Monthly Archives: 12月 2017

民事信託と遺留分減殺請求2

遺留分に対応した民事信託としては,以下のものが想定されています。
Aさんがアパート(土地+建物)を信託の対象財産とし,民事信託を設定します。
Bさんは,民事信託の受託者として,アパートの管理・賃料の収受に当たることとします。
当初は,Aさんを第一次の受益者とし,アパートの賃料収入については,Bさんが受け取ることとします(これは,Bさん,Cさんを第一次の受益者とすると,贈与税が発生する可能性があるからです)。
そして,Aさんが亡くなられた場合には,BさんとCさんを第二次の受益者とし,アパートの賃料をBさんとCさんが2分の1ずつ受け取ることとします。
最終的に,Cさんが亡くなられた場合には,Bさんか,Bさんの子を残余財産帰属者とし,Bさんか,Bさんのが子が取得することとします。

このような民事信託を組む場合,Aさんの相続により,Bさんは2分の1の収益を受益する権利を,Cさんは2分の1の収益を受益する権利を取得することとなります。
このように,Cさんは,2分の1の収益を受益する権利を取得できますので,この権利の評価額が1000万円を上回れば,Cさんは十分な財産を受け取っていますので,遺留分減殺請求権を行使できる余地はないこととなります。

あと,Cさんが亡くなられた場合には,Bさんか,Bさんの子は,最終的にアパートのすべてを取得することができます。
この部分について,Cさんの子が,Bさんか,Bさんの子に対して遺留分減殺請求権を行使することができるのではないかという疑問もあります。
この点については,Aさんが組んだ信託契約に基づいて取得するものであり,Cさんが組んだ信託契約に基づいて取得するものではないですので,Cさんの相続の際の遺留分減殺請求の対象にすることはできないとの説明がなされています(複雑な話ですが,最終段階をAさんの相続による遺留分減殺請求ととらえるとしても,Aさんから,Bさんか,Bさんの子が受け取る権利は元本受益権に過ぎず,これらの評価額は高額になるものではないため,Cさんからの遺留分減殺請求はできないとの説明がなされるようです)。

民事信託と遺留分減殺請求1

最近,弁護士を含む一部の専門家が,民事信託を利用し,生前に将来の相続についての対策をとる仕組みを作ることが増えてきているようです。

三重県では,民事信託が組まれることは,私が知る限りではほとんどなく,今後も民事信託を用いた案件を目にすることもないかもしれません。
ただ,当方が三重県在住で,相手方が東京都在住の場合には,相手方が民事信託を組んでおり,民事信託を前提とする主張がなされることもあり得ると思います。
そこで,民事信託についての知識を得るため,当法人でも研究会が設けられることとなりました。

相続で民事信託が登場する場面では,理屈上では様々ですが,特に気になっているのは,民事信託を用いて遺留分対策を行う場合です。
具体的には,Aさんが,まとまった賃料収入のあるアパート(土地+建物,評価額4000万円)を所有しているとします(便宜上,Aさんは,他には財産を有していないものとします)。
Aさんの(推定)相続人は,子Bさんと子Cさんの2人です。
そして,Aさんが,すべての財産をBさんに引き継がせたいと考えているとします。

そして,Aさんが,すべての財産をBさんに相続させるという遺言を作成したとします。
Aさんが亡くなり,実際にアパートがBさんに引き継がれたとします。
この場合,Cさんは遺留分減殺請求権を持っていますので,Bさんに対し,4分の1の権利を主張することができます(BさんとCさんは,Aさんから特別受益を受けていないとします)。
法律上は,Cさんは,アパート(土地+建物,評価額4000万円)について,4分の1の共有持分を有することとなります。
Bさんがアパートをすべて引き継ぎたい場合は,Cさんに対し,4分の1の評価額に相当する金額,つまり,1000万円を支払わなければなりません。
Bさんが1000万円を支払うことができない場合は,アパートは共有のままになってしまいます。

遺留分減殺請求権は,民法上,相続人に認められた最低限の権利保障ですので,基本的には,Aさんがどのような思いを抱いていたとしても,Cさんから権利主張ができることとなってしまいます(相続の廃除が認められるのも,極めて例外的な場合に限られます)。
こうした民法の規定にかかわらず,なんとかして,Bさんにすべての財産を引き継がせる方法はないかということで,民事信託を利用することができるのではないかという話が出ているのです。