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相続させる遺言と遺贈する遺言2

1 不動産名義変更手続と税金の違い

相続させる遺言、包括遺贈する遺言、特定遺贈する遺言は、異なる種類の遺言であると解釈されています。

このため、不動産名義変更手続や課税される税金がまったく異なってくることがあります。

このあたりに取り扱いは、不動産名義変更手続の種類、税金の種類によって、違った定められ方をしていますので、正確に把握することは困難です。

しかも、不動産名義変更手続については、近年の法改正もあるため、古い情報を参照すると、思わぬ間違いが生じるおそれがあります。

 

ここでは、不動産の名義変更手続、課税される税金の違いについて、まとめておきたいと思います。

 

2 全体の整理

令和6年4月以降の全体的な取り扱いの違いを整理すると、以下のとおりです。

 

・ 登記を単独申請でできる、登録免許税が0・4%で済む

  相続させる遺言

  相続人に対する包括遺贈

  相続人に対する特定遺贈

 

・ 農地法3条の許可申請が不要、不動産取得税が課税されない

  相続させる遺言

  包括遺贈(相続人に対するものも、相続人以外の人に対するものも)

  相続人に対する特定遺贈

 

3 個別の説明

⑴ 登記を単独申請でできるか

令和4年時点では、登記を単独申請できるのは、相続させる遺言に限られています。

遺贈する遺言については、相続人全員の協力を得なければ、登記手続を行うことができません。ただし、遺言執行者が就任している場合は、相続人全員ではなく、遺言執行者の協力を得て登記手続を行うこととなります。

いずれにせよ、現時点では、遺贈する遺言の場合は、取得者が単独で登記申請を行うことはできず、相続人全員か遺言執行者と共同で登記申請を行う必要があります。

 

ところが、令和3年4月28日の不動産登記法改正により、令和6年4月1日以降、相続の登記が義務化されることとなりました。

上記のとおり、遺贈については、共同で登記申請を行う必要があり、手続が困難であるにもかかわらず、相続の登記が義務化され、登記が完了していないことを理由として罰則のみが科されることは不合理だと考えられました。

そこで、遺贈のうち、相続人に対するものに限り、取得者が単独での登記申請を行うことができることとなりました。

相続人に対する遺贈の登記が単独申請できるようになるのは、令和6年4月1日の改正法の施行後のことになります。

 

⑵ 登録免許税が0・4%で済むか

不動産の所有者が変更になる場合には、登記申請を行います。

登記申請を行う際には、登録免許税を納付する必要があります。

登録免許税の税率は、固定資産評価額の2%になることが多いですが、相続人に関する一定の登記では、0・4%になります。

相続させる遺言による登記、相続人に対する遺贈の登記が、登録免許税が0・4%になる場合に該当します。

 

不動産登記法の改正法の施行後は、結果として、登記を単独申請でできる場合=登録免許税が0・4%で済む場合になります。

 

⑶ 農地法3条の許可申請が不要か

農地の所有者が変更になる場合には、農地法3条により、農業委員会の許可が必要になります。

この農業委員会の許可が得られない限り、農地の所有者を変更することは基本的にはできませんが、相続に関する一定の名義変更については、農地法3条の許可が不要とされており、農業委員会の許可を得ることなく、所有者を変更することができます。

かつては、相続させる遺言による農地の取得、包括遺贈による農地の取得については、農地法3条の許可が不要とされていました。

 

ところが、平成24年に、大阪高裁が、包括遺贈と特定遺贈(特に相続人に対するもの)とで農地法3条の許可の要否を分ける合理的な理由がないとの判決を下したため、平成24年12月24日に農地法施行規則の改正がなされることとなり、同日以降、相続人に対する特定遺贈についても農地法3条の許可が不要とされることとなりました。

 

⑷ 不動産取得税が課税されないか

不動産を取得した場合には、地方税として不動産取得税が課税されます。

不動産取得税の税率は3~4%前後ですが、一定の軽減措置も設けられています。

この点、相続させる遺言による不動産の取得、包括遺贈による不動産の取得、相続人に対する特定遺贈による不動産の取得については、不動産取得税が非課税とされています。

 

このため、現在では、農地法3条の許可申請が不要な場合=不動産取得税が課税されない場合になっています。

 

弁護士として相談を受ける際にも、実際に手続を行うことが可能か、どのような税金がかかるかについては、把握しておく必要がある部分だと思います。

相続させる遺言と遺贈する遺言1

1 遺言の種類

遺言の文例を確認すると、「●●に相続させる」と記載しているものと、「●●に遺贈する」と記載しているものがあります。

こうしたわずかな書き方の違いがあるだけで、まったく異なる種類の遺言が作成されたと扱われることとなります。

このため、書き方が違うだけで、遺言による手続の進め方や、課税される税金も違ってくることがあります。

 

ここでは、遺言の種類について、概略を説明したいと思います。

 

2 相続させる遺言

相続させる遺言は、相続人が遺産分割する方法を指定するものです。

このため、相続人に対してのみ、相続させる遺言を残すことができます。

 

仮に、相続人以外の人に対して、形上、「●●に相続させる」との文言の遺言を作成したとしても、その遺言は後述の遺贈する遺言に読み替えられることとなります。

 

3 遺贈する遺言

遺贈する遺言は、特定の人に遺産を引き継ぐものとすることを記載したものとなります。

遺贈する遺言は、相続人に対しても、相続人以外の人に対しても、残すことができます。

 

4 包括遺贈と特定遺贈

遺贈する遺言には、包括遺贈と特定遺贈があります。

包括遺贈と特定遺贈のどちらかであるかによっても、異なる手続により名義変更がなされ、異なる税金が課税される可能性がありますので、ここで違いを説明しておきたいと思います。

 

包括遺贈は、「すべての財産を遺贈する」、「財産の2分の1を遺贈する」というように、個々の財産を特定せず、遺産全体をまとめて遺贈することを言います。

 

特定遺贈は、「●●市●●町●●番地の土地、建物を遺贈する」というように、個々の財産を特定して遺贈することを言います。

 

中には、包括遺贈か特定遺贈か、判断に迷うことがあります。

たとえば、「預貯金のすべてを遺贈する」、「預貯金の全額の2分の1を遺贈する」の場合はどうでしょうか?

この場合は、預貯金全体をまとめて遺贈していますが、遺産全体をまとめて遺贈しているわけではありません。

このため、特定遺贈に該当すると解釈されます。

 

「●●市●●町●●番地の土地、建物以外の財産を遺贈する」の場合はどうでしょうか?

この場合は、特定の不動産以外については、遺産全体をまとめて遺贈することとなりますので、包括遺贈に該当すると解釈されます。

 

こうした遺言の解釈は、専門家でも迷うところですので、相続に詳しい弁護士にご相談いただいた方が良いと思います。

権利落ちと上場株式の相続税評価

1 上場株式の相続税評価の方法
上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額が評価額となり、相続税が課税されることとなります。

・ 被相続人が亡くなった日の終値

・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった前月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった前々月の終値の平均

2 権利落ちがある場合の例外
以上の原則に対して、権利落ちがあった場合には、権利落ちよりも前の取引日の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。

そもそも、権利落ちとは何なのでしょうか?
これは、投資を行っていると、よく知っている方が多いと思いますが、一般的な弁護士にとっては、馴染みが薄い概念だと思います。

株式を保有していると、新株の割当や配当等、一定の利益を得られることがあります。
このような新株の割当や配当は、権利確定日に株式を保有している人に対してなされます。
配当に関しては、多くの場合、3月、6月、9月、12月の最後の平日に株式を保有している人に対してなされます(一般には、3月、9月の最後の平日に配当を行う会社が多いでしょう)。

しかし、実際には、権利確定日の当日に株式を取得したとしても、新株の割当や配当を受けることはできません。
株式を取得してから株主名簿に株主として名前が記載されるまで、現在でも、2営業日の日数を要するからです。
このため、新株の割当や配当を受けるには、権利確定日の2営業日前(これを権利付最終日といいます)までに株式を取得する必要があります。

そうすると、権利確定日の1営業日前に株式を取得した場合と、権利確定日の当日に株式を取得した場合には、権利確定日までに株式を取得したにもかかわらす、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由から、新株の割当や配当を受けることができないこととなります。
このような事情から、理論上は、権利確定日の1営業日前(これを権利落ち日といいます)と権利確定日の当日には、株価が本来よりも低い金額で値動きするといわれています。
このように、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由により、新株の割当や配当を受ける権利が消滅することを権利落ちといいます。

このような事情から、被相続人が亡くなったのが権利確定日の1営業日前(権利落ち日)または権利確定日の当日である場合は、本来の株価で評価を行うため、権利確定日の2営業前の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。
配当に関しては、被相続人が亡くなったのが、3月、6月、9月、12月の最後の平日、最後から2番目の平日である場合に、権利落ちの問題が生じ、権利確定日の2営業日前の終値で評価しなければならなくなる可能性があります。

※ もちろん、業績不振等の理由により実際に配当がなされていなければ、権利落ちの問題が生じることはありません。

相続放棄と相続財産の管理義務2

このように、従来の民法では、民法940条により、相続放棄をした人が、相続放棄を行った後も、相続財産について管理義務を負うかどうかが問題となり得る場面が広かったと言えます。

もっとも、今後は、このような問題が生じ得る場面は限られてくることとなりそうです。

というのも、令和3年(2021年)の民法改正により、すでに民法940条の改正がなされており、令和5年4月1日以降、改正法の施行が予定されているためです。

このため、令和5年(2023年)4月1日以降は、改正後の民法940条の規定により、相続放棄を行った人の管理責任が決まることとなります。

それでは、改正後の民法940条では、どのような規定がなされているのでしょうか?

改正後の民法940条の条文は、以下のとおりです。

民法940条1項 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

改正に伴う変更点は複数ありますが、ここで着目したいのは、相続財産を保存する義務の範囲が、相続放棄の時に現に占有している財産に限定されているということです。

裏返せば、現に占有している財産でなければ、相続放棄をした人は、相続財産を保存する義務を負わないこととなります。

相続放棄の時に現に占有している財産というと、たとえば、相続放棄の時点で現に居住したり、使用収益(第三者への賃貸を含む)したりしている不動産が該当することとなります。

裏返せば、現に居住したり使用収益したりしていない不動産については、保存の義務を負わないこととなります。

また、相続時点で居住したり使用収益したりしていた不動産であったとしても、相続放棄を行うまでに退去したり使用収益を停止したりした場合には、保存の義務を負わないこととなりそうです。

このように、改正後の民法940条の施行後は、相続放棄をした人が相続財産を保存する義務を負う場面は、かなり限定されることとなりそうです。

このため、改正法の施行後は、相続財産の管理上の心配から、新たに相続人となった人への財産の引き継ぎや、相続財産管理人の選任について、弁護士等が相談をお受けすべき場面も、少なくなる可能性があります。

この点については、改正後の運用面も含めて、注視していく必要がありそうです。

相続放棄と相続財産の管理義務1

ある人が相続放棄を行った場合には、その人は最初から相続人ではなかったものとされます。

その結果、相続放棄を行った人は、被相続人が所有していた財産を取得することができなくなる代わりに、被相続人が負っていた債務についても返済する義務を負わないこととなります。

ところで、最近では、相続放棄を行ったとしても、相続財産の管理義務を負わなくなるわけではないという話がなされることがあります。

最近でも、相続放棄を行った後も財産の管理義務を負うのではないかということを心配されて、弁護士に相談に来られる方がいらっしゃいます。

これは、民法940条1項が、以下のとおり定めているためです。

民法940条1項 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

このように、相続放棄をした後も、相続財産を管理する義務を負わなければならないとされている以上、相続放棄をした後に相続財産について何らかの問題が発生した場合には、相続放棄をした人が法的責任を負うこととなるのではないかということが懸念されるところです。

具体的には、相続放棄後をした後に、相続財産である建物が倒壊したり、火災が発生したりし、近隣住民に損害が生じた場合には、相続放棄をした人が、管理義務を怠ったことを理由として、損害賠償義務を負うこととなるのではないかということが懸念されます。

このような理由から、損害賠償義務を負うことを心配されて、相続放棄をした後の財産管理について相談に来られる方が、しばしばいらっしゃいます。

前提として、民法940条については、以下の解釈がなされています。

① 民法940条は、相続放棄をした人が、相続放棄により新たに相続人となった人との関係で、相続財産を管理する義務を負うものとしているに過ぎないものである。新たに相続人となった人以外との関係で、相続放棄をした人が管理義務を負うことはない。

② 民法940条は、相続放棄をした人が、相続放棄により新たに相続人となった人だけではなく、それ以外との関係でも、相続財産を管理する義務を負うものとしているものである。

①の解釈だと、建物の倒壊や火災により、近隣住民に損害が生じた場合については、相続放棄をした人は、近隣住民との関係では損害賠償義務を負わないという結論になりそうです。

②の解釈だと、相続放棄をした人は、近隣住民との関係でも、損害賠償義務を負うこととなりそうです。

このように、民法940条の解釈次第では、相続放棄をした人が近隣住民に対する損害賠償義務を負うかどうかについての結論が変わってくることとなります。

この点について、裁判所の判断が集積しているわけではなく、①と②のどちらの解釈になるかは、不確定な部分があります。

このため、万全を期するという観点からは、近隣住民との関係でも損害賠償義務を負う可能性があるとの前提のもと、対処策を検討するのが良いのではないかと考えられるところです。

相続放棄後の対処策としては、相続放棄により新たに相続人となった人に連絡し、財産の管理の引き継ぎを行うことが考えられます。 また、相続放棄により相続人が存在しないこととなる場合には、相続財産管理人を選任し、相続財産管理人に財産の管理を引き継ぐことが考えられるところです。

上場株式の相続税評価

1 上場株式の評価方法
上場株式が相続財産に含まれている場合には、銘柄ごとに相続時点の評価を算定する必要があります。
上場株式については、刻一刻と値動きしますので、いつの時点の価格で評価すべきかが問題になります。

上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額について、相続税が課税されることとなっています。

・ 被相続人が亡くなった日の終値

・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均

2 被相続人が亡くなった日の終値
被相続人が亡くなった日の終値については、ヤフーファイナンスのホームページの、時系列で確認することができます。

それでは、被相続人が亡くなった日が土日祝日であり、取引がなされていない日である場合は、どうなるのでしょうか?

亡くなった日が土日祝日で、取引のない日である場合は、被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値で評価します。
たとえば、被相続人が亡くなった日が土曜日であり、金曜日が平日でしたら、金曜日の終値で評価します。
被相続人が亡くなった日が日曜日であり、月曜日が平日でしたら、月曜日の終値で評価します。

被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値が2つある場合は、これらの終値の平均をもって評価します。

3 被相続人が亡くなった月、その前月、前々月の終値の平均
被相続人が亡くなった日の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均については、日本取引所グループのホームページの、月間相場表(投信等相場表)で確認することができます。
なお、月間相場表(投信等相場表)に記載された終値の平均については、小数点以下の部分を切り捨てた上で、株数を乗じる計算を行うことができます。

4 最後に
このように、上場株式については、月毎の平均額を参照するという独特の方法で相続税評価を行うこととなっています。
したがって、相続税申告書に記載されている価格は、必ずしも、相続開始日の評価額ではないこととなります。
この点については、税理士は熟知していますが、弁護士は必ずしも熟知していません。
このため、訴訟においても、相手方の弁護士が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格=相続開始日の評価額」であるとの主張を行い、当方が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格≠相続開始日の評価額」であるとの指摘を行うといったやり取りを行うことが、しばしばあります。

障害者控除と相続税

1 障害者控除とは
相続人や受遺者(遺言により遺贈を受けた人)が障害者である場合には、その相続人や受遺者に課税される相続税が一定額軽減されます。
障害者が生命保険金の受取人に指定されている場合も、生命保険金のうち非課税限度額を超える部分について課税される相続税は一定額軽減されます。
このような制度を障害者控除といいます。

2 障害者控除の要件
障害者控除を用いることができるのは、次の要件を満たす場合です。

① 相続や遺贈により財産を取得した時点で特別障害者または一般障害者であること

② 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること

①から、相続や遺贈の時点、つまり、被相続人が亡くなった時点で特別障害者または一般障害者であることが要件になります。
特別障害者または一般障害者にあたるかどうかは、次の基準で判断されることとなります。

・ 精神障害者保健福祉手帳
1級→特別障害者
2級、3級→一般障害者

・ 身体障害者手帳
1級、2級→特別障害者
3級、4級、5級、6級→一般障害者

・ 療育手帳
重度の知的障害者→特別障害者
上記以外の知的障害者→一般障害者

・ 寝たきりの状態にある者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 障害のある65歳以上の者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(成年被後見人を含む)
特別障害者

②から、障害者が法定相続人である場合に限り、障害者控除を用いることができることとなります。
なお、相続放棄が行われた場合であっても、相続放棄がなかったものとして、法定相続人に当たるかどうかが判断されることとなります。
このため、法定相続人である障害者が相続放棄を行ったとしても、障害者控除を用いることができることとなります。

3 障害者控除の額
障害者控除により、相続税が以下の金額で減額されることとなります。
障害者控除は、いわゆる税額控除に該当し、控除額がそのまま相続税が差し引かれることとなりますので、大きく相続税が減額される可能性があります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×20万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×10万円

※ 相続や遺贈の時点の年齢については、1年未満の端数は切り捨てとなります。

たとえば、被相続人が亡くなった時点で35歳10か月であった場合、相続の時点の年齢は切り捨てにより35歳になりますので、以下のとおりとなります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-35歳)×20万円=1000万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-35歳)×10万円=500万円

このように、障害者控除は、大きな税額軽減の効果がありますが、見逃されがちな制度でもあります。
三重県の案件でも、当法人が関与する前の段階では、障害者控除を見逃して申告がなされていることが時々あります。
このような場合には、当法人において、更正の請求を行い、相続税の還付のお手伝いをさせていただくこともあります。

4 障害者控除額が障害者に課税される相続税額よりも大きく、余りが生じる場合
上記により計算された障害者控除額が、障害者に課税される相続税額よりも大きく、控除額の余りが生じることがあります。
このような控除額の余りは、さらに、障害者の扶養義務者に課税される相続税から控除することができます。
扶養義務者は、以下のとおりです。

・ 配偶者

・ 直系血族

・ 兄弟姉妹

・ 3親等内の親族のうち、家庭裁判所が扶養義務を負わせた者

たとえば、障害者に課税される相続税額が200万円であり、障害者控除額が500万円でしたら、300万円の控除額の余りが生じることとなります。
この300万円の控除額の余りは、さらに、配偶者、直系血族、兄弟姉妹等に課税される相続税から控除することができます。

建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合の相続税

1 建物更生共済と相続税
建物更生共済は、契約者名義の建物や家財について火災や自然災害による損害が生じた場合に、共済金の支払がなされる共済契約です。
機能としては、損害保険と類似しています。

ただ、建物更生共済契約には、通常の損害保険と異なる部分があります。
通常の損害保険は、掛け捨てですので、解約したとしても解約返戻金がほとんど発生しないことが多いですし、満期が到来したとしても満期共済金の支払がなされないことが多いです。
他方、建物更生共済の場合は、解約すると解約返戻金を受け取ることができますし、満期が到来すると満期共済金を受け取ることができます。

このように、建物更生共済については、契約に基づいて一定の支払がなされるという意味において、資産性があります。
このため、被相続人が建物更生共済の契約者になっていた場合には、相続税の課税対象になることとなります。
この場合、相続人は、仮に建物更生共済を解約したときには、解約返戻金を受け取ることができる法的地位を引き継ぐこととなりますので、相続時点の解約返戻金額について、相続税が課税されることとなります。

三重県の案件では、建物更生共済についても、極めて頻繁に登場しますので、注意が必要な財産になります。

2 建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合
それでは、被相続人が、建物更生共済の契約者にはなっていなかったものの、建物更生共済の掛金の負担者になっていた場合には、どうなるのでしょうか?
上記と同様に、相続税の課税がなされることとなるのでしょうか?

生命保険の場合は、被相続人が、生命保険契約の契約者になっていなかったものの、生命保険料の負担者になっていた場合には、負担した割合に応じて、被相続人が契約者になっていた生命保険と同様の課税がなされることとなっています。

他方、損害保険の場合は、被相続人が掛金の負担者になっていた場合に、被相続人が契約者になっていた損害保険と同様の課税がなされると定めている規定は存在しません。
このため、被相続人が掛金の負担者になっていたに過ぎない場合は、ただちに、相続税の課税がなされるわけではないということになりそうです。
ただ、毎年、被相続人が支払っていた掛金について、被相続人から規定の契約者への贈与がなされていたのみであることとなります(このため、被相続人が亡くなる3年前から、被相続人が亡くなるまでに生じた掛金については、相続開始前3年以内の贈与加算の対象になります)。

もっとも、建物更生共済契約についての手続が専ら被相続人との間でなされており、契約者自身は、手続にはほとんど関与しておらず、契約内容すら把握していないような場合には、結論が異なってくるでしょう。
このような場合には、被相続人が契約者の名義を借りていたに過ぎず、実質的には被相続人が契約者であるとの判断がなされ、建物更生共済契約が相続税の課税対象になる可能性があるでしょう。

JA共済と相続税

1 JA共済も相続税の課税対象になることがある
被相続人がJAに貯金を有していた場合には、被相続人がJA共済に加入していたかどうかを確認した方が良いでしょう。
三重県の相続税の案件では、JA共済に加入されている例も多いです。

JA共済は、組合員が共済掛金を拠出して共同の財産を準備しておき、不測の事故(死亡、入院、火災、自然災害等)があった場合には、共済金を支払うこととしているものです。
機能としては、保険と類似しています。

共済の加入の有無については、一定の書類を提出した上でJAに問い合わせを行うことで確認することができます。
また、通帳に共済掛金の引落の記載があれば、共済に加入している可能性があります。

被相続人がJA共済に加入している場合には、JA共済について相続税の課税がなされるかどうかに注意する必要があります。
どのような課税がなされるかは、共済の種類によって違ってきます。
以下では、相続税申告の場面で注意が必要なものをまとめたいと思います。

2 生命共済
被共済者が亡くなった場合に、共済金の受取人に共済金が支払われるものです。
生命保険と同様のものになりますので、生命保険と同様に相続税の課税がなされることとなります。

被相続人が被共済者になっており、被相続人が亡くなったことにより生命共済金の支払がなされた場合には、生命保険金と同様に相続税が課税されます。
したがって、相続人が共済金を受け取った場合には、500万円×法定相続人数までは相続税が非課税となりますが、これを超える場合は超える部分に限って相続税が課税されます。
相続人ではない人(相続放棄をした人を含む)が共済金を受け取った場合は、共済金の全額が相続税の課税対象になります。

他方、被相続人以外の人が被共済者になっている場合には、被相続人が亡くなった時点では共済金の支払がなされません。
ただし、生命共済契約を解約した場合には、解約返戻金を受け取ることができます。
このため、相続の発生により、仮に生命共済契約を解約すれば、解約返戻金を受け取ることができる地位を引き継いだものと評価されることとなります。
結局、生命保険契約に関する権利と同様、被相続人が亡くなった時点での解約返戻金額について、相続税が課税されることとなります。

なお、被相続人自身が共済の契約者になっていなかったとしても、共済の掛金を引落が被相続人の口座からなされていた場合には、上記と同じく、相続税が課税される可能性がありますので、注意が必要です。

3 医療共済
共済の契約者が一定の疾病に罹患したり入院したりした場合に、共済金の支払がなされるものです。
医療共済は、基本的には、共済の契約者自身が共済金を受け取る権利を有しています。

被相続人が医療共済の契約者になっており、医療共済金の受取人になっていた場合は、医療共済金は、被相続人自身の財産になります。
したがって、医療共済金は、一般的な財産と同様、相続の課税対象になります。

4 建物更生共済
建物更生共済は、共済の契約者名義の家屋や家財について、火災や自然災害による被害があった場合に、共済金の支払がなされるものです。
通常の損害保険とは異なり、解約すると、解約返戻金が返還され、満期になると、満期共済金の支払がなされます。

被相続人が建物更生共済に加入していた場合には、相続により、仮に建物更生共済契約を解約すれば、解約返戻金を受け取ることができる地位を引き継いだものと評価されます。
このため、生命保険契約に関する権利と同じ考え方により、被相続人が亡くなった時点での解約返戻金額について、相続税が課税されます。

JA貯金が存在する場合の相続税申告

1 JA貯金が存在する場合
相続税申告にあたっては、被相続人名義のすべての預貯金口座を確認し、申告書に記載する必要があります。
被相続人がJAに貯金を有していた場合も、JAの貯金を相続財産として申告書に記載することとなります。
三重県でも、多くの案件で、JAの貯金が相続税の課税対象になっています。

ところで、被相続人がJAに貯金を有していた場合は、何点か、注意しなければならないことがあります。
この点について、以下でまとめたいと思います。

2 貯金を網羅的に記載する
JAの貯金には、様々な種類があります。
申告書には、これらの貯金を網羅的に記載する必要があります。

まず、普通貯金、定期貯金が存在する可能性があることは、他の金融機関と同様です。

これら以外に、JAの口座には、貯蓄貯金、定期積金が存在する可能性があります。
貯蓄貯金は、残高が10万円未満ですと普通貯金と同じ低い利率になりますが、残高が10万円以上になると利率が高くなる貯金です。
定期積金が毎月定期的に一定額の積立がなされる貯金です。
これらについても、相続財産に含まれますので、申告書に記載する必要があります。

3 出資金に注意する
被相続人がJAの貯金を有している場合には、被相続人が出資金を有している可能性があることに注意した方が良いでしょう。

被相続人がJAに出資金を払い込み、JAの組合員になっていることがあります。
この場合、被相続人が亡くなると、脱退して出資金を払い戻すか、一定の条件を満たす相続人に出資金を引き継ぐことができます。
いずれにせよ、出資金も相続財産に該当しますので、申告書に記載する必要があることとなります。

出資金の有無は、一定の書類を提出した上でJAに問い合わせると確認することができます。
また、出資金を有していると、毎年、JAの普通貯金口座に出資配当金が振り込まれていますので、通帳に出資配当金の振込の記載があるがどうかによっても確認することができます。

4 共済に注意する
JAに貯金を有している場合には、JA共済に加入している可能性があります。
JA共済は、保険と同様の位置付けのものになりますが、様々な種類のものがあります。
それぞれの共済の種類によって、生命保険金と同様の課税(500万円×法定相続人数の非課税限度額がある)がなされたり、生命保険契約に関する権利またはその他の財産として課税がなされたりします。