相続税の非課税、控除の制度②

まず、①死亡保険金の非課税、③配偶者の税額軽減の順番について説明したいと思います。
この順番は、問題となる場面が非常に多いものの、順番が意識されることなく、生前対策や申告がなされてしまっていることも多いです。

よくある「失敗例」(完全な失敗例ではなく、相対的な失敗例)は、想定の相続人が配偶者と子である場合に、死亡保険金の受取人を配偶者に指定してしまうということです。

「特定の人にしか使えない非課税、控除の制度は、複数の人が使える非課税、控除の制度よりも、優先して利用すべきである」という話を踏まえるとどうなるのでしょうか?
①死亡保険金の非課税は、受取人に指定しさえすれば、誰でも使える制度になります。受取人を配偶者に指定しても、受取人を子に指定しても、死亡保険金の非課税は利用できることとなります。
他方、③配偶者の税額軽減は、配偶者にしか使えない制度になります。
この2つを比較すると、③配偶者の税額軽減を優先して利用している状態を作った方が有利である可能性があります。
というのも、配偶者の側では、③配偶者の税額軽減を優先して利用することにより、①死亡保険金の非課税を、まるまる、他の相続人である子の側で利用することができるからです。

以上から、死亡保険金の受取人は、配偶者ではなく、子に指定した方が、相続税の額を抑えることができる可能性があることとなります。
このようにすれば、配偶者については、①死亡保険金の非課税が適用されることはなく、③配偶者の税額軽減を優先して利用することができることとなるからです。

これと同様のことは、①死亡保険金の非課税、⑤障害者控除についても言えます。
先と同様の理屈からすると、想定の相続人が障害者である人と障害者ではない人である場合に、死亡保険金の受取人を障害者である人に指定してしまうと、相続税の納付税額が増えてしまう可能性があります。
繰り返しになりますが、①死亡保険金の非課税は、受取人に指定しさえすれば、誰でも使える制度になります。受取人を障害者である人に指定しても、受取人を障害者ではない人に指定しても、死亡保険金の非課税は利用できることとなります。
他方、⑤障害者控除は、配偶者にしか使えない制度になります。
この2つについても、⑤障害者控除を優先して利用している状態を作った方が有利である可能性があります。
障害者である相続人の側では、⑤障害者控除を優先して利用することにより、①死亡保険金の非課税を、まるまる、障害者ではない相続人の側で利用することができるからです。

以上から、死亡保険金の受取人は、障害者である相続人ではなく、障害者ではない相続人に指定した方が、相続税の額を抑えることができる可能性があることとなります。
このようにすることで、障害者である相続人については、①死亡保険金の非課税が適用されることはなく、③障害者控除を優先して利用することができることとなるからです。

同じ話は、①死亡保険金の非課税と④未成年者控除についても言えます。
結論としては、死亡保険金の受取人は、未成年者である相続人ではなく、未成年者ではない相続人に指定した方が、相続税の額を抑えることができる可能性があることとなります。
このようにすることで、未成年者である相続人については、①死亡保険金の非課税が適用されることはなく、③未成年者控除を優先して利用することができることとなるからです。

※ ただし、障害者控除も、未成年者控除も、扶養義務者が控除を利用することができるときは、さらに考慮しなければならない事項が出てきます。

このように、相続税の額を抑えることだけを考えるのであれば、死亡保険金の受取人については、配偶者や、障害者である相続人、未成年者である相続人には指定しない方が良いこととなります。
もちろん、現実には、相続税の額以外の要素、たとえば将来の生活保障等も考慮して、死亡保険金の受取人を決定することとなりますので、上記の考え方は絶対的なものではありませんが、相続税の額を抑えるという観点からは、上記のような工夫を行うことも考えられることとなります。
三重県でお受けしている案件でも、特に生前対策の案件については、このようなアドバイスをさせていただくことが多いです。

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