養老保険が遺産分割の対象になる場合4

前回は,養老保険に分類され,満期が存在する簡易生命保険については,満期の時期を確認し,保険契約を解約し,解約返戻金を受け取ることができるかどうかを確認する必要があることを説明させていただきました。

実際には,満期が存在する保険契約は,簡易生命保険以外にも多数あります。
JA(農協),JF(漁協)には,養老生命共済が存在しますし,民間の保険会社にも,養老保険が存在します。
これらの場合には,満期保険金の受取人については,どのように決められているのでしょうか。

JAの養老生命共済については,約款で以下のように定められています。

満期共済金受取人が指定されていない場合は,・・・共済契約者を満期共済金受取人とします。

上記の規定が,簡易生命保険法55条と同じく,共済金受取人が死亡し,代わりの共済金受取人が指定されていない場合にも適用されるのであれば,満期共済金は,共済契約者の地位を有している者,つまり,もともとの共済契約者の相続人ということになりそうです。

他方,日本生命の養老生命保険については,約款で以下のように定められています。

満期保険金受取人の死亡時以後,満期保険金受取人の変更が行われていない間は,満期保険金受取人の死亡時の法定相続人を満期保険金受取人といます。

上記の規定から,満期保険金の受取人は,満期保険金受取人の相続人になります。
保険契約者と満期保険金受取人が同一人であれば,保険契約者の相続人が満期保険金を受け取ることになります。

このように,JAの養老生命共済も,日本生命の養老生命保険も,被保険者が受取人になる簡易生命保険とは,異なるルールが適用されることとなります。
生命保険については,民法の相続編ではなく,約款等の規定により,受取人が決まることとなりますので,満期保険金の帰属が問題になりそうな場合は,1つ1つの保険契約の約款を確認する必要があることとなりそうです。

このように,満期が到来した保険については,遺産分割の対象にしたとしても,解約返戻金を受け取ることができないことがあります。
三重の案件でも,簡易生命保険等の契約が組まれていることがしばしばありますので,約款を確認した上で,遺産目録に遺産として挙げるかどうかを慎重に検討する必要があります。

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