未成年者が相続人となる場合③

先述のとおり、法律上は、遺産分割協議を行うためには、特別代理人を選任せざるを得ない場合があります。
しかし、負担を生じさせかねないような相続財産を子に引き継ぐことを避けるためであっても、わざわざ、特別代理人を選任しなければならないのかという疑問が生じてしまうところではあります。

とはいえ、遺産分割という形をとる以上は、特別代理人を選任しなければならないことは不可避です。
もっとも、裏返せば、遺産分割という形を取らないのであれば、子が成人するまで待たなくても、相続財産を引き継がないものとする手立てを準備することができます。
それでは、未成年の子が相続財産を引き継がないものとするためには、遺産分割以外にどのような手立てが考えられるのでしょうか?

相続財産を引き継がない方法としては、相続分譲渡が考えられます。
相続分譲渡は、他の相続人等に対し、相続権を譲渡することを指します。
他の相続人等に相続権を譲ってしまえば、相続財産を引き継がないものとすることができます。
先の場合ですと、子Aが他の相続人等に対して相続分譲渡を行い、これとは別に、子Bが他の相続人等に対して相続分譲渡を行うこととなります。
この相続分譲渡は、形としては、子Aと他の相続人等との一対一の合意、子Bと他の相続人等との一対一の合意により、別々になされることとなります。
このため、子Aと子Bとの間では一対一の合意はなされていないこととなりますので、子Aと子Bとは形式上は利益相反の関係には立たないこととなります。
このような理由から、子Aと子Bが別々に相続分譲渡を行うことは、有効にできると解されています。

実際、三重県の事例でも、このような相続分譲渡を前提として、他の相続人等への相続登記が認められた事例が存在します。
このような方法を用いれば、特別代理人を選任したり、子が成人したりするのを待たなくても、子が相続財産を引き継がないものとすることが可能になります。

Notice: This work is licensed under a BY-NC-SA. Permalink: 未成年者が相続人となる場合③