土地の無償使用と遺産分割2

被相続人の土地上に当方の建物が存在する場合,通常,建物が存在することにより,土地の価格が相当程度低下することとなります。
どの程度低下するかは,事案によって異なりますが,更地価格から,おおむね10から30%程,価格が低下するものとされています。

この点をとらえて,相手方は,土地の更地価格の10から30%について,被相続人から利益を受けており(特別受益),その分,当方の取り分を少なくするべきであるとしてくることがあります。
裁判所も,このような事案において,10から30%相当分の精算(特別受益の持戻)を認めた例があります。

このように,土地の無償使用を指摘されると,当方の取り分が少なく算定され,その分,相手方に支払う代償金等が増えることになる可能性があります。
実際は,相手方が土地の無償使用を指摘してこないこともありますが,指摘されると,対処に苦労することになる可能性があるのです。

土地の無償使用と遺産分割1

遺産分割の案件では,様々な事情を考慮の上,相続人間の公平を図りつつ,遺産の分割の仕方を決めなければならないとされています。
法律上,相続分は,決まった数字として決められていますが,現実には,相続分だけで割り切ることができない案件の方が多いです。

たとえば,被相続人の遺産に土地が含まれており,その土地上に当方名義の建物が存在するといった事案があります。
このような場合,相手方から以下のような主張がなされることがあります。
当方は,被相続人の土地上に建物を所有しており,いわば,長年,土地をただで借りてきたことになる。
本来であれば,土地を使用するのには,賃料を払わなければならないところ,当方は,ただで土地を使用し,賃料の負担を免れてきた。
だから,当方の取得分は,賃料相当分について,減額されなければならない。

このような主張がなされた場合には,弁護士としてどのように対応するか,悩ましい状況になることがあります。

サイトのリニューアル

弁護士法人心の後遺障害・後遺症のサイトがリニューアルされました。
私は,現時点では,交通事故後遺障害の案件を積極的に担当しているわけではありませんが,後遺障害の基礎知識等が書かれており,参考になります。

後見開始申立4

申立費用を成年被後見人の負担とするには,以下のような手続を踏むことが多いです。

申立を行うに当たり,申立のための必要書類と一緒に,収入印紙代等を成年被後見人の負担としてほしいと書いた内容の上申書を,裁判所に提出します。
ただ,鑑定費用の額については,申立が行われた後に,裁判所が医師等と協議して,いくらであるかが決まることになります。
ですから,鑑定費用については,申立後に,正式に鑑定費用の額が決まってから,鑑定費用を成年被後見人負担としてほしいとの内容の上申書を提出することが多いです。

上申書が提出されると,裁判所は,成年被後見人の資力等を考慮の上,成年被後見人に申立費用を負担させるべきかどうかを(職権で)判断することとなります。
成年被後見人の負担となる場合には,後見開始の決定書において,申立費用○円を,成年被後見人の負担とすることが明記されることとなります。

後見開始申立3

それでは,後見開始申立に必要となった費用について,精算を行うことはできないのでしょうか。
この点については,法律上,特別な事情がある場合には,成年被後見人(判断力が低下した人)の負担とすることができるものとなっています(非訟事件手続法28条)。
具体的には,成年被後見人に十分な財産がある場合等に,特別な事情があるものとして,成年被後見人が申立費用を負担すべきものとされています。

ただ,申立費用を成年被後見人の負担とするためには,裁判所の決定を得る必要があります。
成年被後見人に十分な財産があるからと言って,当然に,成年被後見人に申立費用分を請求することができるというわけではないのです。

また,申立費用の成年被後見人負担は,収入印紙代や鑑定費用等,限られたものについてのみ認められる者です。
たとえば,後見開始申立を弁護士等に依頼した場合に,弁護士費用を成年被後見人負担とすることができるかについては,厳しいと言わざるを得ません。

後見開始申立2

事件の相手方について後見開始申立を行う場合には,注意すべき点があります。

後見開始申立を行うに当たっては,様々な費用が必要となります。
たとえば,申立を行う裁判所に対し,2600円分の収入印紙を提出する必要があります。
また,診断書等で判断力が著しく低下していることが明らかな場合には,問題が少ないのですが,判断力が著しく低下しているかどうかが明らかではない場合には,裁判所で医師に鑑定を依頼し,判断力の低下の程度について,鑑定書を書いてもらう必要があります。
このような場合には,5から10万円の鑑定費用を,後見開始申立を行う人が納める必要があります。

それでは,後見開始申立に必要な費用は,誰が負担することになるのでしょうか。
法律上は,原則として,後見開始申立に必要な費用は,申立を行う側の負担とされています。
後見開始申立は,判断力が低下した人のために行うものですが,実際には,申立を行う側で,費用を負担しなければならないのです。
ですから,申立に必要な費用を申立人が納めなければ,手続を進めることができないことになってしまうのです。
弁護士として事件を進めるに当たっては,申立に当たり,申立費用を負担しなければならないことになっていることを,あらかじめ説明しておく必要があると言えます。

後見開始申立1

認知症等により判断力が低下している場合には,1人で有効な契約等ができなくなる等,様々な制限が加わることとなります。
最近では,身近な人が判断力が低下した場合に,後見人をつけて,代わりに契約等を行ってもらうことも散見されるようになってきています。
私も,後見開始申立の案件自体を受けることが,しばしばあります。

他に弁護士として後見開始申立を行う場面としては,事件の相手方の判断力が低下している場合があります。
たとえば,遺産分割の手続は,相続人全員が手続に加わらなければ,進めることができません。
ですから,相手方である相続人の1人に,判断力が低下している方がいる場合には,そのままでは,有効な遺産分割を行うことができません。
このような場合に,当方から,相手方について後見開始申立を行い,判断力が低下した人に後見人を付けた上で,遺産分割の手続を進めることができます。

岐阜地裁

岐阜地裁まで行ってきました。
以前から裁判所の建物の改修工事を行っていましたが,すでに改修工事は終了したようです。
最近は,裁判所の建物も,中高層化が進んでいるようで,岐阜地裁の建物も,6階建てになりました。

超過特別受益3

相続人の一部が多額の生前贈与を受けており,遺産がほとんど残っていない場合には,遺産分割の中で,贈与を受けた財産を戻すよう請求することはできません。
それでは,生前贈与を受けていない相続人は,生前贈与を受けた相続人に対して,一切法的主張ができなくなってしまうのでしょうか。

生前贈与を受けた財産が多額にのぼる場合には,相続人間で,著しい不均衡が生じているとの捉え方があります。
このような場合には,法律上,遺留分の主張をすることにより,不均衡をある程度修正することができるとされています。
生前贈与を受けた相続人に対し,遺留分減殺請求を行うことにより,生前贈与を受けた財産の一部の取り戻しを請求することができるのです。

ただし,遺留分として請求できるのは,あくまでも,法定相続分の2分の1(場合によっては3分の1)です。
また,遺留分減殺請求は,遺留分侵害の事実を知った時から1年(今回の場合だと,相続開始後に生前贈与の存在が明らかになった場合には,生前贈与の存在を知った時から1年)に限られます。
相続開始から10年が経過すると,そもそも,遺留分減殺請求ができなくなってしまいます。
このように,遺留分の主張をする場合には,いろいろと留意すべき点があります。

超過特別受益2

遺産が十分に残っている場合には,生前贈与を受けた相続人の取り分を少なめにし,相続人間での調整を行うことができるます。
これに対して,遺産がほとんど残っていない場合には,遺産分割の対象となる財産がほとんどなく,相続人間での調整を行うことができません。

それでは,このような場合に,生前贈与を受けた相続人に対し,贈与を受けた財産を遺産に戻すよう求めることはできないのでしょうか。
結論としては,生前贈与を受けたと扱われる以上,贈与を受けた財産を遺産に戻すよう求めることはできません。
ですから,遺産分割を行ったとしても,生前贈与を受けた相続人の取り分を0にすることはできますが,それ以上の主張を行うことはできないということになってしまいます。
遺産がほとんど残っていない場合には,遺産分割の中では,わずかな遺産を受け取ることしかできないということになってしまいます。