生命保険と相続税対策―②配偶者が生命保険金の受取人になる場合

1 生命保険金の非課税限度額を利用することができる
配偶者が受取人になった場合は,生命保険金の非課税限度額を利用することができます。
この結果,相続税の課税価格が減額されることとなり,相続税の総額も減額されることとなります。

2 配偶者の税額軽減も利用することができる
もっとも,配偶者が取得した財産については,配偶者の税額軽減という別の制度が設けられており,相続税が大きく減額されることとなっています。
配偶者の税額軽減とは,配偶者が取得した遺産額については,次の金額のどちらか多い金額までは,相続税が課税されないという制度です。
・ 1億6000万円
・ 配偶者の法定相続分相当額

このように,配偶者の税額軽減により,配偶者が取得した財産に相続税が課税されないこととなっている場合には,重ねて,生命保険金の非課税限度額により,配偶者が取得した財産に課税される相続税が減額されるという効果が生じることはありません。
他方,配偶者が法定相続分相当額以上の財産を取得した場合等,配偶者の税額軽減を用いても,配偶者が取得した財産に相続税が課税されることとなる場合は,さらに,生命保険金の非課税限度額を用いることができ,配偶者が取得した財産に課税される相続税をさらに減額することができます。

3 結論
以上から,配偶者が生命保険金の受取人になった場合には,生命保険金の非課税限度額により,以下の影響が生じることとなります。

① 配偶者の税額軽減により,配偶者が取得した財産に相続税が課税されないこととなっている場合
・ 相続税の総額については,減額される。
・ 配偶者が取得した財産については,相続税は減額されない(0円のままである)。
   ⇓
  相続税の総額が減額される結果,反射的に,配偶者以外の人に課税される相続税が減額されるに過ぎない。
  相続税の減額効果は,小さい。

② 配偶者の税額軽減を用いても,配偶者が取得した財産に相続税が課税されることとなる場合
・ 相続税の総額については,減額される。
・ 配偶者が取得した財産についても,相続税が減額される。
   ⇓
  配偶者が取得した財産について,相続税が大きく減額されることとなる。
  さらに,相続税の総額が減額される結果,反射的に,配偶者以外の人に課税される相続税も減額される。

松阪の案件でも,配偶者が生命保険金の受取人となっている場合に,相続税の負担がどうなるのかというご質問をお受けすることがあります。
この点については,上記の説明を行い,相続税の負担が一定程度軽減されるとの回答をさせていただいています。