日別アーカイブ: 2015年8月7日

戸籍の焼失2

戸籍が焼失している場合,戸籍を辿って相続関係を明らかにすることができず,どのようにして相続関係を明らかにするのかが問題になります。

このような場合,まず考えることは,親族からの情報収集です。
本人が親族関係を把握していない場合であっても,祖父母の兄弟姉妹等,古くからの出来事を把握されている方がいる場合,そのような方に親族関係を確認するということが考えられます。
そして,兄弟姉妹の子孫がいることが判明した場合は,その子孫の戸籍を取得することにより,焼失した直後の戸籍まで遡ることができます。
このようにすれば,焼失した戸籍自体を取得することはできませんが,焼失の直前の戸籍と直後の戸籍を集めることができます。
そして,直前の戸籍と直後の戸籍の繋がりについては,記載された事項(生年月日,続柄等)が一致するかどうかにより,確認することができます。

これに対し,親族からの情報収集によっても親族関係が判明しない場合は,悩ましい状況になります。
菩提寺において過去帳を保存している場合もありますので,地元を歩き回って過去帳を入手することができる場合は,結果的に親族関係を明らかにすることができるかもしれません。
ただ,このような作業を行うには,多大な労力を要しますし,必ずしも,過去帳によって親族関係が判明するとも限りません。

このような場合には,戸籍が焼失している以上,これ以上の親族関係の特定は困難であると割り切り,戸籍で辿ることができる限りにおいて,手続を進めることもあり得ます。
私自身,戸籍の消失がある場合に,戸籍で辿ることができた相続人を相手方として,遺産分割調停の手続を進めている例を見たことが何度かあります。
こうした調停の申立に対し,裁判所の側から,申立を行った弁護士等に対し,相続人の特定のため,過去帳等の調査を行うことを求めることもないようです。

ただ,厳密に言えば,相続人の一部を除外して行った遺産分割協議になりますので,法律上は,無効な遺産分割になります。
後日,戸籍によって辿ることができなかった相続人が現れ,遺産分割の無効を主張することもあり得るわけです。
実際には,このような相続人に遺産分割が行われたという情報が伝わることは稀だと思いますので,このような相続人が現れることはレアケースだと思いますが,実際にこのような相続人が現れた場合には,焼失後の戸籍と焼失前の戸籍との繋がりが証明できることも多いと思いますので,相続人の一部を除外して遺産分割を行ったことが容易に証明されるケースが多いと思います。
ですから,焼失した戸籍が関わる案件を進める場合には,新たに相続人が現れた場合には,遺産分割が無効になる可能性があることを念頭に置きつつ,手続を進める必要があるということになります。