和があることが多いですので,相続人全員に印鑑をもらおうとしても,スムーズにもらえないことが多く,時間がかかることが多いです。
また,準確定申告をしようにも,必要な情報がそろっていないこともあると思います。
このため,実際には,4か月の期限内に申告を行うのが難しいこともあり,やむなく期限後申告をせざるを得ないこともあると思います。

また,相続放棄,限定承認が絡む場合には,4か月の期限内に申告を行うのが不可能なこともあります。
相続放棄,限定承認の決断は,相続の開始を知ってから3か月の熟慮期間内に行うこととなっています。
相続放棄をするかどうか等を即断できることもありますが,中には,調査が必要なこともあり,3か月の熟慮期間ぎりぎりで相続放棄等の申述を行うこともあります。
また,調査に時間を要する場合には,熟慮期間伸長審判の申立を行うことにより,熟慮期間(多くの場合3か月)を延長することもできます。
さらに,より詳細な調査が必要であるとして,1度延長した熟慮期間を再延長することが認められることもあります。
このように,相続放棄,限定承認が絡む場合には,4か月を経過しても,相続人が確定しないということがあり得ます。
準確定申告は一般的に単純承認事由に当たるとされており,準確定申告をしてしまうと相続放棄・限定承認ができなくなる恐れもあることから,前倒しで準確定申告を行うこともできません。

このように,私が携わっている案件を前提とするとなるかもしれませんが,準確定申告の4か月の期間は,かなりタイトであると思います。
もっと待ってくれても良いのではないかというのが,個人的な思いです。

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相手方の住所不明

離婚等で,相手方から,当方の依頼者が暴力を振るったとの主張がされている場合で,当方から調停申立を行うことがあります。
この場合,相手方が支援措置を受けており,相手方の現在の住所地が分からないということがあります。
支援措置とは,地方自治体に同居期間中等にDV等があったことを申告することで,住民票等を非開示にする制度です。
住民票等を非開示にすることで,現在の住所が分からないようにし,今後,暴力等の被害を受ける可能性を避けることができます。
このような場合に,当方から調停申立を行う際に,相手方の住所が分からず,調停の手続等を進めることができないことがあります。

弁護士の場合は,職務上請求という手段を持っており,事件を進めるために必要がある場合は,住民票等を取得することができます。
ただ,支援措置がとられた場合は,職務上請求によっても,住民票等を取得することができないことが多いです。
一部,三重県外の自治体で,職務上請求に対して住民票等を開示した例もあるようですが,三重県内の自治体であれば,おおむね,住民票等を開示しないという対応になると思います。

当時,この先の手続をどのように進めるか戸惑った記憶がありますが,裁判所等と協議し,次のように進めることとなりました。
① 調停申立書に相手方住居所不明と記載して,調停申立を行う。
② 自治体に対して職務上請求を行うとともに,住民票等については,裁判所へ送付していただきたいとの上申書を送付する。
このように申請を行えば,自治体から裁判所に住民票が送付され,裁判所で相手方の住所を確認できる状態になります。
その上で,裁判所から,相手方に対し,確認できた住所に調停申立書が送付され,手続が進められることとなります。

この場合,裁判所から当方に住所が明らかにされることはありません。
ですから,主張書面等,調停で提出する書面につきましては,すべて裁判所に送付し,裁判所から相手方の住民票の住所に送付されることとなります。