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未成年者が相続人となる場合③

先述のとおり、法律上は、遺産分割協議を行うためには、特別代理人を選任せざるを得ない場合があります。
しかし、負担を生じさせかねないような相続財産を子に引き継ぐことを避けるためであっても、わざわざ、特別代理人を選任しなければならないのかという疑問が生じてしまうところではあります。

とはいえ、遺産分割という形をとる以上は、特別代理人を選任しなければならないことは不可避です。
もっとも、裏返せば、遺産分割という形を取らないのであれば、子が成人するまで待たなくても、相続財産を引き継がないものとする手立てを準備することができます。
それでは、未成年の子が相続財産を引き継がないものとするためには、遺産分割以外にどのような手立てが考えられるのでしょうか?

相続財産を引き継がない方法としては、相続分譲渡が考えられます。
相続分譲渡は、他の相続人等に対し、相続権を譲渡することを指します。
他の相続人等に相続権を譲ってしまえば、相続財産を引き継がないものとすることができます。
先の場合ですと、子Aが他の相続人等に対して相続分譲渡を行い、これとは別に、子Bが他の相続人等に対して相続分譲渡を行うこととなります。
この相続分譲渡は、形としては、子Aと他の相続人等との一対一の合意、子Bと他の相続人等との一対一の合意により、別々になされることとなります。
このため、子Aと子Bとの間では一対一の合意はなされていないこととなりますので、子Aと子Bとは形式上は利益相反の関係には立たないこととなります。
このような理由から、子Aと子Bが別々に相続分譲渡を行うことは、有効にできると解されています。

実際、三重県の事例でも、このような相続分譲渡を前提として、他の相続人等への相続登記が認められた事例が存在します。
このような方法を用いれば、特別代理人を選任したり、子が成人したりするのを待たなくても、子が相続財産を引き継がないものとすることが可能になります。

未成年者が相続人となる場合②

それでは、相続財産が山林や田畑のみであり、むしろ、相続人になってしまうと、管理の負担を負いかねないようなものである場合はどうでしょうか?
子A、子Bの親権者としては、子が負担を負うような事態を避けるためにも、一切相続しないとの選択肢を取りたいと考えることもあり得るかと思います。

このような場合は、相続放棄を行うことにより、相続財産を一切引き継がないものとすることができます。
そして、子Aと子Bが同時に相続放棄を行う場合は、同時に相続放棄を行う以上、子Aと子Bは利益相反の関係には立たないと考えられています。
このため、親権者Cは、子Aの親権者兼子Bの親権者として、2人のために相続放棄を行うことができることとなります。

※ なお、上記のような例で、親権者Cが、子Aのみについて、相続放棄を行うことはできないとされています。
子Aのみが相続放棄を行うことにより、子Bの相続分が増えることとなるため、この場合は、子Aと子Bが利益相反の関係に立つと考えられるためです。
親権者Cが子Aについて相続放棄を行うことができるのは、あくまでも、子Bについても同時に相続放棄を行う場合に限られるとされています。

ただ、相続放棄については、基本的には、相続が発生してから3か月以内に、家庭裁判所に申述書を提出して行わなければならないとされています。
このため、3か月の期間が経過してしまうと、最早、相続放棄を行うことができないこととなってしまいます。

3か月の期間が経過した場合は、一般的には、子A、子Bを当事者として遺産分割協議を行い、子Aと子Bは一切の相続財産を引き継がないと内容の協議書を成立させることを考えることとなります。
しかし、子Aと子Bは一切の相続財産を引き継がないとの内容の遺産分割協議であっても、遺産分割となってしまう以上、先述の利益相反の問題が発生すると扱われてしまいます。
このため、親権者Cだけでは、子Aと子Bの親権者として、相続財産を一切引き継がないとの遺産分割協議を成立させることはできないこととなってしまいます。
したがって、このような遺産分割協議を成立させたい場合であっても、子Bのため、特別代理人を選任しなければならないこととなってしまうのです。

このように、特別代理人を選任しなければならないとなると、時間がかかってしまいます。
弁護士等に手続を依頼するとなると、そのための費用負担も必要になってしまいます。
このため、特別代理人を選任することなく手続を進める手はないか、他の手を検討したくなる場面かとは思います。

未成年者が相続人となる場合①

遺産分割協議については、相続人全員の合意に基づいて行う必要があります。
この相続人に未成年者が含まれる場合については、特別な検討が必要になってきます。
未成年者自身は、単独では、法律上の意思決定をすることができないこととされているためです。

まず、相続人に含まれる未成年者が1人の場合は、未成年者の代理人として、親権者が合意を行うこととなります。
親権者が父母2名であるときは、2名が代理人として合意を行う必要があります。
遺産分割協議書についても、「〇〇(未成年者の名前)法定代理人親権者〇〇(親権者の名前)」として、署名押印を行うこととなります。

次に、相続人に含まれる未成年者が複数であり、同じ人が親権者になっている場合は、さらに特別な手続が必要になってきます。
子A、子Bが相続人になっており、Cが親権者になっていたとします。
先の話だと、親権者Cが、子Aの代理人兼子Bの代理人として、遺産分割協議を行うことができることとなりそうです。

ただ、このような場面では、特別な配慮が必要になってきます。
というのも、子Aと子Bは、同じ相続財産を分け合う関係にありますので、片方の取得分が増えれば、片方の取得分が減るということが起こり得る関係になります。
このことを、法律用語で、子Aと子Bは利益相反の関係にあると言います。
このように、利益相反の関係があるときは、親権者Cは、両者の代理人を兼ねることはできないこととなっています。
このため、親権者Cは、子Aの代理人と子Bの代理人を兼ねて、遺産分割協議を行うこともできないこととなります。
たとえば、親権者Cが子Aと子Bの両方の代理人となって遺産分割協議書を作成したとしても、その遺産分割協議書は有効ではなく、不動産の相続登記や預金の払戻等も行うことができないこととなります。

このため、遺産分割協議を進めるためには、親権者C以外に、法律上の代理人となる人を準備しないといけないこととなります。
親権者以外に法律上の代理人となり得る人としては、家庭裁判所が選任する特別代理人が存在します。
たとえば、家庭裁判所が、子Bの特別代理人としてDを選任すれば、子Aの親権者であるC、子Bの特別代理人であるDが当事者となり、遺産分割協議を行うことができることとなります。

特別代理人の選任申立を行うに当たっては、特定の人を特別代理人の候補者として記載することもできます。
特別代理人は、必ずしも弁護士である必要はなく、利害関係がなければ、親族でも広く認められる傾向にあります。
このため、利害関係のない親族を候補者として記載し、その人を特別代理人に選任してもらい、手続を進めることも多いです。

家庭裁判所で特別代理人を選任するためには、何か月かの期間が必要になってきます。
また、特別代理人との間で意見調整が必要になるときは、さらに、遺産分割協議のための時間が必要になってきます。
このため、特別代理人が必要になる案件で、いつまでに手続を終えければならないような場合は、前倒しで動く必要があります。

あえて遺産分割未了とした事例②

まったくの別件になりますが、亡くなられた方に相続人が存在せず、相続財産の帰趨が問題となった案件がありました。
相続人不存在のため、相続財産管理人(現在では相続財産清算人)の選任がなされ、清算手続が進められました。
相続債権者、受遺者が存在せず、特別縁故者の申立もなされませんでした。

被相続人が所有する財産の中に、被相続人と遠縁の親族が共有する土地がありました。
この土地については、清算の過程で売却されることのないまま、相続財産として残っていました。
特別縁故者が存在しない場合は、残された相続財産は、国庫帰属となり、国に引き継がれることとなります。

ただ、被相続人が第三者と共有していた財産については、別の結論になります。
民法255条は、共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属すると定めています。
民法255条によると、相続人がいないときは、他の共有者が持分を引き継ぐこととなるのです。
この持分の引き継ぎについて、他の共有者は、対価を支払わなくても良いこととされています。
つまり、財産にどれだけの価値があったとしても、相続人がいない人の持分については、経済的な負担なしで他の共有者に引き継がれることとなるのです。
この他の共有者への引き継ぎは、特別縁故者が存在しないことが確定した段階でなされることとなっています。
このような理屈から、先の事例では、被相続人の持分は、国ではなく、他の共有者に引き継がれることとなったのです。

ここで最初の事例に戻りたいと思います。
最初の事例ては、先祖代々の不動産を、依頼者である兄弟姉妹と、相手方相続人である配偶者が、遺産未了の状態にしていました。
遺産分割未了の状態は、法的には、遺産共有の状態と扱われることとなり、兄弟姉妹と配偶者が先祖代々の不動産を遺産共有していることとなります。
このような状況が続き、さらに配偶者が亡くなったとします。
配偶者には相続人はいませんので、相続財産管理人(現在の相続財産清算人)が選任され、清算手続が完了すると、国庫帰属の前に、共有財産の他の共有者への引き継ぎがなされることとなります。
そして、遺産共有も同様の扱いとなるのであれば、清算手続が完了しても不動産が残っている場合は、先祖代々の不動産について被相続人が有していた持分を、他の共有者である兄弟姉妹が、経済的な負担なく、引き継ぐことができるのではないかと考えられるのです。

この点を踏まえると、最初の事例では、先祖代々の不動産については、あえて遺産分割未了のままとしておき、配偶者が死亡し、清算手続が完了した段階で、他の共有者である兄弟姉妹か引き継ぐことを狙うことが考えられました。
この方法であれば、遺産調停、審判の場合のような、配偶者に不動産が引き継がれてしまうリスクを避けることができます。
また、民法255条により他の共有者として引き継ぐのであれば、兄弟姉妹が対価を支払う必要もないこととなります。
時間はかなりかかるものの、経済的負担なく不動産を引き継ぐことができるのであれば、メリットがあるのではないかと考えられます。

あとは懸念点の検討です。
相続財産管理人(現在は相続財産清算人)の清算手続が完了した時点で、遺産共有の不動産が残ったままの状態になっていれば、他の相続人が引き継ぐことができるという話は、裏返せば、清算手続完了時点で、共有不動産が残っていない場合には、民法255条は使えないという話になります。
清算手続がなされる被相続人=配偶者が、債務を負っており、共有不動産を処分しなければ債務を弁済することができないときは、共有不動産を処分しない限り清算手続が完了しないこととなりますので、民法255条は使えないこととなります。
また、債務がなかったとしても、相続財産管理人(現在の相続財産清算人)の判断で、不動産の共有持分の処分の試みがなされる可能性もないわけではありません。
このような場合は、清算手続を進めるためにも、むしろ、兄弟姉妹に対し、共有不動産の持分の買い取りを求められる可能性も高いです。
もっとも、逆に言えば、兄弟姉妹に対して不動産の持分の買い取りを求められる可能性が高いため、対価を支払さえすれば、不動産を取得することができる可能性がかなり高いと言うこともできます。
以上を踏まえると、やはり、最初の事例では、あえて不動産を未分割のままにしておくメリットがあると言うことができそうという結論になりました。
※ なお、相続登記義務化により、今後は、法務局が相続登記を求めてくる可能性もありますが、相続人申告登記を行えば対処は可能です。

このように、弁護士の仕事では、ある案件の解決が他の案件の解決にも影響するということが、往々にしてあります。
垂直的思考だけでなく、水平的思考も求められる仕事であると言うことができます。

あえて遺産分割未了とした事例①

ここで、1つの仮想事例を紹介したいと思います。

被相続人が亡くなり、未分割の複数の不動産が存在したものの、相続人間で遺産分割が未了のままとなっていました。
被相続人には子がいませんでしたので、相続人は、被相続人の配偶者、被相続人の兄弟姉妹になっていました。
不動産は、先祖代々引き継がれてきた不動産でしたが、相続人間での遺産分割協議が一向に進まず、名義変更ができないままとなっていました。
このような状況下で、被相続人の兄弟姉妹の方が、遺産分割未了のまま、問題を次の世代に持ち越したくないとの思いから、弁護士に相談に来られました。

上記の場合、法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が合計4分の1となります。
遺産分割協議が成立しない以上、遺産分割を進めるのであれば、兄弟姉妹が合計4分の1の相続分であることを前提として、協議なり法的手続なりを進めることになると考えられるところでした。
そして、協議が望めないのであれば、遺産分割調停の申立をするより他ないと思われるところでした。
不動産については、兄弟姉妹が取得するのであれば、配偶者に不動産の評価額の4分の3に相当する代償金を支払わなければならない可能性が高いです。
また、配偶者が過半数の相続分を有していることも踏まえると、遺産調停、審判の手続で、配偶者が不動産の相続を希望すれば、兄弟姉妹か必ずしもすべての不動産を引き継げるとは限らない状況でした。
相談に来られました兄弟姉妹は、先祖代々引き継がれてきた不動産を引き継ぐため、多額の代償金を支払わなければならないこと、さらには、不動産のすべてを引き継げるとは限らないことについては、忸怩たるものがあるものの、法律がそうなっているのであれば、やむを得ないとの話をしていました。

その後、さらに話を伺ったところ、相手方相続人となっている配偶者には、存命の兄弟姉妹がおらず、甥姪もいないことが判明しました。
このため、さらに、相手方相続人である配偶者が亡くなった場合には、相続人となる人はいないこととなりました。
もっとも、この情報は、現在問題となっている、被相続人の相続問題とは別問題でした。
相手方相続人である配偶者が亡くなり、相続人が存在しないときは、相続財産管理人(現在では相続財産清算人)の選任がなされ、清算手続が完了すると、残余の財産は国が引き継ぐこととなるはずです(相続債権者、受遺者、特別縁故者がいない場合)。
被相続人の遺産分割が完了し、被相続人の財産を配偶者が引き継いだときも、引き継いだ財産は、配偶者の死亡後、国に引き継がれることとなります。
国が引き継がれ、兄弟姉妹の側に戻ってこないのであれば、法的には、兄弟姉妹にとっては関係のない話になります(心情的な点は措くとして)。
このため、この情報は、法的な結論には影響しないはずの事情でした。

こうした状況下においては、兄弟姉妹から遺産分割調停の件をお受けし、被相続人の遺産分割を進めることが、当方の仕事となるはずでした。
ところが、別件で、異なる帰結となった出来事があったため、考えを改めなければならなくなりました。

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合②

② 遺産分割協議による解決

次に、遺産分割協議による解決が考えられます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合は、その相続人が一切の財産を取得しないとの内容の遺産分割協議を成立させ、相続財産の分割を完了してしまうことが考えられます。

ただ、遺産分割協議による解決についても、いくつかの注意点があります。

それは、遺産分割協議については、必ず、相続人全員の合意により行う必要があるという問題です。

このため、1人でも、遺産分割協議の内容に反対していたり、そもそも遺産分割協議を行うこと自体に同意しない相続人がいたりする場合には、遺産分割協議は成立せず、いつまでも問題が解決しないこととなってしまいます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいたとしても、遺産分割協議の内容に同意しない相続人し、遺産分割協議が成立しない状態が続く限り、相続に巻き込まれ続けることとなってしまいます。

③ 相続分の譲渡、相続分の放棄

3つ目の方法として、相続分の譲渡、相続分の放棄という方法があります。

相続分を主張することを希望しない相続人は、相続分の譲渡、相続分の放棄を行うことにより、遺産分割の当事者から外れることができます(ただし、後述のとおり、手続との関係では留意すべき点があります)。

相続分の譲渡、相続分の放棄は、相続放棄と異なり、家庭裁判所での手続を経ることなく、行うことができます。

相続分を主張しない意思表示を明確にするため、何らかの書面(実印を押印し、印鑑証明書を添付した相続分譲渡証書、相続分放棄証書)を作成すべきところではありますが、家庭裁判所の手続を用いなかったとしても、こうした書類を有効に作成することができます。

また、遺産分割協議と異なり、相続人全員の意見が一致していなかったとしても、相続分を主張することを希望しない相続人が単独で相続分の譲渡、相続分の放棄の意思表示を行えば、遺産分割の当事者から外れることができます。

ある相続人が相続分の放棄、相続分の譲渡を行えば、あとは、残りの相続人で遺産分割等の手続を行うこともできます。

他方で、特に相続分の放棄については、留意すべき点があります。

相続分の放棄は、家庭裁判所で行う相続放棄とは異なり、公的機関の関与なく書類等の作成がなされるものであるため、相続分放棄証書を作成したものの、相続手続で用いることができないといった事態が生じることが起こり得ます。

特に、法務局は、相続登記(不動産の名義変更)において、相続分放棄証書をもって名義変更手続を行うことを認めていないため、相続分放棄証書を法務局に提出しても、相続登記の手続を完了することはできないこととなってしまいます。

登記手続に詳しくない弁護士に依頼すると、書類を作成し、署名、押印を得たため、問題が解決したと安心したものの、その書類では登記手続を行うことができず、書類を作成し直さなければならないといった事態が生じかねません。

問題を解決するためには、相続手続を完了することができるかどうかにも留意して、交渉や書類作成を行う必要があると言えます。

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合①

相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合相続が発生すると、各相続人は、相続財産について、割合的な持分を有することとなります。

このような割合的な持分が、相続分になります。

ところで、相続人の中には、相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合があります。

相続分を主張することを希望しなかったとしても、相続人である以上は、当然に遺産分割の当事者になってしまい、何らかの手続をとらない限り、相続に巻き込まれた状態が続くこととなります。

それでは、相続分を主張することを希望しない相続人がいる場合は、どのような手続を取れば良いのでしょうか?

ここでは、考えられる手続を説明したいと思います。

① 相続放棄による解決

まず、相続分を主張することを希望しない相続人が、家庭裁判所において、相続放棄を行うことが考えられます。

相続放棄を行うと、その人は、最初から相続人ではなかったこととなります。

ただ、相続放棄については、いくつかの注意点があります。

1つ目は、原則、相続が発生したことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所で手続を行う必要があります。

このため、相続が発生したことを知ってから3か月が経過してしまっていると、基本的には、相続放棄ができないこととなります。

相続が発生してから時間が経ってしまっている場合は、別の手続を用いる必要があります。

2つ目は、相続放棄を行うにあたり、家庭裁判所に、様々な必要書類を提出したり、一定の手続を踏んだりする必要があります。

必要書類については、たとえば、被相続人との相続関係を明らかにする戸籍を提出する必要があり、被相続人が遠縁であったり、三重県以外に本籍地があったりすると、戸籍の取得にかなりの手間がかかってしまいます。

家庭裁判所の手続についても、1つでも手続を行っていただくことができなければ、相続放棄が受理されかねないこととなりかねません。

こうした手続上の手間は、相続放棄のデメリットであると思います。

3つ目は、相続放棄を行うと、別の人が相続人になる可能性があるという問題です。

たとえば、被相続人の子が相続放棄を行うと、被相続人の父母が相続人になってしまいます。

被相続人の父母が存命でなかったり、被相続人の父母も相続放棄を行ったりすると、被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が存命でない場合は、甥姪)が相続人になってしまいます。

このため、被相続人の子や父母が相続放棄を行う場合は、別の人が相続人になる可能性がないか、注意する必要があります。

新たに相続人になった人が交流の乏しい人だと、かえって、解決が遠のいてしまいかねません。

このように、家庭裁判所での相続放棄による解決については、一定の問題が生じる可能性があり、注意が必要です。

場合によっては、相続放棄による解決に適しないこともあります。

こうした手続選択を行うには、法的問題を網羅的に検討する必要がありますので、弁護士に相談した方が良いのではないかと思います。

全血兄弟と半血兄弟2

次の場合はどうでしょうか。

・ 甲と乙の間に、実子として、被相続人とAが生まれた。

・ 丙と丁の間に、実子として、Bが生まれた。

・ その後、Bが、甲と乙の養子となった。

この場合、Bは、法律上、甲と乙との間に親子関係が生じることとなります。

このため、被相続人とBは、ともに、甲と乙を共通の親とするの子であることとなりますので、全血兄弟になります。

したがって、被相続人が亡くなった場合の相続分は、Aが2分の1、Bが2分の1になります。

次の場合はどうでしょうか。

・ 甲と乙の間に、実子として、被相続人とAが生まれた。

・ 丙と丁の間に、実子として、Bが生まれた。

・ 乙が死亡した。

・ その後、Bが、甲の養子となった。

このような事例で、法務局の先例は以下のような判断を行っています。

この場合、Bは、法律上、甲との間だけ、親子関係が生じます。

このため、被相続人とBは、甲のみを共通の親とする子であることとなりますので、半血兄弟になります。

Bからみると、甲が唯一の養親となりますが、全血兄弟かどうかは、あくまでも、何名の親を共通とするかで判断されることとなります。

今回は、1名の親を共通とするのみですので、半月兄弟であることとなります。

したがって、被相続人が亡くなった場合の相続分は、Aが3分の2、Bが3分の1になります。

三重県で担当した案件でも、上記の2番目の事例が問題となったことがあります。

家庭裁判所と協議し、法務局の先例を踏まえ、半血兄弟であるとの前提で、調停に代わる審判がなされることとなりました。

全血兄弟と半血兄弟1

被相続人に子がいなかった場合で、父母も存命ではない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

この場合は、被相続人の兄弟姉妹の相続分を算定する必要が出てきます。

このとき、被相続人の全血兄弟については、相続分は均等になりますが、半血兄弟については、相続分は全血兄弟の半分になります。

このため、被相続人の兄弟姉妹の相続分を算定するにあたっては、全血兄弟と半血兄弟の違いを正確に把握しておく必要があります。

全血兄弟は、被相続人と、父母のいずれもが同じである兄弟姉妹のことを言います。

他方、半血兄弟は、被相続人と、父母の片方だけが同じである兄弟姉妹のことを言います。

たとえば、次の場合を考えたいと思います。

・ 甲と乙の間に、実子として、被相続人とAとBが生まれた。

この場合、AもBも、被相続人と父母のいずれもが同じになりますので、AもBも全血兄弟になります。

このため、AとBの相続分は均等になり、1/2ずつになります。

それでは、次の場合はどうでしょうか。

・ 甲と乙の間に、実子として、被相続人とAが生まれた。

・ 甲と丙の間に、実子として、Bが生まれた。

この場合、Aは、被相続人と父母のいずれもが同じになり、全血兄弟になります。

Bは、被相続人と父母の片方だけが同じになりますので、半血兄弟になります。

このため、Bの相続分はAの相続分の半分になりますので、Aの相続分は2/3、Bの相続分は1/3になります。

このように、全血兄弟か半血兄弟かの判断は、通常は、迷わずに行うことができますが、中には、どちらに該当するか、弁護士であっても判断に迷う例があります。

次回は、判断に迷う例について説明したいと思います。

先行する相続について未分割遺産がある場合,その不動産に相続税は課税されるのでしょうか?―最終的な相続人が1人の場合

今回は、次のような事例を紹介したいと思います。

事例
家族関係は、父A、母B、子C
父Aが亡くなったが、父A名義の不動産が遺産分割されず、そのままになっていました。
その後、母Bが亡くなり、母Bについて相続税の申告を行う必要が生じました。
この場合、父A名義の不動産は、母Bについての相続税の課税対象となるのでしょうか?

最終的な相続人が複数である場合は、先行する相続の未分割遺産である父A名義の不動産について、遺産分割協議を行えば、母Bの相続税の課税対象から外すことができます。
ところが、今回の事例のように、最終的な相続人が1人の場合、次の問題が発生します。
父Aの相続人は、母Bが存命の間は母Bと子Cの2人でしたが、母Bが亡くなった後は、子Cの1人のみとなります。
そして、遺産分割協議は、複数の相続人で行うものになりますので、子C1人だけでは、遺産分割協議を行うことはできません。
このように、遺産分割協議を行うことができない以上、父A名義の不動産については、初めから、子Cが所有していたものと扱うことはできません。
以上から、母Bの相続税申告では、父A名義の不動産の相続分2分の1を、相続税の課税対象としなければならないこととなります。

このように、最終的な相続人が1人である場合には、先行する相続についての未分割遺産を、相続税の課税対象から外す手段はないということになります。
最終的な相続人が1人であるか複数であるかによって、相続税の課税対象が変わってしまうことは、不合理に感じるところではありますが、申告実務は、このような考え方を用いています。
過去に、この点が不合理であると主張して、税務訴訟を提起した弁護士もいましたが、裁判所は、このような主張を受け入れませんでした。

このような事態を避けるためには、母Bが存命であったうちに、母Bと子Cとで父Aの遺産分割協議を行い、子Cが父A名義の不動産を取得するとの遺産分割協議を成立させておいて方が良かったということになります。
このような遺産分割協議が成立すれば、父A名義の不動産は存在しなくなりますので、母Bの相続税の課税対象になることも避けられることとなります。
そして、このような遺産分割協議が成立した場合は、これを公的に明らかにするため、遅滞なく相続登記も行った方が良いでしょう。