登記簿上の住所2

被相続人と登記簿上の名義人とが同一人物かどうかが問題となるのは,登記簿上に記載された名義人の住所が,被相続人の住所とずれている場合です。
パターンとして多いのは,生前に住所の変更があったにも関わらず,登記簿上に記載された住所を変更しなかった場合です。
登記簿に記載された住所と実際の住所との間にずれがあったとしても,普段の生活には特段の不都合が生じないため,登記簿に記載された住所が昔の住所のままになっていることは,しばしばあります。
このように,登記簿に記載された住所と,被相続人の(住民票等の)住所がずれてしまっている場合,どのようにして,登記簿に記載された名義人と被相続人とが同一人物であると証明するかが,問題となることがあるのです。

それほど手間がかからないのは,住民票等の住所の移転の流れを証明することです。
たとえば,本籍を移さずに住民票を移した場合は,戸籍の附票を取得すれば,住民票上の住所の動きを明らかにすることができます。
このような場合は,戸籍の附票を提出すれば,登記簿上の(転居前の)住所と,(転居後の)被相続人の住所とのつながりを証明することができます。

他方,登記簿上の住所が記載されて以降,本籍が移転している場合は,新しい本籍の戸籍の附票だけでは,住民票の動きを確認することができません。
このような場合は,古い本籍についても,附票(除籍の附票,改正原戸籍の附票等)を取り寄せ,登記簿上の住所が記載されて以降の住民票の動きを明らかにする必要があります。

このパターンであれば,市区町村役場から数枚の書類を取り寄せれば済むことですので(弁護士であれば,職務上請求で取り寄せることができます),あまり問題はありません。

登記簿上の住所1

遺産分割の件を扱う場合は,協議書や調停調書をまとめる際,登記ができるものになっているかどうかを確認しておく必要があります。
遺産分割のゴールの1つは,名義変更を行うことです。
弁護士として事件にかかわる以上,ゴールまでの道筋に関与するのが求められるところだと思います。

相続の登記を行うに当たり,しばしば問題となるのが,登記簿上の名義人と被相続人が,同一人物かどうかということです。
当事者や事件を進める側からすると,同一人物であることは当たり前だと言いたくなることもある部分ですが,登記を行う場合には,同一人物であることが間違いないという確証を示さなければならないのです。

登記簿上の名義人と被相続人が同一人物かどうかを判別する重要な要素は,住所です。
登記簿をご覧になると分かりますが,登記簿には,名義人の住所が記載されています。
登記簿上の住所は,基本的に,住民票等の住所が記載されることとなります。
たとえば,名義人が土地を取得したときに,その時の住民票等を提出し,住民票等に記載された住所が登記簿に記載されることとなるのです。
その後,名義人が住所を変更した場合には,新住所の住民票等を提出し,住所変更の登記申請を行い,新しい住所を登記簿に反映することとなるのです。

このように,住所が変更される毎に,住所変更の登記の手続を行えば,結局,被相続人の死亡時点の(住民票等の)住所と登記簿上の住所が一致することとなります。
この場合は,住民票等を提出すれば,被相続人と登記簿上の名義人が同一人物であるということが分かりますので,相続の登記を進めることができることとなるのです。

土地の形状の把握

普段,土地を使用している分には,土地の正確な形状を把握しなければならないことは,それ程多くないと思います。
弁護士として,不動産の問題にかかわる場合や,税金の申告(相続税申告,贈与税申告等)のため,不動産の評価を行う場合には,土地の形状を把握しなければならないことがあります。

地籍測量が行われた土地については,現地へ行って,境界標等を確認すれば,境界がどこにあるかを確認することができます。

図面上で形状を把握したい場合は,最初に,地積測量図の有無を確認することが多いです。
分筆された時期が新しい土地等については,地積測量図が作成され,法務局で土地の図面を取得することができます。
法務局の登記情報提供サービスのホームページでも,1件当たり367円で地積測量図を取得することができます(松阪市にいながら,全国の土地の図面を取得することができます)。

地積測量図が作成されていない場合は,土地上の建物について,建物図面が作成されていないかを確認することが多いです。
建物図面で土地の形状が分かるのかと思われるかもしれませんが,建物図面には,建物の各階の形状だけでなく,土地上のどこに建物が建っているかも記載されています。
土地の形状が記載された図面の上に,建物の形状が記載されているのです。
このため,建物図面を確認すれば,それなりに正確な土地の図面を入手することができます。

建物図面も作成されていない場合には,基本的には,公図を参考にしていくこととなります。
ただ,公図については,宅地であっても,形状が歪んでいる場合等があり,信頼性が劣ると考えざるを得ない場合があります。
どうしても正確な図面が必要な場合には,幾分かの費用を支払い,測量を依頼することになると思います。

 

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不動産がある場所の特定3

不動産の所在場所を確認するに当たり,最も悩ましいのは,山林の場合だと思います。
山林の場合,公図に書かれた形状,位置関係等は,多くの場合,まったくあてになりません。
登記簿に書かれた地積についても,三重県では,縄伸び,縄縮みが目立ち,正確な面積が記載されていません。

弁護士業務としては,林業を営んでいる場合でもない限り,山林の正確な位置を把握する必要があることは,あまりありません。
山林自体が放置されていることが多く,当事者の関心事になることが少ないからです。

他方,相続税申告に際しては,山林上に存在する樹木は,立木と扱われ,評価対象にしなければならないことがあります。
原野等が山林になってしまった場合や,いわゆる雑木林の場合は,仮に立木を評価したとしても,評価額が0円になってしまうことが多いと思いますので,あえて立木を評価する必要もないと思いますが,杉や檜等が生育している場合は,材木として売買されること等を想定し,評価を行う必要があります。
現に林業を営んでおらず,仮に林業を営んだとしても赤字になることが想定されるとしても,正面から評価を行わなければならないのです。
このため,山林の所在場所をある程度特定し,立木が評価の対象になるかどうか等の目星をつける必要があることになるのです。

山林の場合は,各都道府県で,森林簿,森林基本図等が作成されています。
三重県でも,県庁の森林・林業経営課の窓口において,これらの書類を交付してもらう必要があります。
森林基本図は,山林の境界が記載された図面です。
航空写真に境界が書き込まれているため,公図よりも正確に境界を把握することができます。
森林簿は,山林の所有者(県が把握している所有者)や,立木の樹種,林齢,材積等が記載されています。
厳密には,これらの情報も,必ずしも正確ではないとの説明がなされるところですが,立木の評価等に当たっては,こうした情報が重要な参考資料になることは確かだと思います。

森林簿や森林基本図の交付を受けるに当たっては,所有者自身か,所有者の関係者であることを証明する必要があります。
代理人として取得する場合には,本人の印鑑証明も必要になります。

不動産がある場所の特定2

不動産の所在場所の特定で困るのが,農地の場合です。
農地については,地番を把握していたとしても,地図上にその地番が表示されていないことがほとんどです。
グーグルマップ等を利用しても,農地の地番については,基本的に場所を表示してもらうことができません。
法務局へ行けば,備え付けのブルーマップに農地の地番も記載されていますが,三重県外のブルーマップを確認するためには,県外の法務局へ行く必要があります(県立図書館等も,基本的に県内のブルーマップしか置いていないと思います)。

そこで,農地については,全国農地ナビ(https://www.alis-ac.jp/Doc/FarmNavi)のサイトを利用して,おおまかな情報を入手するのが便宜です。
全国農地ナビを利用すると,農地の地番から,農地の所在場所を航空写真で表示してもらうことができます。
また,農地の所在場所でだけでなく,
① その農地が農業振興地域の農用地区域内か(税務申告の際の評価倍率を特定する場合等に確認する必要があることがあります),
② 賃借権が設定されているかどうか(相続税申告に際し,賃借権割合を控除できるかどうかを判断する際,確認する必要があります)
等の情報を得ることもできます。
このようなサイトを利用すれば,松阪市にいながら,全国の農地の情報を取得することができます。

ただ,稀に,現況が駐車場であるにもかかわらず,農地と表示されていることもあります。
また,市街化区域内の場合,生産緑地に当たるかどうかについては,情報を得ることができません。
結局,情報を正確に把握するためには,インターネット上の情報だけではなく,現地の農地の状態も確認する必要があるということになりそうです。

不動産がある場所の特定1

弁護士として遺産分割の案件を進める場合や,税理士として相続税申告の準備を行う場合,遺産に含まれる不動産の現状を把握する必要があります。
多くの場合は,初回の打合せにおいて,固定資産税の納付通知書を持参される方が多く,納付書の不動産の一覧の記載によって,おおむね,特定の市町村に存在する不動産の一覧を把握することができます。

一覧に書かれた不動産のうち,宅地については,特定が容易なことがほとんどです。
多くの場合には,一覧に書かれた地番を地図等で検索すれば,宅地の場所を特定することができます。
住居表示が実施されている地域についても,法務局の登記情報提供サービスを行っているホームページをうまく利用すれば,地番から地図上の場所を特定することができます。
1つの宅地が何筆かに分かれている場合も,一覧に記載された宅地のうちのどれかを地図上で特定することができれば,公図等を利用して位置関係を把握することができます。

このように,宅地については,所在場所を特定することは,それ程難しいことではありません。

遺留分減殺請求によって何が起きるか3

相手方が預貯金の払戻を行う前に遺留分減殺請求訴訟を行う場合については,誰を被告にすべきかにつき,悩ましい問題が生じます。

遺留分の制度の理屈からいうと,遺留分を侵害する限度において,請求する側が預貯金等を取得することとなります。
そして,相手方が預貯金等を払い戻していない場合は,預貯金等が金融機関等に残されたままになっているわけですから,請求する側は,金融機関等に対し,預貯金等のうち,遺留分に相当する分の払い戻しを請求すべきであるということになりそうです。
ただ,請求のされた銀行の側は,相続問題自体には何らの関与のしていないわけですから,遺留分減殺請求をされたところで,事情が分からないと答えるしかないと思います。
特に,遺留分を請求する側か,される側に対する生前贈与があるとの主張がなされており,遺留分が単純に法定相続分×2分の1か3分の1にならない場合は,裁判所が生前贈与の有無を判断しなければならないですが,銀行は,通常,生前贈与があったかどうかについての情報を何も持っていません。
結局,遺言で財産を受け取ることとなった相続人が,実際の紛争の相手方になるわけですから,遺言で財産を受け取ることとなった相続人を呼ばなければ,裁判を進めることができないということになるのです。
このため,銀行を被告として遺留分相当額の預貯金の払戻請求を行った場合には,遺言で財産を受け取ることとなった相続人を訴訟手続に参加させる手続が取られることとなるのです。

このように考えて行くと,そもそも,最初から,銀行を被告として預貯金の払戻請求をするのではなく,遺言で財産を受け取ることとなった相続人を被告として裁判をした方が,早いのではないかという気持ちになってきます。
実際,預貯金が払い戻されていない場合であっても,遺言で財産を受け取ることとなった相続人を被告とし,預貯金の遺留分相当額の支払請求をするとの内容の訴訟がなされている例もあるようで,そのまま判決に至っている例も散見されます。
遺留分の制度の理屈からすると,しっくり来ない部分ですが,紛争の実体からすると,こちらの方がむしろ自然であるように思います。

私自身,弁護士になってから,何度か,預貯金が払い戻されていない事案で,遺言で財産を受け取ることとなった相続人を被告として訴訟をしたことがあります。
今のところ,裁判所から,この点で指摘を受けたことがないですが,類似する事案になった場合には,その都度,疑問を感じつつも,手続を進めている部分です。

遺留分減殺請求によって何が起きるか2

遺留分減殺請求の効果について,もう一つ悩ましいのは,相手方が預貯金等の払い戻しの手続を完了していない場合です。

相手方が預貯金等の払い戻しを完了していない場面は,実務では,思いのほか多いです。
たとえば,相手方が預貯金等の存在を失念している場合があります(農協の定期積金,建物更生共済等の見逃しが多いように思います)。

他にも,預貯金以外の財産があまりない場合,相手方が預貯金等の払い戻しを行ってしまうと,後日,遺留分減殺請求をしたとしても,相手方が払戻金を使い切ってしまい,遺留侵害額に相当する金銭を取り戻せるかどうかが不安になることがあります。
この場合,相手方が遺言に基づき預貯金等を払い戻す前に,金融機関等に対し,相手方の払い戻しに応じないでほしいとの内容の通知書を送付することがあります。
金融機関等は,遺留分減殺請求を行った側からの通知があると,払い戻しを行わないという対応を取ることもあるようです(遺言執行者からの払い戻しについて,事業承継協議会事業承継関連相続法制検討委員会で,同内容の検討がなされているようです)。

遺留分減殺請求によって何が起きるか1

被相続人が,遺産の全部を,自分以外の相続人に全部相続させる内容の遺言を作成していたとします。
この場合,被相続人の遺産は,法律上は,当然に,遺産を取得するものとされた相続人に引き継がれることとなります。

このとき,遺産を取得できなかった相続人からは,遺留分減殺請求を行い,遺留分に相当する権利を主張することが考えられます。
遺留分減殺請求は,遺言で遺産を取得できなかった相続人に対し,少なくともここまでという形で権利を保障する,最後の砦になるのです。

私自身,遺留分減殺請求をする側の事件は,何件か担当していますが,相談された方に説明する際,毎回悩ましいのが,遺留分減殺請求を行うことによって,何が起きるのか(どのような法的効果があるのか)です。
多くの方は,遺留分減殺請求をすることにより,相手方が「遺産の総額×遺留分」の金銭を支払う義務を負うことになると思われています。

実際には,遺留分減殺請求を行うだけでは,当然に,相手方が金銭を支払う義務を負うこととなるわけではありません。
結論としては,遺産を構成する個々の財産について,遺留分が侵害されている割合に応じ,請求する側が権利を得ることとなるのです(法的には,やや語弊がある表現を用いています)。

遺産が現金や預貯金等(いわゆる金融資産)であり,相手方が現金や預貯金等を払い戻し済みである場合は,遺留分が侵害されている割合に応じて請求する側が権利を取得することとなるわけですから,請求する側に対して現金や預貯金を引き渡さなければならないことになります。
この場合は,さほど,一般的なイメージとの齟齬はないと思います。

他方,遺産が不動産である場合は,個々の不動産について,遺留分が侵害されている割合に応じ,請求する側が不動産の共有権を取得することとなるのです。
この場合は,不動産の共有権を取得することとなるのですから,当然に,金銭の支払を求めることができるわけではありません。
金銭の支払による解決を行うためには,相手方と和解的な解決を行うか,相手方が金銭の支払による解決を希望する意思表示(価額弁償の意思表示)を行うかしかありません。
請求する側が不動産の共有権の取得を望まなかったとしても,遺留分の制度の性質上,避けられないのです。

もちろん,実際には,遺産を取得する側が不動産を共有することを望まないことが多いですので,相手方から,金銭の支払による解決の意思表示(価額弁償の意思表示)がなされることが多いと思います。
ただ,たまに,相手方が価額弁償の意思表示を行うことなく判決になる事例もあり,このような場合には,相手方と当方とで不動産を共有することとなってしまうのです。
遺留分減殺請求の事件が終了した後に,別途,共有物分割の手続を取る必要があることもあります。
そして,このような可能性がある以上は,相談された方に対して,事前に説明を行っておく必要がありますので,ある程度時間を割いて,遺留分減殺請求によって何が起きるのかについて,説明をさせていただくこととなるのです(弁護士会の相談等,時間が30分に限られている場合は,詳細に説明を行うのが厳しいことも多いですが)。

遺言と登記4

清算型遺言を行う際に,次のような定めを置いたとします。
「遺言執行者は,前項の不動産を売却処分する権限を有する。」

このように,遺言執行者が不動産を売却処分する権限を有することを明記した場合は,次の通り手続を進めることができるとされています。
① 被相続人から相続人名義に変更するための相続登記については,遺言執行者が単独で行うことができる。
② 相続人から買主に売却する場合の登記手続については,遺言執行者と買主の共同申請により行うことができる。

このように,清算型の遺言の場合も,遺言執行者を定めることにより,相続人を手続に介在させることなく,不動産を売却するまでの手続を進めることができるようになるのです。

もちろん,相続人の権利を保護する必要がありますので,遺言執行者が不当に安値で売った場合は,善管注意義務等に基づく責任を負う(損害賠償請求される)可能性があるように思います。
また,相続人の側から遺言執行者を解任する手続をとることも考えられます。
このように,完全に遺言執行者の自由にできるというわけではないように思いますが,遺言執行者は,売却処分権限が与えられた場合には,相当の裁量の枠内で,権限を行使することができることとなるのです。
別の言い方をすれば,遺言者の遺志の実現のため,きちんとした道筋が準備されていることとなるのです。

このような手法は,相続人の関係が良好でない場合は,ニーズが高いと思います。
私自身,弁護士相談等で,不動産の売却も視野に入れた対策について質問を受けた場合には,遺言執行者についての助言を行いたいと思っています。