カテゴリー別アーカイブ: 相続税

上場株式の相続税評価

1 上場株式の評価方法
上場株式が相続財産に含まれている場合には、銘柄ごとに相続時点の評価を算定する必要があります。
上場株式については、刻一刻と値動きしますので、いつの時点の価格で評価すべきかが問題になります。

上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額について、相続税が課税されることとなっています。

・ 被相続人が亡くなった日の終値

・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均

2 被相続人が亡くなった日の終値
被相続人が亡くなった日の終値については、ヤフーファイナンスのホームページの、時系列で確認することができます。

それでは、被相続人が亡くなった日が土日祝日であり、取引がなされていない日である場合は、どうなるのでしょうか?

亡くなった日が土日祝日で、取引のない日である場合は、被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値で評価します。
たとえば、被相続人が亡くなった日が土曜日であり、金曜日が平日でしたら、金曜日の終値で評価します。
被相続人が亡くなった日が日曜日であり、月曜日が平日でしたら、月曜日の終値で評価します。

被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値が2つある場合は、これらの終値の平均をもって評価します。

3 被相続人が亡くなった月、その前月、前々月の終値の平均
被相続人が亡くなった日の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均については、日本取引所グループのホームページの、月間相場表(投信等相場表)で確認することができます。
なお、月間相場表(投信等相場表)に記載された終値の平均については、小数点以下の部分を切り捨てた上で、株数を乗じる計算を行うことができます。

4 最後に
このように、上場株式については、月毎の平均額を参照するという独特の方法で相続税評価を行うこととなっています。
したがって、相続税申告書に記載されている価格は、必ずしも、相続開始日の評価額ではないこととなります。
この点については、税理士は熟知していますが、弁護士は必ずしも熟知していません。
このため、訴訟においても、相手方の弁護士が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格=相続開始日の評価額」であるとの主張を行い、当方が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格≠相続開始日の評価額」であるとの指摘を行うといったやり取りを行うことが、しばしばあります。

障害者控除と相続税

1 障害者控除とは
相続人や受遺者(遺言により遺贈を受けた人)が障害者である場合には、その相続人や受遺者に課税される相続税が一定額軽減されます。
障害者が生命保険金の受取人に指定されている場合も、生命保険金のうち非課税限度額を超える部分について課税される相続税は一定額軽減されます。
このような制度を障害者控除といいます。

2 障害者控除の要件
障害者控除を用いることができるのは、次の要件を満たす場合です。

① 相続や遺贈により財産を取得した時点で特別障害者または一般障害者であること

② 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること

①から、相続や遺贈の時点、つまり、被相続人が亡くなった時点で特別障害者または一般障害者であることが要件になります。
特別障害者または一般障害者にあたるかどうかは、次の基準で判断されることとなります。

・ 精神障害者保健福祉手帳
1級→特別障害者
2級、3級→一般障害者

・ 身体障害者手帳
1級、2級→特別障害者
3級、4級、5級、6級→一般障害者

・ 療育手帳
重度の知的障害者→特別障害者
上記以外の知的障害者→一般障害者

・ 寝たきりの状態にある者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 障害のある65歳以上の者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(成年被後見人を含む)
特別障害者

②から、障害者が法定相続人である場合に限り、障害者控除を用いることができることとなります。
なお、相続放棄が行われた場合であっても、相続放棄がなかったものとして、法定相続人に当たるかどうかが判断されることとなります。
このため、法定相続人である障害者が相続放棄を行ったとしても、障害者控除を用いることができることとなります。

3 障害者控除の額
障害者控除により、相続税が以下の金額で減額されることとなります。
障害者控除は、いわゆる税額控除に該当し、控除額がそのまま相続税が差し引かれることとなりますので、大きく相続税が減額される可能性があります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×20万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×10万円

※ 相続や遺贈の時点の年齢については、1年未満の端数は切り捨てとなります。

たとえば、被相続人が亡くなった時点で35歳10か月であった場合、相続の時点の年齢は切り捨てにより35歳になりますので、以下のとおりとなります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-35歳)×20万円=1000万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-35歳)×10万円=500万円

このように、障害者控除は、大きな税額軽減の効果がありますが、見逃されがちな制度でもあります。
三重県の案件でも、当法人が関与する前の段階では、障害者控除を見逃して申告がなされていることが時々あります。
このような場合には、当法人において、更正の請求を行い、相続税の還付のお手伝いをさせていただくこともあります。

4 障害者控除額が障害者に課税される相続税額よりも大きく、余りが生じる場合
上記により計算された障害者控除額が、障害者に課税される相続税額よりも大きく、控除額の余りが生じることがあります。
このような控除額の余りは、さらに、障害者の扶養義務者に課税される相続税から控除することができます。
扶養義務者は、以下のとおりです。

・ 配偶者

・ 直系血族

・ 兄弟姉妹

・ 3親等内の親族のうち、家庭裁判所が扶養義務を負わせた者

たとえば、障害者に課税される相続税額が200万円であり、障害者控除額が500万円でしたら、300万円の控除額の余りが生じることとなります。
この300万円の控除額の余りは、さらに、配偶者、直系血族、兄弟姉妹等に課税される相続税から控除することができます。

建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合の相続税

1 建物更生共済と相続税
建物更生共済は、契約者名義の建物や家財について火災や自然災害による損害が生じた場合に、共済金の支払がなされる共済契約です。
機能としては、損害保険と類似しています。

ただ、建物更生共済契約には、通常の損害保険と異なる部分があります。
通常の損害保険は、掛け捨てですので、解約したとしても解約返戻金がほとんど発生しないことが多いですし、満期が到来したとしても満期共済金の支払がなされないことが多いです。
他方、建物更生共済の場合は、解約すると解約返戻金を受け取ることができますし、満期が到来すると満期共済金を受け取ることができます。

このように、建物更生共済については、契約に基づいて一定の支払がなされるという意味において、資産性があります。
このため、被相続人が建物更生共済の契約者になっていた場合には、相続税の課税対象になることとなります。
この場合、相続人は、仮に建物更生共済を解約したときには、解約返戻金を受け取ることができる法的地位を引き継ぐこととなりますので、相続時点の解約返戻金額について、相続税が課税されることとなります。

三重県の案件では、建物更生共済についても、極めて頻繁に登場しますので、注意が必要な財産になります。

2 建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合
それでは、被相続人が、建物更生共済の契約者にはなっていなかったものの、建物更生共済の掛金の負担者になっていた場合には、どうなるのでしょうか?
上記と同様に、相続税の課税がなされることとなるのでしょうか?

生命保険の場合は、被相続人が、生命保険契約の契約者になっていなかったものの、生命保険料の負担者になっていた場合には、負担した割合に応じて、被相続人が契約者になっていた生命保険と同様の課税がなされることとなっています。

他方、損害保険の場合は、被相続人が掛金の負担者になっていた場合に、被相続人が契約者になっていた損害保険と同様の課税がなされると定めている規定は存在しません。
このため、被相続人が掛金の負担者になっていたに過ぎない場合は、ただちに、相続税の課税がなされるわけではないということになりそうです。
ただ、毎年、被相続人が支払っていた掛金について、被相続人から規定の契約者への贈与がなされていたのみであることとなります(このため、被相続人が亡くなる3年前から、被相続人が亡くなるまでに生じた掛金については、相続開始前3年以内の贈与加算の対象になります)。

もっとも、建物更生共済契約についての手続が専ら被相続人との間でなされており、契約者自身は、手続にはほとんど関与しておらず、契約内容すら把握していないような場合には、結論が異なってくるでしょう。
このような場合には、被相続人が契約者の名義を借りていたに過ぎず、実質的には被相続人が契約者であるとの判断がなされ、建物更生共済契約が相続税の課税対象になる可能性があるでしょう。

JA共済と相続税

1 JA共済も相続税の課税対象になることがある
被相続人がJAに貯金を有していた場合には、被相続人がJA共済に加入していたかどうかを確認した方が良いでしょう。
三重県の相続税の案件では、JA共済に加入されている例も多いです。

JA共済は、組合員が共済掛金を拠出して共同の財産を準備しておき、不測の事故(死亡、入院、火災、自然災害等)があった場合には、共済金を支払うこととしているものです。
機能としては、保険と類似しています。

共済の加入の有無については、一定の書類を提出した上でJAに問い合わせを行うことで確認することができます。
また、通帳に共済掛金の引落の記載があれば、共済に加入している可能性があります。

被相続人がJA共済に加入している場合には、JA共済について相続税の課税がなされるかどうかに注意する必要があります。
どのような課税がなされるかは、共済の種類によって違ってきます。
以下では、相続税申告の場面で注意が必要なものをまとめたいと思います。

2 生命共済
被共済者が亡くなった場合に、共済金の受取人に共済金が支払われるものです。
生命保険と同様のものになりますので、生命保険と同様に相続税の課税がなされることとなります。

被相続人が被共済者になっており、被相続人が亡くなったことにより生命共済金の支払がなされた場合には、生命保険金と同様に相続税が課税されます。
したがって、相続人が共済金を受け取った場合には、500万円×法定相続人数までは相続税が非課税となりますが、これを超える場合は超える部分に限って相続税が課税されます。
相続人ではない人(相続放棄をした人を含む)が共済金を受け取った場合は、共済金の全額が相続税の課税対象になります。

他方、被相続人以外の人が被共済者になっている場合には、被相続人が亡くなった時点では共済金の支払がなされません。
ただし、生命共済契約を解約した場合には、解約返戻金を受け取ることができます。
このため、相続の発生により、仮に生命共済契約を解約すれば、解約返戻金を受け取ることができる地位を引き継いだものと評価されることとなります。
結局、生命保険契約に関する権利と同様、被相続人が亡くなった時点での解約返戻金額について、相続税が課税されることとなります。

なお、被相続人自身が共済の契約者になっていなかったとしても、共済の掛金を引落が被相続人の口座からなされていた場合には、上記と同じく、相続税が課税される可能性がありますので、注意が必要です。

3 医療共済
共済の契約者が一定の疾病に罹患したり入院したりした場合に、共済金の支払がなされるものです。
医療共済は、基本的には、共済の契約者自身が共済金を受け取る権利を有しています。

被相続人が医療共済の契約者になっており、医療共済金の受取人になっていた場合は、医療共済金は、被相続人自身の財産になります。
したがって、医療共済金は、一般的な財産と同様、相続の課税対象になります。

4 建物更生共済
建物更生共済は、共済の契約者名義の家屋や家財について、火災や自然災害による被害があった場合に、共済金の支払がなされるものです。
通常の損害保険とは異なり、解約すると、解約返戻金が返還され、満期になると、満期共済金の支払がなされます。

被相続人が建物更生共済に加入していた場合には、相続により、仮に建物更生共済契約を解約すれば、解約返戻金を受け取ることができる地位を引き継いだものと評価されます。
このため、生命保険契約に関する権利と同じ考え方により、被相続人が亡くなった時点での解約返戻金額について、相続税が課税されます。

JA貯金が存在する場合の相続税申告

1 JA貯金が存在する場合
相続税申告にあたっては、被相続人名義のすべての預貯金口座を確認し、申告書に記載する必要があります。
被相続人がJAに貯金を有していた場合も、JAの貯金を相続財産として申告書に記載することとなります。
三重県でも、多くの案件で、JAの貯金が相続税の課税対象になっています。

ところで、被相続人がJAに貯金を有していた場合は、何点か、注意しなければならないことがあります。
この点について、以下でまとめたいと思います。

2 貯金を網羅的に記載する
JAの貯金には、様々な種類があります。
申告書には、これらの貯金を網羅的に記載する必要があります。

まず、普通貯金、定期貯金が存在する可能性があることは、他の金融機関と同様です。

これら以外に、JAの口座には、貯蓄貯金、定期積金が存在する可能性があります。
貯蓄貯金は、残高が10万円未満ですと普通貯金と同じ低い利率になりますが、残高が10万円以上になると利率が高くなる貯金です。
定期積金が毎月定期的に一定額の積立がなされる貯金です。
これらについても、相続財産に含まれますので、申告書に記載する必要があります。

3 出資金に注意する
被相続人がJAの貯金を有している場合には、被相続人が出資金を有している可能性があることに注意した方が良いでしょう。

被相続人がJAに出資金を払い込み、JAの組合員になっていることがあります。
この場合、被相続人が亡くなると、脱退して出資金を払い戻すか、一定の条件を満たす相続人に出資金を引き継ぐことができます。
いずれにせよ、出資金も相続財産に該当しますので、申告書に記載する必要があることとなります。

出資金の有無は、一定の書類を提出した上でJAに問い合わせると確認することができます。
また、出資金を有していると、毎年、JAの普通貯金口座に出資配当金が振り込まれていますので、通帳に出資配当金の振込の記載があるがどうかによっても確認することができます。

4 共済に注意する
JAに貯金を有している場合には、JA共済に加入している可能性があります。
JA共済は、保険と同様の位置付けのものになりますが、様々な種類のものがあります。
それぞれの共済の種類によって、生命保険金と同様の課税(500万円×法定相続人数の非課税限度額がある)がなされたり、生命保険契約に関する権利またはその他の財産として課税がなされたりします。

どのような団体に寄付をすると、相続税が軽減されるのでしょうか?

1 相続税の寄付控除
相続等により取得した財産を一定の団体に寄付すると、寄付した財産の価額が相続税の課税価格から控除されるため、相続税が軽減されることとなります。

もっとも、どの団体に寄付しても寄付控除が認められるわけではありません。
一定の団体に寄付を行った場合に限り、寄付控除が認められることとなっています。
以下では、どのような団体が寄付控除の対象になるかの説明を行いたいと思います。

2 寄付控除の対象となる寄付先
① 国
② 地方公共団体
国や地方公共団体については、専用の窓口を設けているところもありますので、その場合は、そこに問い合わせることとなります。
三重県内の市町村も、ホームページ等で、寄付に関する案内を行っているところもあります。

③ 特定公益増進法人
特定公益増進法人とは、教育、科学、文化の振興等への貢献が著しい法人のことをいいます。
一定の種類の法人が特定公益増進法人として定められています。
具体的には、以下のとおりです。

・ 独立行政法人
・ 日本赤十字社
・ 公益財団法人、公益社団法人
・ 学校法人
・ 社会福祉法人

たとえば、日本学生支援機構は独立行政法人、ユニセフは公益財団法人に該当しますので、寄付控除の対象になります。

学校法人については、国公立の学校法人だけでなく、私立の学校法人も寄付控除の対象になります。

独立行政法人については、地方独立行政法人に関しては、病院事業、社会福祉事業等、一定の事業を営むものに限定されています。
介護老人保健施設は、上記の社会福祉事業等を営む地方独立行政法人に該当しますので、寄付控除の対象になります。

なお、特定非営利活動法人は、後述のNPO法人ですので、特定公益増進法人には該当しません。

④ 認定NPO法人
NPO法人については、すべてが寄付控除の対象になるわけではありません。
公益性のある団体であるとの認定がなされたNPO法人のみが、寄付控除の対象になります。

どのNPO法人が認定NPO法人に該当するかは、内閣府のホームページ(https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/certification)で確認することができます。
実際に寄付するにあたっては、事前に認定NPO法人に該当するかどうかを確認した方が良いでしょう。

ゴルフ会員権の相続税評価(取引相場がない場合)

1 ゴルフ会員権と相続税
被相続人がゴルフ会員権を有していた場合は、ゴルフ会員権についてどのような相続税申告を行うかについて、検討を行う必要があります。

ゴルフ会員権には、取引相場があるものがあります。
このような場合には、取引相場を参照しつつ、ゴルフ会員権の評価を行うこととなります。
ゴルフ会員権の取引相場については、ゴルフホットライン、ゴルフダイジェスト、日経ゴルフ、住地ゴルフ等の業者のサイトを用いて調べることができます。

ところで、ゴルフ会員権には、取引相場が存在しないものがあります。
三重県の案件でも、取引相場が存在しないゴルフ会員権が問題になることがあります。
このようなゴルフ会員権は、相続税の課税対象になるのでしょうか?
相続税の課税対象になる場合には、どのように相続税申告を行うべきなのでしょうか?

2 取引相場のないゴルフ会員権の評価方法
取引相場のないゴルフ会員権であっても、株主になっている場合には、株式と同様、評価の対象にする必要があります。
この場合は、ほとんどが非上場株式になるでしょうから、類似業種比準方式、純資産方式、配当還元方式のいずれかにより、評価を行うこととなります。

また、取引相場のないゴルフ会員権であっても、預託金が存在する場合には、預託金を評価の対象にする必要があります。
預託金については、請求すればすぐに返還を受けることができる場合には、預託金金額がそのまま評価額になります。
他方、規約により、一定期間を経なければ、預託金の返還を受けることができないこととなっている場合には、預託金額に、返還されるまでの期間の基準年利率による複利現価率を乗じた金額を評価額とします。

さらに、株主となり、かつ、預託金が存在する場合には、すでに説明した株式の評価額に、預託金の評価額を加算して評価を行うこととなります。

これに対して、取引相場がないゴルフ会員権で、株主とならず、預託金も存在しないものについては、評価額が0円とされます。
たとえば、プレイすることだけを目的とするゴルフ会員権については、株主とならず、預託金も存在しないことがあり得ます。

ゴルフ会員権の相続税評価(取引相場がある場合)

1 ゴルフ会員権も相続税の課税対象になることがある
被相続人の相続財産の中に、ゴルフ会員権が含まれていることがあります。
被相続人がゴルフを趣味にしていた場合には、ゴルフ会員権を購入し、ゴルフ場の会員になっている可能性があるでしょう。
また、ゴルフ会員権は、バブル期には、高額で取引がなされていましたので、投資または資産形成目的で、ゴルフ会員権が購入されていることもあります。

ゴルフ会員権には、市場で取引相場が付されて取引されているものがあります。
これらについては、取引相場がある以上、相続税の課税対象になります。

三重県では、ゴルフ会員権が相続税の課税対象になることがしばしばありますので、正確に理解しておきたいところです。

2 取引相場のあるゴルフ会員権
取引相場のあるゴルフ会員権については、以下の計算方法により、相続税評価がなされることとなります。

相続時点の通常の取引価格×70%

通常の取引価格は、売り価格と買い価格の平均値により計算します。

3 預託金が存在する場合
もっとも、ゴルフ会員権については、取引価格に含まれていない預託金が存在する場合があります。
この場合には、預託金を加算して、相続税評価額を算定する必要があります。

預託金については、ただちに返還を受けることができるものについては、預託金額をそのまま加算します。

他方、相続時点から一定期間を経なければ預託金の返還を受けることができない場合には、以下の金額を加算することとなります。

預託金額×返還されるまでの期間の基準年利率による複利現価率

※ 返還されるまでの期間について、1年未満の端数がある場合は、切り上げて1年と計算します。

基準年利率、複利現価率については、国税庁のホームページ(https://www.tkc.jp/consolidate/tkc_express/2020/06/202006_00437)で確認することができます。

4 売り価格、買い価格、預り金の調べ方
ゴルフ会員権の売り価格、買い価格、預り金については、ゴルフホットライン、ゴルフダイジェスト、日経ゴルフ、住地ゴルフ等のサイトで検索することができます。

先述したように、売り価格と買い価格の平均値が、取引価格になります。
サイトごとに、価格に差がありますが、この場合は、合理的な差にとどまるのであれば、最も低い価格に基づいて評価することができます。
相続時点の価格がない場合には、相続時の直近の価格を用います。

連帯債務と相続税

1 連帯債務は債務控除の対象になるか
今回は、連帯債務が、相続税との関係で、どのように扱われるかについて、説明を行いたいと思います。

相続税の計算方法は、おおむね以下のとおりです。

① 被相続人のプラスの相続財産の総額を算定
② ①から、被相続人が負っていた債務を差し引く
③ ②に、課税価格に応じた税率を乗じる

このように、相続税の計算上、被相続人が負っていた債務は、被相続人のプラスの相続財産から差し引くことができることとなっています。
それでは、連帯債務については、相続税の計算上、被相続人が負っていた債務として、被相続人のプラスの相続財産から差し引くことはできるのでしょうか?

連帯債務は、それぞれの連帯債務者が債務の全額を返済する責任を負っていますが、負担部分を超えて返済した場合には、他の連帯債務者に対して求償することができることとなっています。
このため、連帯債務者が最終的に負担することとなる債務は、負担部分に限定されることとなります。
以上から、債務控除の対象となり、プラスの相続財産から差し引くことができるのは、それぞれの連帯債務者の負担部分に限定されることとなります。

それでは、それぞれの連帯債務者の負担部分は、どのようにして計算されるのでしょうか?

まず、連帯債務者間で、負担部分についての合意がある場合は、その合意により、負担部分が決まることとなります。
たとえば、500万円、500万円、500万円というように、均等に合意することもできれば、100万円、400万円、1000万円というように、不均等に合意することもできます。

次に、負担部分についての合意がない場合は、各連帯債務者が受けた利益の割合により、負担部分が決まることとなります。
たとえば、共同で不動産を購入し、共有持分を1:1:3にした場合には、負担部分は300万円、300万円、900万円になります。

最後に、これらによっても負担部分が定まらない場合は、負担部分は平等であると判断されます。
先の例ですと、500万円、500万円、500万円になります。

2 無資力の連帯債務者がいる場合
連帯債務者の中に無資力の人がいる場合は、その連帯債務者に求償したとしても、求償を受けることは期待できません。
このような場合には、無資力の連帯債務者の負担部分は、その他の連帯債務者がそれぞれの負担部分に応じて分担することとなります。
先の例ですと、本来の負担部分が500万円、500万円、500万円であるところ、1人の連帯債務者が無資力であれば、無資力の連帯債務者の負担部分をその他の連帯債務者が分担することになりますので、最終的な負担部分は750万円、750万円になります。

負担部分という考え方は、弁護士にとっては馴染みの深い言葉ですが、税理士として仕事を行うにあたっても、正確に理解しておく必要がある言葉であると言えます。

先行する相続について未分割遺産がある場合,その不動産に相続税は課税されるのでしょうか?―最終的な相続人が1人の場合

今回は、次のような事例を紹介したいと思います。

事例
家族関係は、父A、母B、子C
父Aが亡くなったが、父A名義の不動産が遺産分割されず、そのままになっていました。
その後、母Bが亡くなり、母Bについて相続税の申告を行う必要が生じました。
この場合、父A名義の不動産は、母Bについての相続税の課税対象となるのでしょうか?

最終的な相続人が複数である場合は、先行する相続の未分割遺産である父A名義の不動産について、遺産分割協議を行えば、母Bの相続税の課税対象から外すことができます。
ところが、今回の事例のように、最終的な相続人が1人の場合、次の問題が発生します。
父Aの相続人は、母Bが存命の間は母Bと子Cの2人でしたが、母Bが亡くなった後は、子Cの1人のみとなります。
そして、遺産分割協議は、複数の相続人で行うものになりますので、子C1人だけでは、遺産分割協議を行うことはできません。
このように、遺産分割協議を行うことができない以上、父A名義の不動産については、初めから、子Cが所有していたものと扱うことはできません。
以上から、母Bの相続税申告では、父A名義の不動産の相続分2分の1を、相続税の課税対象としなければならないこととなります。

このように、最終的な相続人が1人である場合には、先行する相続についての未分割遺産を、相続税の課税対象から外す手段はないということになります。
最終的な相続人が1人であるか複数であるかによって、相続税の課税対象が変わってしまうことは、不合理に感じるところではありますが、申告実務は、このような考え方を用いています。
過去に、この点が不合理であると主張して、税務訴訟を提起した弁護士もいましたが、裁判所は、このような主張を受け入れませんでした。

このような事態を避けるためには、母Bが存命であったうちに、母Bと子Cとで父Aの遺産分割協議を行い、子Cが父A名義の不動産を取得するとの遺産分割協議を成立させておいて方が良かったということになります。
このような遺産分割協議が成立すれば、父A名義の不動産は存在しなくなりますので、母Bの相続税の課税対象になることも避けられることとなります。
そして、このような遺産分割協議が成立した場合は、これを公的に明らかにするため、遅滞なく相続登記も行った方が良いでしょう。