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相続法改正(配偶者居住権)1

改正相続法では,新たに,配偶者居住権を創設することが予定されています。
配偶者居住権に関する条文は,以下のとおりです。

改正民法1028条
被相続人の配偶者は,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において,次の各号のいずれかに該当するときは,その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

このように,被相続人の配偶者は,①遺産分割によって居住権を取得するものとされたときか,②居住権が遺贈の目的とされたときには,自宅不動産の居住権を取得することができるとされています。

さらに,改正民法1028条3項は,婚姻期間が20年以上の夫婦の場合は,配偶者の居住権の取得について,持ち戻し免除の意思表示がなされたものと推定するとの規定を置いています。
たとえば,相続人が配偶者と子の2名であり,遺産総額が2000万円,配偶者居住権の評価額が1000万円の場合があったとします。
この場合,配偶者の相続分は2分の1ですので,改正民法1028条3項がなければ,配偶者は,1000万円の居住権を取得すると,その他の遺産(預貯金等)を取得することができなくなってしまいます。
この点,改正民法1028条3項が新設されると,居住権については持ち戻し免除の意思表示がなされたと推定されますので,配偶者は,その他の遺産(預貯金等)について,さらに2分の1を取得することができることとなります。

このように,改正民法1028条3項は,居住権以外の遺産について,配偶者の権利主張ができる範囲を拡大し,配偶者の生活保障を行うことを意図するものです。
現行の審判例では,多くの事案において,黙示の持ち戻し免除の意思表示がなされたとの認定が行われていますので,持ち戻しの免除の意思表示がなかったことを証明することは,事実上困難であるように思います。このため,改正民法1028条3項は,文言上は推定規定ですが,みなし規定に近いものと扱われるのではないかと思います。

このように,改正民法は,婚姻期間20年以上の配偶者が,遺産分割によって居住権を取得したときには,居住権について持ち戻し免除の意思表示がなされたとの推定を行うこととしています。
ここで疑問となってくるのは,たとえば,遺産分割調停・審判において,婚姻期間20年以上の配偶者が自宅不動産を取得する場合に,居住権相当額につき,持ち戻し免除の推定規定が及ぶかどうかということです。
遺産分割により自宅の居住権を取得した場合については,改正民法1028条3項の規定が及ぶことは明らかですが,遺産分割により自宅そのものを取得した場合には,同項の規定が及ぶかどうかについては,定かではありません。

この場合についても,居住権相当額について持ち戻し免除の意思表示がなされたとの推定がなされなければ,アンバランスになるように思います。
反面,居住権相当額が広く持ち戻し免除の意思表示の推定の対象になると,多くの調停・審判手続において,持ち戻し免除の対象にならない部分(自宅の評価額-居住権の評価額)がいくらであるかを算定して遺産分割を行わなければならないこととなってしまいます。調停・審判において,不動産の評価方法につき,相続人のコンセンサスを得られず,手続が紛糾し,長期化することも多い中で,さらに居住権の評価も行わなければならないとなると,さらに手続が紛糾し,長期化する結果を招くこととなりかねません(相続法改正の部会資料には,「賃借権の評価額+(賃借権の評価額×存続期間-中間利息)」の計算式により算定できるとの記載もありますが,賃借権の評価方法や存続期間をどのように算定するかは,明らかではありません)。

この点も含めて,今後の弁護士の活動にも影響する部分が多々ありますので,相続法改正についての議論を注視する必要があるように思います。