カテゴリー別アーカイブ: その他2

養子と相続1

養子は養親の財産を相続できます。

 

それでは,養子は血縁上の親の財産を相続できるのでしょうか。

 

答えは,原則として「できる」です。

ですから,相続が発生し,遺産分割協議等を行う場合には,養子に出た子も,遺産協議等に参加する必要があります。

養子に出た子を参加させずに行った遺産分割協議等は,無効となってしまいます。

 

このような場合には,養子に出た子と,養子に出なかった子とが,疎遠になっている場合が多いです。

このため,養子に出なかった子が,養子に出たこの存在を見過ごして,遺産分割協議を進めてしまうこともあり得ます。

 

弁護士として,遺産分割の事案を扱う場合には,戸籍をさかのぼり,相続人になり得る子が誰であるのかを調査する必要があります。

戸籍自体は,各市町村役場(たとえば,松阪市に住んでいた時期については,松阪市役所)で,取得することができます。

特別受益3

生前に,被相続人が相続人の一部に対し,生計の基礎となる財産を贈与等していた場合には,贈与等を受けた相続人は,特別受益を有するということになり,その分,遺産分割等での取分が差し引かれることになります。

 

それでは,被相続人が,相続人ではなく,相続人の子や配偶者に対して贈与していた場合はどうでしょうか。

この場合は,相続人自身に対しては,贈与はされていませんので,原則として特別受益は存在しないものとされます。

ただし,相続人の子や配偶者に贈与することにより,相続人自身が利益を受けていたり,被相続人が実際には相続人に贈与するつもりであり,ただ名義だけを相続人の子や配偶者にしていたりする場合には,相続人に特別受益があるものと判断される可能性があります。

 

弁護士として,こうした主張を立てていくかどうかは,ケースバイケースです。

農地の譲渡・相続2

譲渡の場合とは異なり,農地を相続した場合には,農地法3条の許可申請を行う必要はありません。

農地を相続した場合は,農業委員会に届出を行うだけで良いのです。

 

届出の期間は,相続開始後10か月以内です(届出を怠ると,10万円以下の過料を受ける可能性があります。)。

 

届出の場合は,許可の場合と異なり,必要種類等を農業委員会に提出すれば,手続が済みます。

農業委員会が,権利移転を認めないということはないのです。

(必要書類等に不備がある場合は,補正をする必要があります。)

 

松阪市で弁護士業務を行うと,農地が関わる事案を扱うことも,たまにあります。

農地の譲渡・相続1

農地を譲渡(売買や贈与等)した場合には,農地法3条により,農業委員会に許可申請を行う必要があります。

この場合,住所地の市町村の農地であれば,その市町村の農業委員会に,住所地の市町村外の農地であれば,都道府県知事に,許可申請を行うことになります。

松阪市にお住まいであれば,松阪市内に農地がある場合は,松阪市の農業委員会に許可申請を行う必要があるのです。

 

許可申請を行うわけですから,譲渡の場合は,農業委員会や都道府県知事が譲渡を認めない可能性があるのです。

 

どのような場合に譲渡が認められるかについては,政省令等で詳細に決められています。

遺留分2

遺留分減殺請求権は,いつまでも行使できるわけではありません。

 

遺留分減殺請求権は,相続開始等を知った時から1年間しか,行使することができません。

ただし,1年以内に,相手方に対し,遺留分減殺請求権を行使する意思を明らかにした場合は,1年経過後も,権利行使することができます。

 

また,権利を行使する意思を明らかにした場合であっても,相続開始から10年が経過すると,権利行使することはできなくなります。

 

ですから,一定の期間が経過すると,そもそも遺留分減殺請求権の行使を心配する必要はなくなるのです。

逆に,遺留分を行使する側の場合,我々弁護士は,1年以内に,遺留分減殺請求権を行使する旨の内容証明郵便を送付し,その上で,交渉を行ったり,遺留分減殺請求訴訟を提起したりするのです。

遺留分1

弁護士会等で相続の相談を受けると,遺留分はどうなるんでしょうかと質問される方が,時々いらっしゃいます。

遺言で,一部の相続人にすべての財産を相続させることとなっており,他の相続人が相続財産をほとんど受け継がないことになった場合に,他の相続人の側から遺留分減殺請求を行うことができるということは,一昔前と異なり,広く知られつつあるようです。

 

しかし,実際には,相続人であれば,誰でも遺留分減殺請求権を行使できるわけではありません。

 

たとえば,被相続人の兄弟姉妹については,法律上,遺留分は存在しません。

被相続人の兄弟姉妹から遺留分減殺請求権を行使されることは,あり得ないことなのです。

こちらのほうは,ご存知でない方も多いようで,弁護士会の相談等では,被相続人の兄弟姉妹からの「遺留分減殺請求」について相談される方が,しばしばいらっしゃいます。

特別受益証明書2

特別受益証明書を作成する意味は,次のようなものです。

 

相続に当たっては,様々な財産の名義を変更する必要があります。

たとえば,不動産の登記が代表例です。

 

しかし,相続人が複数いる場合は,誰が不動産を相続するかを特定しなければ,法務局で,不動産登記の名義を変更することはできません。

 

誰が不動産を相続するのかを特定する方法としては,遺産分割協議を成立させることが考えられます。

この場合には,法務局に遺産分割協議書を持参し,相続登記の手続を行うことになります。

 

それ以外の方法として,特別受益証明書を作成してもらい,他の相続人には,遺産分割で考慮されるべき相続分は存在しないと表明してもらうことも考えられます。

この場合には,他の相続人の特別受益証明書を持参することで,法務局で,相続登記の手続を進めることができます。

 

ですから,特別受益証明書に署名押印を求められているという場面では,弁護士としては,書かれている内容等を慎重に検討するようにお伝えすることになります。

(仮に署名押印したとしても,特別受益証明書の有効性自体を争う余地も,ないわけではありませんが。)

特別受益証明書1

「私は,被相続人○○の死亡による相続につき,生計の資本として被相続人から,すでに相続分相当額の贈与を受けており,相続する相続分のないことを証明します。」

 

遺産分割に当たっては,上記のような内容の特別受益証明書がやりとりされることがあります。

これは,相続人の1人が,亡くなった方から,生前にまとまった金銭を贈与してもらいましたよということを,証明するものです。

遺産分割の際には,生前贈与を受けた相続人が,相手方の弁護士等から,特別受益証明書に署名押印するよう求められることも,しばしばあります。

 

特別受益証明書には,「相続分のないことを証明します」といった文言も書かれています。

つまり,生前に贈与を受けおり,相続財産となるはずだったものを先取りしていますので,遺産分割で受け取るべき財産は存在しないと書いておくのです。

特別受益2

遺産分割に際し,特別受益として考慮されるものは,生計の基礎となる財産です。

 

生計の基礎となる財産ですので,多額の預貯金や不動産を贈与した場合は,特別受益と認められる可能性が高いです。

たとえば,弁護士会を通じて預金口座の取引履歴を開示してもらった結果,多額の贈与の存在が明らかになることもあります。

 

実際に,特別受益に当たるかどうか,争われる可能性が高いのは,たとえば,1か月に3万円等,定期的に少額の贈与がなされており,その期間が長期間にわたったため,全体として見れば,多額の贈与が行われたという場合です。

遺産分割審判等では,事案により様々な判断がなされていますが,一般的には,一回当たりの贈与額が少なければ,生計の基礎となる財産には当たらず,特別受益には該当しないと判断される傾向にあります。

特別受益1

亡くなった方が遺言を残していない場合は,遺産分割を行う必要があります。

遺産分割に当たっては,最初に,相続人の間で,相続財産をどのように分けるかについて話し合いを行います(遺産分割協議)。

話し合いで合意に至らなかった場合には,遺産分割調停・審判の手続を行うことになります。

 

これらの手続では,相続財産は,法定相続分に従って分けられることが多いです。

 

それでは,亡くなった方が,生前に相続人の1人に対して,土地等のまとまった財産を贈与していた場合は,どうでしょうか。

残った財産を法定相続分どおりに分けるとすると,贈与を受けた相続人は,相続財産となるはずだった財産を単独で先取りしたことになり,相続人間で不公平が生じます。

 

そこで,遺産分割に際しては,相続人の1人が,生前贈与された財産(特別受益)を考慮し,その分,生前贈与を受けた相続人の取り分を少なくするものとしています。

 

弁護士の仕事をしていると,特別受益が問題となる事案は数多くあります。