Monthly Archives: 1月 2020

遺留分侵害額請求権の時効

遺留分侵害額請求権は、遺留分侵害の事実を知ってから1年以内に行使の意思表示をしなければ、時効によって消滅すると定められています(他に、10年の除斥期間と、侵害額請求権を行使したことによって発生した権利の時効も存在します)。
一般的に、債権の消滅時効の期間が10年と定められていることと比較すると、遺留分侵害額請求権については、かなり短期間で時効により消滅するものとされています。

それでは、時効になるのを防ぐためには、期間内にどのようなことをしなければならないのでしょうか。

遺留分侵害額請求権の場合は、相手方に対して遺留分侵害額請求権を行使するとの意思表示を行えば、時効消滅を避けることができます。
訴訟や調停等の裁判手続を用いなかったとしても、相手方に対する意思表示を行いさえすれば良いということになります。
規定上は、口頭で遺留分侵害額請求権を行使することを告げさえすれば良いのです(証明上の問題はありますが)。

ここで注意しなければならないのは、逆に、(裁判外での意思表示を行うことなく)裁判手続を用いた場合には、どの段階で時効消滅を避けることができるのかということです。

貸金返還請求権等の一般的な債権については、民事訴訟法147条が、訴えを提起したときに時効が中断すると定めています。
つまり、裁判所に訴状を提出すれば、相手方に訴状が送達される前であっても、時効が中断するということになります。
民事調停についても、民事訴訟法147条が準用され、同じ結論になると考えられています。

これに対して、遺留分侵害額請求調停について、裁判所のホームページには以下の記述があります。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/lkazi_07_26/index.html
「遺留分侵害額の請求は、・・・家庭裁判所の調停を申し立てただけでは相手方に対する意思表示ではありませんので、調停の申立てとは別に内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります」
このように、一般的な債権の時効中断とは異なり、遺留分侵害額請求については、調停の申立を行っただけでは、時効消滅を避けることはできないこととなります。
このため、調停申立だけを行ったものの、別途、相手方に対する意思表示を失念し、1年の期間が経過してしまうと、遺留分侵害額請求権を行使することができないこととなってしまいます。

それでは、遺留分侵害額調停を前置することなく、遺留分侵害額請求訴訟を提起した場合はどうなるのでしょうか。
この場合については、後日、まとめることとしたいと思います。

遺留分侵害額調停申立だけでは時効消滅を避けることができないという点は、弁護士でも勘違いしてしまうポイントのようです。
遺留分侵害額請求の場合は、一般的な債権とは異なり、裁判所に書類を提出すれば時効の問題はなくなると考えるのではなく、別途、内容証明郵便等による意思表示を行うべきでしょう。