日別アーカイブ: 2023年10月15日

倍率地域の土地の相続税評価②

ここからは、掛け算1回では、土地の評価が完了しない場合を説明したいと思います。
まず、評価倍率表を確認したとしても、評価倍率が記載されていないことがあります。
田や畑については、「比準」、「市比準」、「周比準」と記載されており、具体的な倍率が記載されていないことがあります。
「比準」、「市比準」、「周比準」とされている田、畑については、近傍宅地の評価額に比準して、評価額を算定することとなります。
三重県でも、このような算定方法を用いるべき土地が散見されます。

近傍宅地の評価額とは、近隣の標準的な宅地の評価額のことを言います。
基本的には、各市町村は、各土地の固定資産税評価額を算定する際、この地域の標準的な宅地の評価額は1㎡あたり●円の定めています。この金額をベースに、近傍宅地の評価額を算定することとなります。

標準的な宅地の固定資産評価額については、全国地価マップ(URL)で確認することができることがあります。
全国地価マップを確認すると、各路線に面する宅地の1㎡あたりの固定資産評価額が記載されていることがありますので、この数値に基づいて評価を行うこととなります。
それでは、全国地価マップに路線価が記載されていない場合は、どうすれば良いのでしょうか?このような場合には、各市町村の資産税課に問い合わせを行い、評価の対象となる土地の地番を伝え、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額を確認することとなります(全国地価マップには近隣地域の単価も記載されていますが、各単価が妥当する範囲がどこまでかが分からないため、評価のベースにし難いです)。

全国地価マップを利用する場合には、注意するべき事項があります。
それは、全国地価マップに記載されている評価額については、相続の発生時期によっては、時点修正がなされることがあるということです。
相続の発生日が時点修正の対象になっている場合は、記載された修正率を乗じた評価額を利用する必要があります。

以上の手順により、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額を確認することができます。
次に、評価倍率表を確認し、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額に、宅地の倍率を乗じます。
宅地の1㎡あたりの固定資産評価額は、そのまま相続税評価に用いることはできず、宅地の倍率を乗じることにより、相続税評価額への切り替えを行う必要があります。
この点は忘れがちですが、必ず、宅地の倍率を乗じる手順を踏む必要があります。
これにより、1㎡あたりの近傍宅地の評価額を算定することができます。

その後、土地の形状、公法規制等を踏まえて、近傍宅地の評価額を増減額修正し、各土地の評価額を算定することとなります。
この作業は、路線価地域における評価方法と同じです。
なお、路線価地域の場合は、路線毎に、ビル街地区、高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区、中小工業地区、大工業地区が設定されており、どれに該当するかにより、増減額修正の割合が異なってくることがありますが、近傍宅地の評価額をベースとして評価する場合は、普通住宅地区に該当するものとして、増減額修正を行います。

このように、倍率地域内の土地であっても、倍率表で「比準」、「市比準」、「周比準」とされている場合には、路線価地域内の土地のとほぼ同様の評価方法を用いなければならない場合があります。