月別アーカイブ: 2014年 11月

手形小切手法の書籍

手形小切手法について,分かりやすい書籍はないものでしょうかと聞かれたことがあります。
私が知る限りでは,分かりやすい書籍はありません(あくまで,個人的感想ですが)。

いわゆる基本書については,学説上の争いについて延々と書かれているものがあり,実務上必要な知識を入手するという点からは,最初に読む書籍としてはお勧めしにくいと思います。

最近は,通説や実務だとこのようになっていると書き,学説上の争いについては最小限しか書かない書籍もあります。
ただ,このような書籍についても,法制度を第三者視点で眺める形のものが多く,たとえば,振出人に対して請求する立場になった場合,どのような点に留意すれば良いのか,請求できなかった場合,どのような救済措置があるのか等,実際に制度を利用する立場に立った場合,どのように法制度を使えば良いのか,なかなか把握しずらいことが多いように思います。

基本書ではない,実務家向けの書籍については,それなりに詳しく書かれているもので,広く流通しているものが,あまりないように思います(少なくとも,松阪市でも簡単に入手できる書籍がないことは,確かだと思います。)。

結局,手形小切手法については,一度基本書で網羅的に法制度を理解するか,実務的なところに絞って知識を得るようにするかのどちらになるのではないかと思います。

年金分割3

離婚協議書を作成する際,しばしば,「当事者双方は,本条項に定めるほか何らの債権債務のないことを相互に確認し,名目の如何を問わず,金銭その他一切の請求をしない。」との条項を入れることがあります。
いわゆる清算条項です。
この条項を入れた場合,協議書で明確に定められたもの以外には,原則として,法的請求を行うことができなくなてしまうこととなります。
このような条項を入れることで,当事者間の紛争はすべて終了しましたと宣言することになるのです。

ただ,年金分割については,制度が十分に認知されていないため,離婚協議書上,取り決めがなされないまま,協議書に清算条項を入れてしまうことがしばしばあります。
このような場合,年金分割についても,清算条項により請求ができなくなってしまうのでしょうか。

結論としては,清算条項を入れたとしても,年金分割をしないとの条項を入れていないのであれば,年金分割を行うことはできると言うことになります。
年金分割の請求は,元配偶者ではなく,公的機関に対して行うものです。
ですから,元配偶者との約束だけでは,年金分割を行うことは妨げられないとの理屈になるのです。

ただし,離婚協議書において,あえて,年金分割をしないとの条項を入れた場合は,いわゆる不起訴の合意に当たるとされ,年金分割を行うことができなくなってしまうと言われています。

このことは,離婚調停についても同様であるとされており,年金分割をしないとの条項を入れず,清算条項を入れただけである場合は,年金分割を行うことは妨げられず,あえて,年金分割しないとの条項を入れた場合は,年金分割をすることはできるとされています。

以上のような理屈から,弁護士が入る事案であっても,年金分割の件で協議が進まなくなることを避けるため,あえて,年金分割以外についての合意を行い(多くは,この段階で清算条項を入れると思います。),離婚成立後に年金分割審判申立を行うこともあるものと思います。