日別アーカイブ: 2015年6月10日

公正証書遺言の利点2

公正証書遺言の利点としては,他に,遺言の有効性が争われにくいということがあります。
公正証書遺言の場合は,公証人の関与のもとに作成されますので,手続の適正性についての信頼性が高いです。

自筆の遺言の場合でしばしば争いになるのが,残された遺言が,本当に,遺言者が作成したものなのかということです。
遺言者ではなく,相続人の一部が自分に有利な遺言を作成したのではないかとの主張が,他の相続人から出てくることがあります。
このような主張が想定される場合は,慎重に対処することが必要だと思います。

遺言の有効性が争われる場合に,遺言無効確認訴訟が起こされることがあります。
遺言無効確認訴訟では,遺言の筆跡が誰のものであるのかが審理されることとなります。
そして,遺言の筆跡が遺言者の者であることについては,遺言の有効性を主張する側に証明責任があるとされています。
このため,遺言が遺言者の筆跡によることが証明されなければ,遺言は無効であるとの判決が下されることとなるのです。

それでは,遺言が遺言者の筆跡であることを証明するためには,どのようなことを行えばよいのでしょうか。
多くの場合には,遺言者が書いた別の文書を持ってきて,その文書の筆跡と遺言書の筆跡が同一であるかどうかにつき,鑑定人に鑑定してもらうこととなります。

この場面で問題になるのが,遺言者が書いた別の文書が残っているかどうかです。
実務では,遺言者は,生前,字を書くことがあまりなかったため,遺言者が書いた別の文書が残っていないということが,想像以上に多いです。
また,当方が遺言者が書いたと主張する文書を持って行っても,相手方が,その文書は遺言者が書いたものではない,との主張を行うことも想定されます。
このような場合には,遺言者が書いた別の文書について,遺言者が作成したことを証明しなければならないという状況に陥ってしまいます。
このため,遺言者が書いた別の文書としては,文書の性質等から,遺言者自身が書いたことが確かであるというものか,遺言者が書いたということについて,相続人間で争いがないものを準備する必要があるということになります。

このように考えていくと,遺言を遺言者が作成したという点についての争いが生じることを避けるため,公証人の関与のもとに遺言を作成することは,1つの大きな利点だといとうことができると思います。

私自身,弁護士として遺言書の作成を受任する際は,遺言の有効性についての争いを避けるための手立てを打つことは必須だと考えますので,公正証書遺言を作成するか,自筆で遺言を作成し,その遺言が遺言者が作成したもので間違いないことを証拠化する(録音を残す等)か,いずれかの形をとらせていただいています。