月別アーカイブ: 2023年 6月

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合②

② 遺産分割協議による解決

次に、遺産分割協議による解決が考えられます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合は、その相続人が一切の財産を取得しないとの内容の遺産分割協議を成立させ、相続財産の分割を完了してしまうことが考えられます。

ただ、遺産分割協議による解決についても、いくつかの注意点があります。

それは、遺産分割協議については、必ず、相続人全員の合意により行う必要があるという問題です。

このため、1人でも、遺産分割協議の内容に反対していたり、そもそも遺産分割協議を行うこと自体に同意しない相続人がいたりする場合には、遺産分割協議は成立せず、いつまでも問題が解決しないこととなってしまいます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいたとしても、遺産分割協議の内容に同意しない相続人し、遺産分割協議が成立しない状態が続く限り、相続に巻き込まれ続けることとなってしまいます。

③ 相続分の譲渡、相続分の放棄

3つ目の方法として、相続分の譲渡、相続分の放棄という方法があります。

相続分を主張することを希望しない相続人は、相続分の譲渡、相続分の放棄を行うことにより、遺産分割の当事者から外れることができます(ただし、後述のとおり、手続との関係では留意すべき点があります)。

相続分の譲渡、相続分の放棄は、相続放棄と異なり、家庭裁判所での手続を経ることなく、行うことができます。

相続分を主張しない意思表示を明確にするため、何らかの書面(実印を押印し、印鑑証明書を添付した相続分譲渡証書、相続分放棄証書)を作成すべきところではありますが、家庭裁判所の手続を用いなかったとしても、こうした書類を有効に作成することができます。

また、遺産分割協議と異なり、相続人全員の意見が一致していなかったとしても、相続分を主張することを希望しない相続人が単独で相続分の譲渡、相続分の放棄の意思表示を行えば、遺産分割の当事者から外れることができます。

ある相続人が相続分の放棄、相続分の譲渡を行えば、あとは、残りの相続人で遺産分割等の手続を行うこともできます。

他方で、特に相続分の放棄については、留意すべき点があります。

相続分の放棄は、家庭裁判所で行う相続放棄とは異なり、公的機関の関与なく書類等の作成がなされるものであるため、相続分放棄証書を作成したものの、相続手続で用いることができないといった事態が生じることが起こり得ます。

特に、法務局は、相続登記(不動産の名義変更)において、相続分放棄証書をもって名義変更手続を行うことを認めていないため、相続分放棄証書を法務局に提出しても、相続登記の手続を完了することはできないこととなってしまいます。

登記手続に詳しくない弁護士に依頼すると、書類を作成し、署名、押印を得たため、問題が解決したと安心したものの、その書類では登記手続を行うことができず、書類を作成し直さなければならないといった事態が生じかねません。

問題を解決するためには、相続手続を完了することができるかどうかにも留意して、交渉や書類作成を行う必要があると言えます。