日別アーカイブ: 2025年8月15日

未成年者が相続人となる場合①

遺産分割協議については、相続人全員の合意に基づいて行う必要があります。
この相続人に未成年者が含まれる場合については、特別な検討が必要になってきます。
未成年者自身は、単独では、法律上の意思決定をすることができないこととされているためです。

まず、相続人に含まれる未成年者が1人の場合は、未成年者の代理人として、親権者が合意を行うこととなります。
親権者が父母2名であるときは、2名が代理人として合意を行う必要があります。
遺産分割協議書についても、「〇〇(未成年者の名前)法定代理人親権者〇〇(親権者の名前)」として、署名押印を行うこととなります。

次に、相続人に含まれる未成年者が複数であり、同じ人が親権者になっている場合は、さらに特別な手続が必要になってきます。
子A、子Bが相続人になっており、Cが親権者になっていたとします。
先の話だと、親権者Cが、子Aの代理人兼子Bの代理人として、遺産分割協議を行うことができることとなりそうです。

ただ、このような場面では、特別な配慮が必要になってきます。
というのも、子Aと子Bは、同じ相続財産を分け合う関係にありますので、片方の取得分が増えれば、片方の取得分が減るということが起こり得る関係になります。
このことを、法律用語で、子Aと子Bは利益相反の関係にあると言います。
このように、利益相反の関係があるときは、親権者Cは、両者の代理人を兼ねることはできないこととなっています。
このため、親権者Cは、子Aの代理人と子Bの代理人を兼ねて、遺産分割協議を行うこともできないこととなります。
たとえば、親権者Cが子Aと子Bの両方の代理人となって遺産分割協議書を作成したとしても、その遺産分割協議書は有効ではなく、不動産の相続登記や預金の払戻等も行うことができないこととなります。

このため、遺産分割協議を進めるためには、親権者C以外に、法律上の代理人となる人を準備しないといけないこととなります。
親権者以外に法律上の代理人となり得る人としては、家庭裁判所が選任する特別代理人が存在します。
たとえば、家庭裁判所が、子Bの特別代理人としてDを選任すれば、子Aの親権者であるC、子Bの特別代理人であるDが当事者となり、遺産分割協議を行うことができることとなります。

特別代理人の選任申立を行うに当たっては、特定の人を特別代理人の候補者として記載することもできます。
特別代理人は、必ずしも弁護士である必要はなく、利害関係がなければ、親族でも広く認められる傾向にあります。
このため、利害関係のない親族を候補者として記載し、その人を特別代理人に選任してもらい、手続を進めることも多いです。

家庭裁判所で特別代理人を選任するためには、何か月かの期間が必要になってきます。
また、特別代理人との間で意見調整が必要になるときは、さらに、遺産分割協議のための時間が必要になってきます。
このため、特別代理人が必要になる案件で、いつまでに手続を終えければならないような場合は、前倒しで動く必要があります。