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公正証書遺言の作成手数料2

公証人に支払う手数料は,財産がいくらであれば,いくらというように定まっています。
たとえば,受け取る財産が1億円の場合は,4万3000円になります。
詳細な基準表は,ネットでも公表されていますので,容易に入手することができます(私自身も,法律相談で遺言の質問を受けたときは,基準表を確認して回答したりします)。

ただ,公表されている基準表には,いくつかの注意点があります。
この点については,実は,相談を受ける側も,詳細を把握できていないことがあります。
このため,弁護士等に相談したところ,基準表を見ていくらになるという回答を受けたものの,実際に公証役場に行ってみると,弁護士等に聞いた以上の費用を求められた,といった事態になることもあるようです。

まず注意が必要なのは,手数料は,1つ1つの財産の動きについて発生するということです。
たとえば,遺言を作られる方の財産総額が1億円だから,基準表で4万3000円の手数料になると考えると,間違いです。
長男に対して5000万円の,二男に対して5000万円の財産を渡す場合,長男の5000万円について2万9000円の,二男の5000万円について2万9000円の手数料が,それぞれ発生します。
ですから,合計で5万8000円の手数料が発生することになります。

また,いわゆる補充遺言を作成する場合は,注意が必要です。
補充遺言とは,①土地を長男に相続させる,②長男が遺言者よりも先に死亡していた場合は,二男に相続させるというように,①が実現できなければ,②という定めを置くものです。
一般的には,もしもの場合に備え,補充遺言を行うことが望ましいとされていると思います。
ただし,公正証書遺言を作成する場合は,①土地を長男に相続させるで1つの動き,②長男が遺言者よりも先に死亡していた場合は,二男に相続させるで1つの動きと考えられます。
ですから,土地が5000万円の場合,①の手数料で2万9000円,②の手数料で2万9000円という計算がされることとなります。

公正証書遺言の作成手数料1

弁護士会の法律相談では,遺言について質問を受けることがあります。
よくある質問は,遺言書を実際に作りたいのですが,どうすればよいのでしょうといった内容のものです。
このような質問に対しては,遺言には,自筆証書遺言(自筆で作成する遺言),公正証書遺言(公証役場で作成する遺言)があるという話をすることが多いです。

公正証書遺言の場合は,遺言者が公証人に対して遺言の内容を伝え,公証人がこれを公正証書にまとめることにより作成します。
通常は,公証役場に出向いて手続を行うことになります。
公正証書遺言にも,色々と定まったルールがあるのですが,基本的には,公証人が手続を主導してくれます。
また,公正証書遺言を作成するに当たっては,証人を2人用意する必要があります。

公正証書遺言については,公証人の関与のもとで作成されますので,遺言の有効性についての争い(本当に遺言者が作成したものかどうか,作成当時の遺言者に判断能力があったかどうか)が生じにくい,文言の解釈等で争いが生じにくい,といったメリットがあります。

ただ,公正証書遺言を作成する場合は,公証人に手数料を支払う必要があります。
この手数料が,財産の総額,遺言の内容次第で,思わぬ金額になることがあります。
法律相談でも,公正証書遺言の作成手数料がいくらになるかという質問を受けることがしばしばありますので,弁護士としても,手数料がどのように決まっているのかについて,ある程度の知識を持っていた方が良いと思います。