静岡の裁判所

最近,静岡の裁判所(本庁)が建て替えを行ったそうです。
近隣では,岐阜県の裁判所(本庁)が2年前に建て替えを行っています。

裁判所も,建物の建築年数等次第で,建て替えが行われるようです。
岐阜県では,建て替えが行われている間は,仮設の庁舎が設けられ,そこで事務手続や裁判が行われていました。

他方,三重県では,裁判員裁判が導入されるに際し,本庁の棟を建て増ししました。
私自身,津の本庁の刑事事件を担当することはほとんどありませんが,時たま,建て増しした棟の法廷を利用することもあります。

戸籍の焼失2

戸籍が焼失している場合,戸籍を辿って相続関係を明らかにすることができず,どのようにして相続関係を明らかにするのかが問題になります。

このような場合,まず考えることは,親族からの情報収集です。
本人が親族関係を把握していない場合であっても,祖父母の兄弟姉妹等,古くからの出来事を把握されている方がいる場合,そのような方に親族関係を確認するということが考えられます。
そして,兄弟姉妹の子孫がいることが判明した場合は,その子孫の戸籍を取得することにより,焼失した直後の戸籍まで遡ることができます。
このようにすれば,焼失した戸籍自体を取得することはできませんが,焼失の直前の戸籍と直後の戸籍を集めることができます。
そして,直前の戸籍と直後の戸籍の繋がりについては,記載された事項(生年月日,続柄等)が一致するかどうかにより,確認することができます。

これに対し,親族からの情報収集によっても親族関係が判明しない場合は,悩ましい状況になります。
菩提寺において過去帳を保存している場合もありますので,地元を歩き回って過去帳を入手することができる場合は,結果的に親族関係を明らかにすることができるかもしれません。
ただ,このような作業を行うには,多大な労力を要しますし,必ずしも,過去帳によって親族関係が判明するとも限りません。

このような場合には,戸籍が焼失している以上,これ以上の親族関係の特定は困難であると割り切り,戸籍で辿ることができる限りにおいて,手続を進めることもあり得ます。
私自身,戸籍の消失がある場合に,戸籍で辿ることができた相続人を相手方として,遺産分割調停の手続を進めている例を見たことが何度かあります。
こうした調停の申立に対し,裁判所の側から,申立を行った弁護士等に対し,相続人の特定のため,過去帳等の調査を行うことを求めることもないようです。

ただ,厳密に言えば,相続人の一部を除外して行った遺産分割協議になりますので,法律上は,無効な遺産分割になります。
後日,戸籍によって辿ることができなかった相続人が現れ,遺産分割の無効を主張することもあり得るわけです。
実際には,このような相続人に遺産分割が行われたという情報が伝わることは稀だと思いますので,このような相続人が現れることはレアケースだと思いますが,実際にこのような相続人が現れた場合には,焼失後の戸籍と焼失前の戸籍との繋がりが証明できることも多いと思いますので,相続人の一部を除外して遺産分割を行ったことが容易に証明されるケースが多いと思います。
ですから,焼失した戸籍が関わる案件を進める場合には,新たに相続人が現れた場合には,遺産分割が無効になる可能性があることを念頭に置きつつ,手続を進める必要があるということになります。

戸籍の焼失1

親族関係を確認する場合,戸籍を辿る方法をとるのが一般的です。
裁判手続で親族関係を証明する場合にも,亡くなられた方の一生分の戸籍を取得することになります。

相続関係の戸籍を取得すると,役所から,しばしば,戸籍が焼失したため残っていませんと言われることがあります。
津市で昭和の初め頃の戸籍を取得する場合,焼失していると言われることがあるようです(たとえば,松阪市の案件でも,関係者が住所を移動しているため,他市町村の戸籍を取らなければならないことがしばしばあります)。
どうも,過去に,戦争中の火災(昭和20年7月の空襲が原因のようです)により,津市の本庁で保管していた戸籍が焼失してしまったことがあるようです。

このように,戸籍が戦災等により焼失した場合,役所は戸籍を再製することとなります。
焼失してしまった戸籍を,新たに作り直すことになるのです。
このような場合,焼失してしまった戸籍は,役所に残ってないわけですから,戸籍を再製するためには,焼失前の戸籍の内容がどのようなものであったのかについて,情報収集を行わなければならないこととなるのです。
親族関係についての情報を持っているのは,当の親族本人になりますので,役所は,親族関係について申出を行うよう求めることとなります。
そして,親族関係についての申出がなされれば,申出の内容を反映して,新たに戸籍を再製することができるのですが,申出がなされなかった部分については,戸籍を再製することができなくなってしまうのです。

津市でも,昭和22年頃に,親族関係についての申出を受けたものの,一定程度申出がなされなかった部分があり,このため,焼失した昭和の初め頃の戸籍が残っていない状態になっているのです。

このような理由から,戸籍を辿った結果,曾祖父母の代までさかのぼることができたものの,その兄弟姉妹の戸籍が途中から焼失してしており,曾祖父母の兄弟姉妹の子孫がいるのかどうかが把握できないということが,しばしばあります。

遺産分割協議後の紛争2

遺産分割協議には相続人全員が参加する必要がありますが,場合によっては,不可抗力により,相続人の一部を除いて遺産分割協議をしてしまうこともあります。
被相続人の子が相続開始後に認知を受けた場合がこれに当たります。

男女が結婚していない場合,法律上,母子関係は,出産により当然発生するとされていますが,父子関係は,基本的に,父から認知がされなければ,発生しないものとされています。
そして,父が存命の場合は,父から任意に認知することができますし,子から父に対し強制認知の請求を行うことも認められています。
他方,父が存命でない場合は,子は父に対して強制認知の請求をすることができませんので,検察官に対して認知の請求をすることとなります。
これが死後認知と呼ばれるものです。

このように,死後認知がなされた場合は,他の相続人から見ると,突然,相続人の人数が増えたとなる場合があります。
このような場合であっても,遺産分割をやり直さなければならないとなると,法的安定性が害されることとなると考えられています。
そこで,死後認知が行われた場合には,特別に,すでに行われた遺産分割は有効とされ,認知者された相続人は価額のみの支払を請求することができると定められています。

遺産分割協議後の紛争1

弁護士等の専門家が関与することなく遺産分割協議を行った場合,後々問題が生じてくることがあります。
たとえば,相続人の一部を除外して遺産分割協議を行ってしまうことがあります。

本来であれば,遺産分割協議には,相続人全員が参加しなければなりません。
相続人の一部が相続放棄を行った場合には,相続放棄を行った人は最初から相続人ではなかったものとされますので,相続放棄を行った人を除いて遺産分割協議を行うことになります。
これに対し,相続放棄を行った相続人がいない場合には,たとえ相続財産は一切いらないと考えている人がいたとしても,相続人全員の参加の下,遺産分割協議を行う必要があります(名義変更や払戻に必要な印鑑証明書についても,相続人全員の印鑑証明書が必要になります)。

そして,相続人が被相続人の子のみである場合は,相続人が誰であるかが分かりやすいですが,被相続人の兄弟姉妹や甥姪が相続人に含まれる場合は,誰が相続人であるかが正確に把握できないこともあり,最初に相続人を正確に特定できなければ,後々大きな問題が生じてくることがあります。
ですから,相続人の特定に不安がある場合は,一度,相続関係を確認するため,戸籍を取得する必要があることになります。
戸籍につきましては,どのような場合であれ,被相続人の出生から死亡までの戸籍は必ず取得しなければなりませんので,多くの場合,現在戸籍だけでなく,過去の戸籍(改製原戸籍,除籍等を含む)も取得する必要があります。
こうした作業は,実際にやってみると大変ですが,後々問題が生じないようにするためには,必ずしなければならない作業であると言えます。

万一,相続人の一部を除外して遺産分割協議書を作成してしまった場合は,相続人全員の参加の下,再度,遺産分割協議をやり直す必要があります。

相続と賃貸借契約3

賃借人の相続人が存在する場合は,内縁の妻は,相続人が引き継いだ賃借権を援用することができます。

他方,賃借人の相続人が存在しない場合は,上記のようにはいかなくなります。
相続人が存在しない場合は,相続財産は最終的に国に帰属することになります。
賃借人の地位も相続財産の一種ですから,相続人が存在しなければ国に帰属するということになりそうです。

このように,相続人が存在しない場合は,判例によっても,内縁の妻の居住権は保障されないということになります。
このことは,生活の基盤を失う側にとっては,酷な結果を招きます。
そこで,このような場合に,内縁の妻の居住権を保護するため,立法による対応が行われることとなりました。

借地借家法は,次の場合に,同居人が建物賃借人の地位を引き継ぐことができるとしています。
同居人が賃借権を引き継ぐ要件は、次のとおりです。
  
① 居住の用に供する建物であること。
② 建物の賃借人が相続人なしに死亡したこと。
③ 同居者が賃借人と事実上の夫婦または養親子と同様の関係にあったこと。
  
これらの要件を満たす場合に,同居人は建物賃借人の地位そのものを引き継ぐことになります。
他方,同居人が賃借人の地位を承継することを望まない場合は,同居人は,相続人なしに死亡したことを知った時から1か月以内に,建物賃貸人に対し,賃借人の地位を承継しない旨の意思を表示する必要があります。

弁護士会等での相談を行うと,司法試験ではよく扱われるけれども,実際には,あまり出会うことのない法律問題について相談を受けることがあります。
このような場合には,六法を確認する等しつつ,過去の記憶をたどる必要があります。

相続と賃貸借契約2

賃借人の同居人であった内縁の妻を保護する理屈としては,次のようなものがあります。

建物賃借人の地位は,内縁の妻には引き継がれないですが,相続人には引き継がれることとなります。
この場合,判例は,内縁の妻は,相続人が引き継いだ借家権を援用し,建物の明渡しを拒むことができることがあるとしています(弁護士を目指して勉強する場合は,必ず学ぶことになる判例だと思います)。

注意が必要なのは,内縁の妻自身が借家権を有することになるのではなく,内縁の妻が相続人の借家権を援用することができるに過ぎないということです。
このため,相続人が賃借権を主張する場合は,内縁の妻は,建物を明け渡さざるを得なくなるのではないかという疑問が出てきます。
この点についても,判例は,相続人からの明渡請求が権利の濫用に当たるとして,内縁の妻が明渡しを拒むことができるとしました(この判例も,必ず学ぶ判例だと思います)。
このため,判例上は,相続人に引き継がれた借家権が存続する限り,内縁の妻は,建物に居住し続けることができるということになったのです。

ただし,あくまでも,内縁の妻は相続人の借家権を援用しているにすぎませんので,相続人が賃料支払義務を負うことになります。
そして,相続人が賃料を支払わず,賃貸借契約が債務不履行解除された場合には,内縁の妻は建物から退去しなければならなくなります。

このように,判例上の保護も,決して万全といえるものではありません。

相続と建物賃貸借1

最近,建物を賃借している方が亡くなった案件で,同居人の地位がどのように保護されるのかという相談を受けました。

こうした例は,司法試験(弁護士になる前段階の試験)の勉強では,何度も復習しますが,実務では,意外に法律上どのように処理されるべきかを真正面から検討することは少ないように思います。
というのも,実際には,何十年も使い続けるという考えではなく,当面の間使用するためという考えで賃貸借契約を結ぶことが多く,長年住み続けた賃借人を保護するという場面まではいかないからです。

ただ,現在であっても,戸建ての住宅を借り,何十年も住み続けているという場合もありますので,そのような場合には,建物の賃貸人(建物の所有者)と賃借人の同居人との間の問題が生じることもあったりします。

まず,同居人が賃借人の相続人である場合は,賃借人の地位が相続人に引き継がれますので,同居人は,建物を借り続けることができるということになります。
もちろん,賃借人の地位が引き継がれるわけですから,同居人は,賃料を支払う必要があります。
他方,同居人が賃料を支払い続ける間は,他に背信行為がなければ,一方的に賃貸借契約を解除されるような事態は避け得るということになります。

次に,同居人が賃借人の相続人でない場合は,問題が生じます。
同居人が賃貸人と新たに賃貸借契約を結ぶことができれば問題ないですが,できなかった場合は,同居人が賃貸人から退去を求められるのではないかという問題が生じます。
特に,同居人が賃借人の内縁の妻である場合は,法律上の保護があるかどうかを検討する必要があります。

認知症についての勉強会

認知症についての,弁護士を対象とした勉強会に参加しました。
認知症の類型(アルツハイマー型,レビー小体型等)の類型から,現在の研究の状況等まで,様々な話を伺うことができました。

1年前程前には,あと10年もすれば,認知症の症状の進行を止める新薬が開発されるという話を伺ったこともありますが,最新の治験では,新薬の開発は必ずしもうまくいっているわけではないとのことでした。
研究に関する情報は日々変化するものであり,一昔前の話が必ずしも正しいわけではないということを実感しました。

公正証書遺言の利点2

公正証書遺言の利点としては,他に,遺言の有効性が争われにくいということがあります。
公正証書遺言の場合は,公証人の関与のもとに作成されますので,手続の適正性についての信頼性が高いです。

自筆の遺言の場合でしばしば争いになるのが,残された遺言が,本当に,遺言者が作成したものなのかということです。
遺言者ではなく,相続人の一部が自分に有利な遺言を作成したのではないかとの主張が,他の相続人から出てくることがあります。
このような主張が想定される場合は,慎重に対処することが必要だと思います。

遺言の有効性が争われる場合に,遺言無効確認訴訟が起こされることがあります。
遺言無効確認訴訟では,遺言の筆跡が誰のものであるのかが審理されることとなります。
そして,遺言の筆跡が遺言者の者であることについては,遺言の有効性を主張する側に証明責任があるとされています。
このため,遺言が遺言者の筆跡によることが証明されなければ,遺言は無効であるとの判決が下されることとなるのです。

それでは,遺言が遺言者の筆跡であることを証明するためには,どのようなことを行えばよいのでしょうか。
多くの場合には,遺言者が書いた別の文書を持ってきて,その文書の筆跡と遺言書の筆跡が同一であるかどうかにつき,鑑定人に鑑定してもらうこととなります。

この場面で問題になるのが,遺言者が書いた別の文書が残っているかどうかです。
実務では,遺言者は,生前,字を書くことがあまりなかったため,遺言者が書いた別の文書が残っていないということが,想像以上に多いです。
また,当方が遺言者が書いたと主張する文書を持って行っても,相手方が,その文書は遺言者が書いたものではない,との主張を行うことも想定されます。
このような場合には,遺言者が書いた別の文書について,遺言者が作成したことを証明しなければならないという状況に陥ってしまいます。
このため,遺言者が書いた別の文書としては,文書の性質等から,遺言者自身が書いたことが確かであるというものか,遺言者が書いたということについて,相続人間で争いがないものを準備する必要があるということになります。

このように考えていくと,遺言を遺言者が作成したという点についての争いが生じることを避けるため,公証人の関与のもとに遺言を作成することは,1つの大きな利点だといとうことができると思います。

私自身,弁護士として遺言書の作成を受任する際は,遺言の有効性についての争いを避けるための手立てを打つことは必須だと考えますので,公正証書遺言を作成するか,自筆で遺言を作成し,その遺言が遺言者が作成したもので間違いないことを証拠化する(録音を残す等)か,いずれかの形をとらせていただいています。