相続・遺言
弁護士に相続について依頼する場合の費用
1 弁護士に相続について依頼する場面
弁護士に相続について依頼する場面には、様々なものがあります。
もっとも、大別すると、手続きを依頼する場合と、紛争における代理人を依頼する場合に分かれてきます。
それぞれの場面で、弁護士に依頼する費用の決め方も異なってきます。
ここでは、手続きを依頼する場合と紛争における代理人を依頼する場合に分けて、弁護士に依頼する場合の費用を説明したいと思います。
また、現在では、弁護士の費用の定め方は自由化されており、弁護士事務所ごとに費用の定め方はまちまちとなっています。
ここでは、1つの目安として、費用の定め方が自由化される前に用いられていた基準である、日弁連の旧規程を紹介したいと思います。
これは、自由化がなされた現在でも、日弁連の旧規程に基づいて費用を決めている事務所が比較的多いためです。
弁護士に相続について依頼する場合の費用の目安としてご覧いただければと思います。
2 手続きを依頼する場合
弁護士に相続の手続きのみを依頼する場合があります。
相続人間で遺産分割についての意見が一致している場合、有効な遺言が存在している場合には、手続きのみの依頼で完結することとなります。
日弁連の旧規程では、遺言執行費用について、以下のとおり定めていました。
・経済的利益が300万円以下の場合
30万円
・経済的利益が300万円~3000万円の場合
経済的利益の2%+24万円
・経済的利益が3000万円~3億円の場合
経済的利益の1%+54万円
・経済的利益が3億円超の場合
経済的利益の0.5%+204万円
3 紛争における代理人を依頼する場合
遺産分割についての意見がまとまらない場合、弁護士が代理人となり、相手方と交渉したり、裁判手続きを行ったりする場合があります。
また、遺言が存在する場合であっても、遺言の有効性自体が争われたり、遺留分の主張がなされたりする場合があります。
このように、弁護士が紛争における代理人として活動する場合は、民事事件についての基準が用いられます。
日弁連の旧規程では、民事事件の費用について、以下の定めを置いていました。
・経済的利益が300万円以下の場合
着手金:経済的利益の8%
報酬金:経済的利益の16%
・経済的利益が300万円~3000万円の場合
着手金:5%+9万円
報酬金:10%+18万円
・経済的利益が3000万円~3億円の場合
着手金:3%+69万円
報酬金:6%+138万円
・経済的利益が3億円超の場合
着手金:2%+369万円
報酬金:4%+738万円
着手金とは、弁護士が代理人としての活動を開始するにあたり、発生する費用です。
この段階では、経済的利益は、相手方に請求する金額をベースに計算します。
報酬金は、事件の解決時に発生する費用です。
経済的利益については、裁判所が認めた金額や相手方から回収できた金額をベースに計算します。
ただし、日弁連の旧規程は、相続案件では、経済的利益のうち、相続分の範囲内であり、かつ、相続分について争いがない部分については、経済的利益に3分の1を乗じるとの減額調整を行うものとしていました。
相続で弁護士に相談するとよい場合
1 相続問題の多様性
相続では、様々な問題が発生します。
まず、相続人が誰かを特定して、相続財産についての調査を行う必要があります。
そして、相続財産の分割方法についての話し合いを行い、誰がどの財産を取得するかを決める必要があります。
分割方法が決まったあとには、合意内容を書面で明確にしておくべきでしょう。
その後、不動産の登記手続や預貯金の払戻手続、株式や投資信託の換金手続等を行う必要があります。
それでは、これらの問題について、弁護士に相談した方が良いのは、どのような場合でしょうか?
2 弁護士に相談した方が良い場合
結論としては、意見の対立がある場合、意見の対立が発生する可能性がある場合には、弁護士に相談するべきでしょう。
意見の対立が存在せず、合意に基づいて相続の手続を進めることができる場合には、法的な問題を検討する必要は少ないと言えます。
他方、意見の対立が存在する場合には、法的にはどのような解決となる可能性が高いのかを検討し、これをベースに話し合い等を行う必要が出てきます。
また、話し合いによる解決が困難な場合は、調停等の手続を利用することを検討する必要も出てきます。
このため、意見の対立がある場合や意見の対立が発生する可能性がある場合には、弁護士に相談するべきであることとなります。
また、意見の対立がない場合であっても、合意内容を書面で明確にしなければ、スムーズに相続手続を進めることはできません。
このような合意内容を記載した書類は、遺産分割協議書と呼ばれます。
遺産分割協議書では、合意内容が一義的に明確に記載されていなければ、その後の手続を進めることができないおそれがあります。
このように、疑義のない法的文書をきちんと作成する場合には、法律の専門家である弁護士に相談するのが望ましいと言えます。