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養老保険が遺産分割の対象になる場合3

前回紹介したとおり,以下のような保険契約が存在する場合は,解約返戻金相当額の遺産として扱われ,遺産分割の対象になります。
・ 保険契約者  亡くなられた方
・ 被保険者   親族
・ 保険金受取人 亡くなられた方

ところが,養老保険については,遺産分割が成立したとしても,上記のような保険の解約返戻金を受け取ることができない場合があり,さらなる注意が必要になります。
養老保険には,満期が設定されており,満期が到来すれば,満期保険金の受取人として指定された方は,満期保険金を受け取ることができます。
このように,満期保険金が発生してしまうと,相続人の1人が遺産分割により解約返戻金を取得することとなったとしても,もはや解約することができず,解約返戻金の支払を受けることができない可能性があります。

この点で問題になりやすいのが,簡易生命保険です。
簡易生命保険のうち,養老保険に分類されるものについては,満期保険金の受取人が,以下のとおり定められています(簡易生命保険法55条)。

終身保険,定期保険,養老保険又は財形貯蓄保険の保険契約においては,保険契約者が保険金受取人を指定しないとき(保険契約者の指定した保険金受取人が死亡し更に保険金受取人を指定しない場合を含む。)は,次の者を保険受取人とする。
   被保険者の死亡以外の事由により保険金を支払う場合にあっては,被保険者

上記の規定に従えば,保険契約者が亡くなられた場合は,別の保険金受取人が指定されない限り,被保険者が満期保険金を受け取ることができることとなります。
この点につき,相続人が受け取ることができるのではないかと主張し,争いになった裁判も存在しますが,規定どおり,被保険者が受取人になるとの判決が出されています。
以上から,満期が到来している簡易生命保険については,被保険者が満期保険金を受け取ることができることとなり,反面,遺産分割により簡易生命保険の解約返戻金を取得することとなった相続人がいたとしても,その相続人は,簡易生命保険を解約できす,解約返戻金を受け取ることができないこととなるのです。

他方,保険契約者が亡くなられる前に満期が到来し,満期保険金が発生している場合は,保険金受取人が保険契約者に設定されている場合だと,保険契約者が満期保険金の支払を受ける権利を持っていることとなります。
その後,保険契約者が死亡すると,満期保険金の支払を受ける権利は,保険契約者の相続人が相続することとなります。
この場合は,相続人全員が同意すれば,満期保険金の支払を受ける権利を遺産分割の対象とすることもできることとなります。

このように,満期がいつ到来するかによって,満期保険金等を受け取るのが誰であるのかが,大きく異なってくることとなります。
場合によっては,遺産分割の対象にしたのに,簡保からなんらの支払も受けることができない事態になることもありますので,遺産分割を成立させる際には,満期を確認する必要があると言えます(私の場合は,弁護士会照会等で保険契約の内容についての調査を行う段階で,満期の有無,時期等を確認するようにしています)。

養老保険が遺産分割の対象になる場合2

前回,紹介した場合とは異なり,以下のような保険契約が存在する場合は,注意が必要です。
 ・ 保険契約者  亡くなられた方
 ・ 被保険者   親族
 ・ 保険金受取人 亡くなられた方
このような保険は,所得税対策(生命保険料控除)等のため,契約されることがあります。
また,簡保や保険会社の勧めにより,このような契約がなされることもあります。
このような保険が存在する場合に,相続が発生すると,どのようなことが起きるのでしょうか。
被保険者が存命であれば,保険金の支払事由が発生していないことになりますので,相続開始後も,保険契約が存在したままになり,保険金が支払われないこととなります。
もっとも,保険契約者が亡くなられた以上,保険契約者の地位は相続人に引き継がれることとなり,相続人は,保険契約者として,生命保険を解約することができます。生命保険が解約されると,相続人は,保険の解約返戻金を受け取ることができます。
このように,上記のような保険は,解約すれば解約返戻金を受け取ることができる権利と扱われ,亡くなられた方の遺産と扱われます。

このような保険契約が組まれている場合には,保険の解約返戻金を調査し,解約返戻金相当額の価値がある財産として,遺産目録に挙げることとなります。
遺産分割が成立し,保険の解約返戻金を誰が取得するかが決まると,その方が保険会社とやり取りを行い,保険の解約と解約返戻金の受取の手続を行うこととなります。

このように,被保険者が誰であるかにより,生命保険契約を遺産目録に載せるかどうかが違ってくることとなります。
この点は間違いやすいポイントだと思いますので,弁護士と相談の上,遺産目録に載せるべきかどうかを判断した方が良いでしょう。